目次
はじめに
米国債投資を考えている方の中には、円高が米国債の利回りや価格、そしてマーケットにどのような影響を与えるのか、気になる方も多いでしょう。そこで、この記事では、円高が米国債の利回りや価格に与える影響や、円高に備えるための投資戦略について詳しく解説します。
為替と米国債の関係
米国債は、内外を問わず金融市場において安定した投資先とされていますが、その収益性と為替レートは密接に関連しています。
米国債の利払いと償還金(元本)支払いは米ドルで行われるため、日本円に換金した際の評価が為替レートによって変動するためです。
画像出典 : https://www.sc.mufg.jp/products/bond/fb_guide/index.html
また、米国債の利回りと為替(ドル円)レートには密接な関係があり、特にここ数年間は日米金利差の拡大によって、米国債利回りと為替は連動して動いてきました。
画像出典 : https://jp.tradingview.com/
アメリカでは、まもなく利下げが開始される見込みとなっており、2025年にかけて段階的に利下げが行われるものと見られています。
このため、アメリカの利下げによって日米の金利差が縮小した場合、今後しばらくの間は円高に進む可能性が十分に考えられます。
円高になると米国債にどのような影響が?
2024年に入り、一時は1ドル160円程度まで円安が進んだことはご存じのとおりです。
しかしその後、日米の金利差縮小などの要因によって円高が進んでいます。
では、今後も円高が進んだ場合は、米国債にどのような影響を与えるのでしょうか。
円高時の米国債保有者への影響
ここまで述べたとおり、米国債の利払いと償還金(元本)支払いは米ドルで行われるため、すでに米国債を保有している方は、円換算の利息や償還金が減額となる可能性が高いでしょう。
一方、米国債を保有している方は、円高の要因となるアメリカの利下げの影響にも注目すべきです。
原則的に債券の価格は、利下げによって上昇するためです。
画像出典 : https://money-journey.moneyforward.com/62510/
これは利下げによって、すでに発行されている金利の高い債券の価値が増すためです。
場合によっては、値上がりした米国債を売却して、キャピタルゲインを得るという選択肢も考えられるでしょう。
続いて、為替の変動が債券投資の収益にどれくらい影響を与えるのか、実際にシミュレーションで検証してみましょう。
実際の投資シミュレーション
参考までに、アメリカ10年国債を償還まで保有した場合、償還時の為替レートによって収益がどのように変化するのかシミュレーションしてみましょう。
【投資内容】米国10年国債(金利4.0%)を1万米ドル分購入して償還まで保有。購入時1ドル=150円と仮定
※利子は償還時まで米ドルで保有
【投資内容】
1ドル=150円 10万米ドルの米国債を購入 投資金額は1,500万円 利子は年間4,000ドル、10年で40,000ドル |
10年後・・・
【1ドル=150円(変わらず)の場合】
元本+利子=140,000ドル 1ドル=150円 元本+利子の評価額=2,100万円 600万円の利益 |
【1ドル=180円(円安)の場合】
元本+利子=140,000ドル 1ドル=180円 元本+利子の評価額=2,520万円 1,020万円の利益 |
【1ドル=120円(円高)の場合】
元本+利子=140,000ドル 1ドル=120円 元本+利子の評価額=1,680万円 180万円の利益 |
【結果】
1ドル=150円(変わらず)の場合 : 600万円の利益 1ドル=180円(円安)の場合 : 1,020万円の利益 1ドル=120円(円高)の場合 : 180万円の利益 |
投資時点から1ドル30円の円安に振れた場合、30円の円高に振れた場合では840万円(1,020万円-180万円)も収益に差が出る結果となりました。
米国債投資を考えるうえで、金利だけでなく為替レートが大きなポイントであるか分かります。
過去の円高局面と米国債のパフォーマンス
続いて、過去の円高局面で米国債がどのようなパフォーマンスだったかを見てみましょう。
過去の円高局面では、米国債のパフォーマンスに注目すべきポイントがいくつかありました。例えば、1995年の円高局面では、円は急速に上昇し、1ドル80円台に突入しました。この時期、米国債の価格は相対的に安定していたものの、利回りはやや低めの推移を見せました。これは、日本の投資家が円高になると米国債を売却し、得られたドルを円に変える動きを見せたためです。この動きが米国債の価格に対して一時的な下押し圧力をかけました。
次に、2008年のリーマンショック時の円高局面を見てみましょう。この時期も円は急激に上昇し、1ドル90円台を記録しました。このような不安定な時期には、投資家のリスク回避の動きが強まり、安全資産である米国債の人気が高まりました。その結果、米国債の価格は上昇し、利回りは低下する傾向が見られました。
投資家心理において、円高になると米国債への投資意欲が減退するケースもあります。円高により、ドル建て資産の価値が相対的に下がるため、国内の投資家は米国債の保有を見直す傾向があります。過去の円高局面では、米国債は全体的に見れば安全資産としての価値を保ちつつも、為替変動や投資家心理の変化によって短期的に価格が変動しました。これらの歴史的な事例を踏まえると、今後円高になると米国債市場に複雑な影響が及ぶと予想できます。
円高に備えるための投資戦略
日米の金利差縮小による円高が懸念される現在、米国債投資を検討する際には、円高に備えるための投資戦略を立てることが重要です。
ここでは、債券投資家が検討すべき円高に備えるための投資戦略について解説します。
長期投資の視点で考える
資産運用はゴールを達成するための手段に過ぎないため、短期的ではなく長期投資の視点で米国債投資を考えるべきです。
投資家として「短期的に円高になる」という不安は当然ですが、10年国債など長期運用を前提としているため、為替についても長期の見通しを軸に考えるべきです。
富裕層の方であるほど、長期的にみた円安の可能性と保有資産における円比率の高さを考え、米国債など外貨建て資産を増やす必要があるでしょう。
為替の損益分為替を把握する
米国債に限らず債券は、保有期間中に利息収益を積み上げられるため、保有期間が長くなるほど「為替の損益分岐為替」が下がります。
※為替の損益分岐為替・・・どこまで円高に耐えられるかを表す為替レート
例えば、1ドル=150円で利回り5%の債券に投資したケースをみてみましょう。
5年経過時点の損益分岐為替は118.1円、10年経過時点では91.4円まで損益分岐為替が下がります。
つまり、米国債の長期保有は円高リスクヘッジに大きな効果があるということになります。
まとめ:米国債と円高の全体像
米国債と円高の関係について解説してきました。
記事中で触れたとおり、2024年後半から2025年にかけて、アメリカの利下げにより一時的な円高の可能性が指摘されています。
このため、米国債投資を検討する際には、適切な投資タイミングを判断するとともに、円高に備えた投資戦略を立てることが重要です。
米国債投資を考えるうえで「自分で投資戦略を立てるのが難しい」「投資についてアドバイスが欲しい」とお悩みの方は、ぜひウェルス・パートナーへご相談下さい。
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株式会社ウェルス・パートナー
ポートフォリオマネージャー
成蹊大学法学部卒業後、三菱UFJモルガン・スタンレー証券へ入社。富裕層と会社経営者を中心とした資産運用のコンサルティング業務に従事。 証券会社では金融資産に対しての提案しかできないことに違和感を感じ、金融資産だけでなく実物資産や相続対策を含めた資産全体の最適化提案がしたいと思い株式会社ウェルスパートナーに入社。富裕層、会社経営者の資産配分最適化。 具体的な金融資産の投資実行サポート。 資産管理会社設立から相続対策など税務最適化。 超富裕層のインターネット企業創業メンバーに特化した新規顧客開拓。