はじめに
外貨建て債券とは、元本の支払い、利息の受け取り、償還金の受け取りが日本円(円)以外の通貨(外貨)で行われる債券のことです。この記事では外貨建て債券(とくに米ドル)のメリットとリスクについて解説します。
外貨建て債券とは
債券とは、国や地方公共団体、企業などが資金調達のために発行する借用証書です。債券と借用証書の違いは、債券が転売可能(流動的)であることです。債券に投資することで、投資家は発行者に資金を提供することになります。
そして、外貨建て債券は「外債」とも呼ばれ、元本の支払いや利払い、返済が日本円以外の通貨で行われる債券のことを指します。外国債券は、日本国内の債券に比べて利回りが高いのが特徴です。外国債券で使われる主な通貨は、米ドル、ユーロ、豪ドルなどです。ただ、外国債券への投資は、為替相場の変動や使用通貨国の政治・経済・社会情勢の影響を受けます。
企業年金連合会「外貨建て債券」
外貨建て債券のメリット
日本では相変わらずの低金利が続いていますが、海外では日本より相対的に高い金利の国もあります。海外の高い金利を享受できるのも、外貨建て債券の魅力のひとつです。
また、様々な通貨建ての外貨建て債券に投資することで、通貨分散を図ることができます。投資格言に「卵を一つのカゴに盛るな」とあるように、リスク分散は資産運用の基本です。1つの資産だけに投資するのではなく、値動きが異なる複数の金融資産に振り分けることで、リスクを軽減し、より安定したリターンを期待できるからです。
外貨建て債券のリスク
外貨建て債券には、主に「信用リスク」「金利リスク」「為替リスク」の3つのリスクがあります。信用リスクとは、発行体が利息や元本を計画通りに返済できないリスクです。金利リスクとは、金利の変動により債券の価格が変動するリスク。為替リスクとは、為替相場の変動により、現地通貨での価値や受取額が変動するリスクです。
この中で、外貨建て債券の固有リスクは「為替リスク」です。
外貨で取引される外貨建金融商品は為替相場の変動により、償還時または満期時の円貨での受取額が購入(預入)時の金額より増加または減少する可能性があります。
購入時より円高になった場合、円での受取額は減少し、為替差損が発生します。逆に円安になると、為替差益が得られるのです。
たとえば、購入時の為替レートが1米ドル=100円のときに1万ドル分購入すると、
購入時
1万ドル×100円=100万円
満期時の為替レートが1米ドル=110円(円安)の場合
1万ドル×110円=110万円
10万円の為替差益
満期時の為替レートが1米ドル=90円(円高)の場合
1万ドル×90円=90万円
10万円の為替差損
となります。
外貨建て債券の種類
外貨建て債券は、主に以下の3つの種類があります。
利付債
定期的に利息が支払われる債券を、利付債(利付債)といいます。利付債には、発行時に満期までの利息が確定している「固定利付債」と、満期までに利息が変動する「変動利付債」があります。
ディスカウント債
通常より低い金利と引き換えに、額面より低い価格で発行される債券。新規に発行された債券を購入し、償還まで保有する場合、額面金額と発行価格の差額が償還差益となります。なお、利息を支払わない債券を「ゼロクーポン債(割引債)」といいます。
ストリップ債
STRIPS(ストリップ)とは、「Separate Trading of Registered Interest and Principal of Securities」の略です。元本部分を利付債の償還日に満期を迎える割引債として販売し、各クーポン部分を支払日に満期を迎える割引債として販売します。米国国債のストリップ債が有名です。
ドル建て債券の魅力
2022年からドル建て債券の魅力が高まっています。米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的に利上げをしてきたからです。2023年1月時点で米10年債利回りは約3.5%、日本の10年債利回りは0.5%程度となっており、3%近くの金利差があります。
米ドル建て債券なら3%以上の金利を受け取れるという魅力があるのです。
まとめ
米ドルなどの外貨建て債券を購入すれば、国内の債券よりも高い金利を得ることができます。ただ、為替リスクや信用リスクなどもあるので、かならず余裕資金で購入するようにしてください。
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。