目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
2024年8月9日に、私は『富裕層のための米ドル債券投資戦略』という新著を出版させていただきました。今回は「富裕層が相談するべき米ドル債券投資のアドバイザー&証券会社」をお伝えします。誰にアドバイスしてもらって、どのような証券会社に行って投資すればよいのかという、非常に大事な相談相手、アドバイザーについてご説明します。
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米ドル債券のNewアドバイザー「IFA」の仕組み
米ドル債券投資のアドバイザーというと、基本的に最初に思いつくのは証券会社だと思います。最近はそれだけではなく、新たなアドバイザーとして存在感が高まっているのがIFAです。米ドル債券のNewアドバイザー「IFA」の仕組みについて簡単にご説明します。こちらのイラストをご覧ください。
従来、債券投資したい富裕層の方と右下の証券会社、この2者だけの関係でした。証券会社は、金融商品を作る商品のメーカーであり、かつ販売会社を兼ねていました。しかし、商品を作るメーカーと販売会社が同じ会社である場合、導入コストや作るコストが高いので、作った商品を販売しなければなりません。それでは、証券マンに無理なノルマを課し、「この商品を絶対に売ってください」という無理な営業をさせてしまいます。そうすることにより、富裕層の方はご自身の大事な資産運用や資産配分に関係なく、ニーズと関係ない商品を提案されて購入してしまい、トラブルになったり、資産全体の配分が乱れしまったりするような、よくない結果になっていました。
それではいけないということで現れたのがIFAです。日本語でいうと、金融商品仲介業者です。そのような存在がここに20年の間に現れました。
イラストの左下にIFAがいます。証券会社は商品を作るメーカーで、金融商品を作ることに特化します。一方で、新たにできたNewアドバイザーのIFAは、商品は作らず、お客様にアドバイスすることや提案することに特化しています。富裕層の方は、IFAから債券や金融商品の提案を受けたりリスク説明をされたりして、購入するときは、証券会社に口座を作って資産を預け入れ、実際の取引をするという流れです。
IFAと証券会社の間には業務委託契約があり、発生した利益に関して、証券会社とIFAでシェアするという取り決めになっています。IFAはメーカーではないので、作った商品を売らなければならないなどのノルマはありません。そのため、富裕層の方に公平中立な提案がしやすいということで、ここ10年~20年存在感が高まってきているのです。
今回のテーマである米ドル債券に関しても、IFAはNewアドバイザーとして注目を集めており、多くの富裕層の方の米ドル債券ポートフォリオを作っています。ここではIFAや対面証券会社、今存在感を増しているネット証券、この3社を主に比較して、富裕層の方はどのようなアドバイザーや証券会社に相談すればよいのかについてお話しします。
米ドル債券の想定取引先比較
具体的な相談相手の比較に入っていきましょう。こちらは、米ドル債券の想定される取引先の比較です。主にこの3社で取引されています。
1つ目は対面証券です。対面証券はイメージ通り、日本の大手の証券会社などです。リアル店舗があり、証券マンが応接室などで金融商品の説明や提案をするなど、お客様の担当者がいる証券会社が対面証券です。
次はネット証券です。これもここ20年ほどで存在感がすごく増しています。対面証券とは真逆で、ネットで全て完結するのがネット証券です。
最後は先ほどご説明した金融商品仲介業者、IFAです。自社で商品は作らず、対面証券やネット証券とそれぞれ提携し、その富裕層の方に合っている金融商品だけをピックアップして提案するのがIFAです。この3社で比較していきたいと思います。
比較:アドバイザー
比較項目の1つ目はアドバイザーです。米ドル債券についてアドバイスをしてくれるアドバイザーがいるのかいないのかを比較します。対面証券は常にいます。担当者が張り付いて、毎日のように営業するのが対面証券です。ネット証券は基本的にアドバイザーはいません。コールセンターなどはあるかもしれませんが、債券の説明などはしてくれないでしょう。IFAはもちろんいます。アドバイスをするために存在しているのがIFAなので、もちろんいます。
これはかなり大きな違いです。富裕層の方でも、数千万円の債券であれば、ネット証券で投資できると思います。しかし、1億円や2億円など、数億円単位の債券投資はかなり勇気がいりますし、何にどのような投資をした方がいいのかをアドバイスして欲しいという方は多いです。そのような方はネット証券だけでは頼りないので、対面証券やIFAでアドバイザーに提案してもらうということで、選択される方は多いです。
比較:米ドル債券のラインナップ
2つ目の比較項目はラインナップです。米ドル債券のラインナップも異なります。証券会社によりますが、対面証券は結構少なく、お客様から見せていただく米ドル債券の商品一覧を見ても少ない印象です。10債券~20債券だけというところもあり、これだけでよくやっていけるなと思うようなラインナップの少なさで、これではよいポートフォリオが作れないのではないかと思うこともあります。
対面証券は、お客様の債券ポートフォリオをしっかり作るというよりは、数千万円でどれか1債券を単品で購入して持っておくという発想で投資されるお客様が多いので、その程度の少ないラインナップになっているのかと思います。もしかしたらラインナップが多い証券会社もあるかもしれませんが、私が知る限りでは少ないイメージです。
ネット証券のラインナップはそれなりにありますが、普通かと思います。大手のネット証券の中でも、多いところでおそらく50~100、少ないところは対面証券と同じくらいで10~20だと思います。
IFAのラインナップは多いです。ネット証券や対面証券複数と提携していることが多いので、複数の証券会社の米ドル債券を全て扱えるはずです。そのような意味でラインナップは多いわけです。複数証券を使えるメリットがあり、米ドル債券のラインナップが多いのはIFAだと思います。
比較:取扱い米ドル債券の種類
3つ目の比較項目は取扱証券種類です。これもかなり異なります。対面証券の場合、一番リスクが低い米国債から、ある程度リスクがある劣後債が多いです。
ネット証券は、基本的には米国債から普通社債が多いと思います。劣後債などは仕組みが複雑ですし、特殊なところもあるので、ネットでポチっというわけにはいかないでしょう。おそらく制限しているのではないかと思います。
IFAに関しては、対面証券と同じで、米国債から劣後債という取扱債券種類になっています。ここには書いていませんが、対面証券とIFAでは異なる点があります。CoCo債という一番リスクと利回りが高い債券があるのですが、対面証券では扱っていない証券会社が圧倒的に多いと思います。IFAは、CoCO債を扱っている証券会社と提携している場合は扱えるので、そのような点は若干差があるかと思います。ラインナップと共にIFAの方が取り扱える債券種類は多いと思います。
比較項目の最後は特徴、メリットです。大手の対面証券には公募債券があります。例えばトヨタや日産が米ドル建ての債券を発行する際に、これぐらいの金額で発行しているので投資家からお金を集めてくださいという依頼を受けて、投資家に新しい債券を販売しています。これを公募債券といいます。そのように公募して初物の米ドル債券に投資するということは、おそらく大手の対面証券でなければできない可能性が高いです。そのような債券がたまにあるので、興味があって投資したい方にとっては、対面証券はメリットがあると思います。
ネット証券の特徴は間違いなく手軽さです。私もネット証券を使っていますが、担当者がいなくても簡単にできるので、手軽さは大きなメリットかと思います。米ドル債券の数千万円~1億円のものを買おうと思えば買えるので、そのような手軽さはよいと思います。為替を取るとか、少額のものを取るとか、そのようなことは担当者に連絡しづらいと思いますが、ネット証券では簡単にできてしまいます。また、残高状況や資産状況などが簡単に確認できますし、出金もネットですぐにでき、債券の利金が入ってくるたびに出金することは対面証券ではできないですが、ネット証券の場合簡単にできます。米ドル債券投資において、ネット証券の手軽さは顕著ではないかと思います。
IFAの特徴やメリットは、ポートフォリオを組みやすいところかと思います。米ドル債券のラインナップも取扱債券種類も一番豊富ですし、また無理に販売しなければならない金融商品もありません。対面証券の場合、お客様の債券ポートフォリオを作ると、上司から「ラップを売りなさい」と強く言われることもあり、せっかく作った債券ポートフォリオを売却し、全てラップにするということもあります。IFAはノルマもありませんし、上司もいません。お客様が求めている債券ポートフォリオを組みやすいというのがIFAの特徴かと思います。
ネット証券とIFAで購入可能な米ドル債券の違いはある
次は、ネット証券とIFAで購入可能な米ドル債券の違いについてご説明します。同じ証券会社でも、ネット証券で購入できる債券と、IFAを経由してネット証券で購入できる債券が異なります。この点はご質問をいただくことが多く、わかりづらいのでご説明しましょう。ネット証券ではどのような債券が買えて、IFAではどのような債券が買えるのか、ご説明できればと思います。
購入できる債券は、主に債券種類で分かれていることが多いです。こちらの表の債券種類は、米国債、普通社債、下の3つが劣後債の種類になります。債券によって異なりますが、米国債や普通社債の債券格付けはAA+やA−などで、期限付劣後債の場合BBB+、永久劣後債やCoCo債はそれより低くなっています。このような債券種類や債券格付けで、2024年4月時点の利回りは、米国債や普通社債は4.2%~4.7%で、劣後債は5%以上になっています。
ご自身でインターネットにログインして、ネット証券で買える債券の範囲は、普通社債までが一般的かと思います。ネット証券で投資可能な範囲は、主に米国債から普通社債が多いです。
一方でIFAを経由して同じネット証券で債券を購入しようとすると、米国債、普通社債、期限付劣後債、永久劣後債、CoCo債、全ての債券が購入できるようになっています。つまり、全ての債券がIFAを経由した形での米ドル債券投資の対象範囲になるわけです。ですから、同じネット証券だとしても、IFAを経由することで投資できる債券の範囲、ラインナップは大幅に広がると思っていただいてよいと思います。
「なぜ、同じ証券会社なのにそうなるのか?」と思われるかもしれませんが、この仕組みは当たり前のことです。仕組みがシンプルな米国債や普通社債わかりやすいですが、劣後債以下の債券は少し特殊な条件がついており、投資リスクが高く格付けも低くなっています。そのような債券がネットで買えることになっていると、リスクを十分に理解しないまま、誤った認識で投資する人が増えてしまうので、ネットで販売するわけにはいきません。ですから、劣後債以下や少し格付けが低い債券は、IFA経由でなければ購入できないのです。
では、どのような方がIFAに相談して投資した方がよいのかを考えてみましょう。私見ですが、アドバイザーにしっかり考え抜かれた、オリジナルの米ドル債券ポートフォリオを作りたいとご希望の富裕層の方は、アドバイザーがいるIFAに相談して、豊富なラインナップの中で完全オリジナルなポートフォリオを作ってもらうのがよいと思います。
また、それなりに目標利回りが高い方もIFAに相談するとよいでしょう。ネット証券の場合、米国債と普通社債にしか投資できないので、その2つを合わせたとしても平均利回りは4.数%~5%です。5%以上の利回りを目指したいという方の場合、やはり劣後債などをポートフォリオに入れざるを得ないと思うので、IFAを経由してポートフォリオを作る必要があると思います。
まとめ
今回のテーマである「富裕層が相談するべき米ドル債券投資のアドバイザー&証券会社」をまとめます。ポイントは4つです。
ポイント1)公募の対面、手軽さのネット、ラインナップのIFA
想定される証券会社の取引先によって、特徴やメリットが変わってきます。ですから、その方の求めているものによって、取引する証券会社や取引先を変えていく必要があると思います。
トヨタが新しく発行した債券を購入したいというような公募債券のニーズがある方であれば、やはり対面証券で取引する必要があると思います。手軽さが一番という方はネット証券で取引していただいてよいでしょう。ラインナップを重視して、いろいろな米ドル債券の普通社債や劣後債を含めたラインナップにアクセスしたい方であれば、IFAを選ぶのがよろしいと思います。自分の目的ややりたいことによって取引先を決めるのが一番合理的かと思います。
ポイント2)富裕層がポートフォリオを組むならIFAが合理的
いろいろな想定先があるなかで、1億円~数億円以上で債券投資するという富裕層の方がポートフォリオを組む場合、やはりIFAが合理的な選択になってくると思います。IFAは米ドル債券のラインナップが一番豊富ですし、その方のニーズに合ったポートフォリオを組むことができるので、最近の富裕層の方は、IFAを選択されることが多くなっています。
ポイント3)IFAは玉石混交なので要注意
一方で、このIFAは玉石混交で、債券のことはほとんど知らない、株しか知らないというIFAもいるので、注意しなければなりません。自分の目的に合っているIFAかどうかをしっかり確認する必要があると思います。
ポイント4)アドバイザー個人は経験・顧客志向を確認
対面証券やネット証券と、今までは会社の話をしてきましたが、アドバイザー個人も大事です。いわゆる担当者です。アドバイザー個人からアドバイスを受けるので、その人がしっかり債券ポートフォリオを作っている実績があるか、米ドル債券に詳しいか、どのような会社でどのような提案をしてきたかなどを確認する必要があります。
また、顧客志向がしっかりあるのかが重要です。米ドル債券投資は、期間が1年や2年ではなく、5年や10年、長い場合では15年や20年、30年と長期運用になります。この長期間、自分のポリシーを変えずに、長期的に運用してくれる人なのかどうかを確認する必要があります。
短期的な思考で、「値上がったので売りましょう」「売却して仕組債を買いましょう」というような人では困るわけです。ですから、顧客志向をしっかりと持っているかということや、アドバイザー個人の経験などを確認したうえで、取引する相手であるアドバイザーを選ぶ必要があると思います。
本日は「富裕層が相談するべき米ドル債券投資のアドバイザー&証券会社」という内容でお届けさせていただきました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中