目次
はじめに
こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
本日は「米国不安でも『米ドル債券』に投資する富裕層が減らない理由」といった内容でお届けしたいと思います。
2025年に入ってから米国の政権運営に対する不安の声から、米国は大丈夫かと言われることもありました。
ただ、その米国が発行している通貨である米ドルの債券、これに対する投資というのは、実は富裕層の投資は減っていなくて、むしろ増えているのではないかというくらいで、2025年に入ってからも、当社へ米ドル債券のご相談や投資のご要望を富裕層の方からたくさんいただいております。
今回のこの記事では、なぜ米国不安の今でも米ドル債券に対する富裕層の方の投資のニーズが減っていなくて、むしろ増えているのかという理由を分かりやすく説明できればと思います。
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主要国10年国債の比較表
米ドル債券に投資している富裕層の方が減っていない理由を理解していただくために、主要国10年国債の比較表を見ていただければと思います。
この表を簡単に説明しますと、主要国国債が一番左側の列にありまして、その国債が発行されている通貨がそれぞれ載っています。利回りがあり、格付け(S&P)があり、そしてその国のGDPのランキングが何位なのか経済規模を表す比較表になっています。
この国債利回りはその国の通貨で基本的に発行されています。米国債でしたら米ドル建てで、この国債の利回りが高ければ高いほどそれ以外の社債の米ドル建て債券利回りも高くなっていて、その通貨建て社債の利回りも国債利回りに連動するわけです。
基本的にはこの国債の利回りというのは、その通貨建てで発行されているその他の債券利回りと近い水準となっています。この国債の情報を各国で比較したものを見ていくと、この米ドル債券の魅力がよく分かりますので、これを比較して見ていければと思います。
主要国10年国債の比較表|米ドル債
まず今回のテーマである米ドル債券の大元になっている米国債。この表の一番上の行です。通貨は米ドルになっていて、今だと10年国債利回りで4.4%というような利回りになっていますので、高い水準になっています。
2025年はほとんどのタイミングで4%以上の利回りになっていますので、米国の歴史の中でも米国債、米ドル債券の利回りは高まっていることが分かるわけです。そして、格付けはAA+ということで、最高位の格付けはAAAですので、それより1個下ではありますが、2番目に高い格付けになっています。高格付けと言えるかと思います。そして、GDPランキングはご存じの通り1位ということで、米国は経済規模が世界で一番大きい国と言えるわけです。
主要国10年国債の比較表|中国国債・ドイツ国債・日本国債
では、この米国債を見た後に他国の債券も見ていきたいと思います。
米国債の下の3債券を見ていくと、中国国債、ドイツ国債、日本国債です。これらは米国に次ぐような先進国です。GDPランキングでも2位、3位、4位の国となっています。
こういった国の元建て、ユーロ建て、円建て債券利回りはどうかというと、ここに書いてある通り、中国元の中国国債10年国債利回りが1.7%、ユーロ建てのドイツ国債が利回り2.6%、円建ての日本国債が利回り1.5%ということになっています。利回りが低い水準になっているわけです。
米国に次ぐ経済規模の国々にはなっているのですけども、やはりこれくらい利回りが低いと元建て社債やユーロ建て社債、円建て社債の利回りも低いということになっているわけです。
米ドルと比較しますとやはり債券としての魅力はかなり下がりますので、米ドル建て債券利回りの半分くらいになってしまいます。やっぱりこれらと比較すると米国債、米ドル建て債券の方が魅力が高いということで、消去法ですが米ドル債券が選ばれる理由になっています。
主要国10年国債の比較表|イギリス国債・オーストラリア国債
その下のイギリス国債とかオーストラリア国債を見ていきたいと思います。
この2つですが、イギリス国債は英ポンドで、オーストラリア国債は豪ドルで発行されていて、利回りは4.6%と4.3%ということで、利回り水準で言うと米国債と同等くらいになっています。
格付けもイギリス国債はAA、オーストラリア国債はAAAで、最高位の格付けです。
格付けも利回りも米国債と遜色ない水準になっていて、これらの数字だけを見ると米国債と同等で魅力的な通貨、国債、利回りの債券と言えます。このような英ポンド、豪ドル建て債券に投資される方は、富裕層の方にも多いのではないかなと思います。
ただ1点、GDPの規模で見ますと、イギリス国債は順位でいうと6位で、オーストラリア国債は14位です。
1位の米国は円にするとGDPで約4,300兆円という規模ですが、イギリス国債は約540兆円とか、オーストラリア国債は約260兆円とかで、20分の1、10分の1とかそれくらいの経済規模の国が発行している通貨の債券です。英ポンドや豪ドル建て債券というのはそういう意味になります。
ですので、利回りや格付けの条件的には米ドルと遜色ないのですが、経済規模やそういうものを比較すると、いかんせん、安心感が低い債券ということになるわけです。
簡単に言うと時価総額で10分の1、20分の1の会社の発行している債券と逆にそれくらい売上や時価総額が10兆円や20兆円大きな会社と比較すると、やはり規模が大きい会社の方が当然安心感がありますので、英ポンドとか豪ドル債券はそういうイメージになるわけです。
ですので、諸条件で比べると米ドル債券とあまり変わりませんが、経済規模で言うと米国のほうが大きいですので、そう考えるとやはり米ドル債券のほうが選ばれやすいと言えます。
主要国10年国債の比較表|ブラジル国債
イギリス国債とオーストラリア国債の真ん中、ブラジル国債はどうかというと、通貨はレアルです。
利回りは13.9%と高いので、利回りだけ見るとすごく魅力的に見えますが、やはり格付けがかなり低いわけです。
格付けがBBということですので、低格付けの国というのがこのブラジル国債なわけです。
このようなリスクが高い国が発行している債券になりますので、このレアルという通貨の利回りは高利回りとなっているわけです。なので値動きも当然激しく、リスクも高いので格付けが低すぎるというのがこのブラジルレアルの弱点になっています。
利回りは高いですが安心感としてはかなり低いので、富裕層の方がどちらを選ぶかというと米ドル債券を選ぶわけです。
このように米ドル、米国債とその他の国の債券、国債、通貨を比較していただくと、必然的に米ドル債券が選ばれる理由が分かるかなと思います。
米国不安でも『米ドル債券』に投資する富裕層が減らない理由|まとめ
これでは今回のテーマの「米国不安でも『米ドル債券』に投資する富裕層が減らない理由」の最後にまとめができればと思います。
ポイントが4つあるかなと思っています。
米ドル建て以上に安心できる債券が存在しないと考える
もちろん米ドル建て債券以外の通貨の債券に関しても、米ドルと遜色ない条件であったりとか、経済規模の債券であったりも存在しますが、ただ、いろいろなことを総合的に比較してみると、米ドル建て債券が魅力的な債券であることが、比較すると分かるわけです。
ですので、消去法にはなりますが、米ドル建て債券が一番安心するということで、富裕層の方からの投資が減っていない理由になっているのかなと思います。
現在の米高利回りは今後低下する可能性が高い
今の米国債利回りは、2025年の10年国債利回り4%を基本的には超えている状況になっていますので、歴史的に見ても高い利回りであると言えると思います。
そして、今後は米国の政策金利が下がっていき、債券利回りも下がっていく可能性が高いと想定できるため、いつまでも続く状態じゃないと考えている方が多いわけです。
それであれば今のうちに期間が長い債券で米ドル債券に投資して高い利回りを長期間得ることを選択したほうが良いんじゃないかということで、富裕層からの米ドル債券投資が増えているわけです。
一時期より米ドル円安高で投資しやすい
現在2025年7月ですが、1米ドル147円くらいの水準ですが、2024年とかを見ますと1米ドル160円前半とか150円後半とか、そういった状況が非常に多かったです。
そのときに比べると米ドル安円高の状況にはなっています。一時期よりは為替水準から米ドル債券に投資しやすい状況になっていますので、富裕層の方からの投資が増えているのではないかと考えたわけです。
米ドル債券が銘柄ラインナップ圧倒的ナンバー1
これはどういうことかと言いますと、世の中に流通している各通貨の債券はそれぞれありますが、圧倒的に銘柄数で言うと米ドル債券の世界なわけです。
では、米ドル債券が発行されていて取引できる債券の量が1,000債券、1,000銘柄あるとしたら、ユーロ建て債券はどれくらいかというと、多分10分の1の100銘柄くらいで、その他の通貨だと50銘柄とか60銘柄くらいになります。ラインナップで言うと米ドル建て債券が圧倒的なラインナップ数になっているわけです。(当社2025年7月調べ)
債券は今まで記事でお話しした通りポートフォリオを作って複数の債券を組み合わせて、残存期間とか、利回りとか、格付けとかの発行体を分散します。
そして、ポートフォリオで持つというのが大事とお伝えしましたので、そういったポートフォリオをしっかり作るためには、かなりのラインナップがないとポートフォリオをバランスよく作ることはできません。そう考えると、やはり米ドル債券がポートフォリオの作りやすさを考えると一番いいとなりまして、富裕層の方からの投資が減らない理由の1つになっているのかなと思います。
当社は富裕層の方の資産運用をお手伝いしております。
資産配分全体の最適化から具体的な金融資産・不動産への投資、資産管理会社を含めた税務の最適化まで幅広いご提案をしております。
資産運用をお考えの方やお困りの方は気軽に当社の個別相談にお申し込みください。

株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中