2021
05/18
資産運用入門

はじめに

株式投資の基本は、安く買って高く売ることです。そして、企業の株価が割安かどうか判断するのに便利なのが株価指標です。代表的な株価指標としてPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などがあります。

そして、最近はROE(自己資本利益率)も重視されるようになってきています。この記事では、ROE の意味と似たような指標であるROAとの違いについて解説します。

ROEとは

ROE(自己資本利益率)は、株主の持分である自己資本を元手に、企業がどれだけの利益をだしているかをみるもので、ROEが高いほど効率がいいと判断できます。ROEの計算式は、以下の通りです。

ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

当期純利益とは、企業が法人税を支払った後の最終利益。これを株主が出資したお金である自己資本で割ることによって、株主が投資したお金でどれだけ効率的に企業がお金を稼いだかを測ることができるのです。

企業の収益力を金額だけで見ると、企業規模の大きい方が小さい企業より収益力が高いと判断してしまいます。ですから、自己資本に対する当期純利益の割合を用い、企業規模に関わらず同じ物差しで収益力を測ろうというのがROEなのです。

たとえば、自己資本500で当期純利益が100のA社と、自己資本10,000で当期純利益が1,000のB社では、当期純利益ではB社のほうが優良に見えます。しかしROEを計算すると、

A社のROE=100÷500×100=20%
B社のROE=1,000÷10,000×100=10%

となり、A社の方が自己資本を効率的に使い、高い利益率をだしていることがわかります。つまり、A社の方がROEは高いので、収益力も高いと判断できるのです。

ROEを株式投資に役立てる

一般的に、ROEが高ければ収益力の高い優良企業と判断できます。そしてROEの高い方が、企業価値向上による株価上昇が期待できます。2014年に経済産業省がまとめた報告書(伊藤リポート)では、日本企業のROE目標を8%にしました。

ただ、2021年2月時点のROEは5%台(東証1部ベース)となっており、米国の13%台や欧州の8%台を下回っています。ただROEが低い企業は投資対象にならないかというと、決してそんなことはありません。

現在ROEが低い企業でも、将来ROEが改善して株価が大きく上昇するのを待つのも手法の1つだからです。最近は、多くの企業が ROEの向上を経営目標にしています。現在のROEが低くても、企業努力によって高ROEに生まれ変わり、優良企業の仲間入りをする可能性もあります。

ROEとPER・PBRの関係

株式を選ぶ際は、ROEだけでなくPERやPBRもあわせて考えることが大切です。ROEは企業の収益性を表す指標ですが、株価水準を考えた指標ではないからです。そして、ROEとPBR・PERには、以下のような関係があります。

PBR=ROE×PER

ROEは「1株当たり当期純利益÷1株当たり純資産」、PERは「株価÷1株当たり当期純利益」で表せます。そして両方を掛けると「株価÷1株当たり純資産」、つまりPBRになるのです。

PBRが低い銘柄であればROE×PERも低いと言えます。ROEが低くてPBRが低いのであれば、低ROEが低いことを反映した妥当な株価といえるのです。

一方、ROEが高いのにPERが低くてPBRが低くなっている銘柄は、株価が割安に放置されている可能性があります。このような銘柄は今後、上昇する可能性が高いと判断できるのです。

つまり、PERやPBRだけでなく、ROEも判断材料にすることで、割安銘柄を見つけやすくなるのです。

ROAとROEの違い

ROEと同じく、成長性を測る指標の中で代表的なのがROAです。ただ、ROAの利益は営業利益を使います。ROAの計算式は以下の通りです。

ROA=(予想)営業利益÷総資産

ROAは総資産に対する利益の割合を表しています。総資産は、株主が出資したお金だけでなく、社債の発行で調達したお金や、銀行からの借入金などの負債も合わさったものです。ROAは負債分も含んでいるため、直接株主価値とは関係しません。

一方のROEは自己資本に対する利益を表しているので、株主還元を表しています。ですから、株主投資においてはROAよりもROEの方が大切な指標なのです。

ただ、ROAとROEの関係は以下のように表せます。

ROE=(利益÷総資産)×(総資産÷自己資本)=ROA×レバレッジ

つまり、ROEはROAにレバレッジを掛けたものになるのです。レバレッジとは、株主が出資したお金に対し、借り入れなどを使って会社全体の資産をどれだけ増やしたかという比率を表したものです。

自己資本を減らして負債額を増やすことでも ROEは上昇するので、米国などでは借入金を活用して自社株買いを行い、ROE を高める動きが目立ちます。

まとめ

株式投資においてROEが重視されるようになってきています。ただ、ROEだけでなくPERやPBRといった他の指標を組み合わせることで、より詳細な分析ができるようになります。また、ROAとROEの違いも理解し、ROEが上がっている要因も把握するようにしてください。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者3万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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