一棟アパート投資に向いている人とは? メリット・デメリットと投資を開始する基本ステップ

はじめに

一棟アパート投資は、安定した家賃収入や節税対策として注目を集める不動産投資の一形態です。しかし、必ずしも誰にでも向いているわけではなく、成功するには適切な知識と戦略が欠かせません。

この記事では、一棟アパート投資に向いている人の特徴やメリット・デメリット、一棟アパート投資を開始する手順について詳しく解説します。

一棟アパート投資が注目される理由

一棟アパート投資が注目される理由は何でしょうか。主なメリットとして、以下の4点を解説します。

安定した家賃収入が得られる

一棟アパート投資は、アパートを一棟丸ごと購入または新築し、入居者に賃貸して家賃収入を得る投資方法です。家賃は人々の「住まう」という権限的な行為から生まれる収益であり、景気動向や経済状況にあまり左右されません。株式投資などの金融商品と違い、大きな変動はしないのが特徴です。

複数の部屋から家賃を得る仕組みのため、安定した収益が得られるのもメリットです。居室が複数のため、空室が一部発生しても他の部屋から家賃収入を得られるのでリスクが分散されます。

区分マンション投資と比較すると、一棟アパート投資のほうがリスクが低いといえます。区分マンション投資では空室が発生すると収益がゼロになる可能性がありますが、一棟アパート投資ではその心配がありません。

レバレッジ効果で効率的な資産運用が可能

一棟アパート投資の大きな魅力の一つは、金融機関の融資を活用して少ない自己資金で大きな資産運用を行える「レバレッジ効果」にあります。ローンを上手く組み立てることで、効率的な資産拡大が可能になります。

レバレッジ活用による資産拡大のスピードアップが不動産投資の醍醐味といえるのですが、借入額が多すぎる場合は金利の上昇や収益悪化のリスクがともなうため、リスク管理が重要です。

インフレに強い実物資産が持てる

インフレが進行する経済環境下において、不動産はその価値が下がりにくく、資産を守る効果的な手段として注目されています。インフレによって貨幣価値が低下する場合でも、不動産の家賃や土地価格は上昇する傾向にあり、価値を維持しやすいという特性があります。

現金や預貯金はインフレに対する耐性が弱く、実質的な価値が減少していきます。しかし、不動産は需要が維持される限り、資産価値を保ちやすい投資対象となっています。

節税効果を期待できる

一棟アパート投資には節税というメリットもあります。具体的には、減価償却という会計処理を活用して、所得税・住民税を圧縮できます。

減価償却によって、物件(建物・設備部分)の購入費用を分割して経費計上を行い、実際にはお金が出ていかない支出が発生します。不動産所得が帳簿上赤字となり、他の給与所得や事業所得と損益通算することで課税所得を圧縮します。結果として、所得税・住民税の大幅な節税が可能になるのです。

所得税は累進課税なので、一棟アパート投資による節税効果は高所得者ほどメリットが大きくなります。

また、不動産は相続税の節税にも効果的です。現金や金融資産の相続税評価額が時価で判定されるのと異なり、不動産は土地が相続税路線価で、建物は固定資産税評価額でひょうかされます。最終的には時価の30〜40%程度となりますので、その分相続税の節税となります。

一棟アパート投資で注意すべき点

一方、一棟アパート投資にはリスクも存在します。主に注意すべき点を4点にまとめます。

空室リスクを防ぐための対策

空室リスクは不動産投資の最大のリスクと呼べるものです。空室の発生は収益悪化の大きな要因となるため、空室リスクを防ぐにはエリア選定や市場調査が非常に重要です。周辺エリアの人口動態や賃貸需要、競合物件の稼働状況をしっかりと調査することで、需要が高く安定したエリアを特定できます。不動産ポータルサイトや自治体の統計情報を活用して、具体的なデータの収集し、綿密な市場調査を行います。

賃貸需要が高いエリアを選ぶとともに、競合物件が乱立している箇所を避ける判断も重要です。競合物件が多いと過当競争となりやすく、結果として共倒れとなる可能性があります。

家賃滞納リスクとその対応策

家賃滞納は収益を減少させるリスク要因です。そのため、事前の対策が非常に重要となります。入居者審査の徹底がその一つです。不動産仲介会社との協力の上で、入居者の信用情報や収入証明書の確認を行い、家賃滞納リスクを事前に把握して対処します。

家賃保証会社の利用も効果的です。家賃保証会社に加入すれば、家賃滞納が発生した場合でもリスクを軽減できます。入居時には家賃保証会社との契約を条件にしてもらいましょう。

老朽化リスクと計画的な修繕

出典:国土交通省 民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック

 

アパート投資を行う際には、建物の老朽化リスクをしっかりと考慮する必要があります。時間が経つにつれて建物は劣化し、修繕費用が発生します。そのため、定期的な維持管理や計画的な修繕が求められます。

集合住宅では、おおよそ築12〜15年で大規模修繕の時期を迎えます。水回り設備の交換、外壁の塗装・コーキング補修、屋根の修繕・葺き替え、配管の交換などの工事が必要となり、費用は数百万円以上となる場合があります。

大規模修繕費用に備えるためには、物件取得時から修繕積立金を積み立てる必要があります。月々の家賃収入から一定額を修繕費用として積み立てることで、突発的な修繕費用にも柔軟に対応できます。また、定期的な点検やメンテナンスを続けることで、老朽化リスクを低減できます。問題が大きくなる前の早期対応で、大規模な出費を抑制できます。

流動性リスクと売却時の注意点

不動産投資には、流動性リスクという特有のリスクが存在します。不動産は現金化するまで時間がかかるため、売却のタイミングや物件の特性に注意が必要です。

売却しやすい物件にはいくつかの特徴があります。都市部の物件は人口が集中して需要が安定しているため、買い手が比較的見つかりやすいですが、地方や郊外の物件は売却が難しい傾向があります。

物件の管理状態が良好であるか否かも売却の成功に影響します。修繕履歴が明確で、しっかりと手入れが行き届いている物件ほど売却価格が高くなる可能性があります。また、入居者満足度の高い物件は、空室率も低く利回りも維持されるので、売りやすいといえるでしょう。

一棟アパート投資を始めるための基本ステップ

一棟アパート投資は大きく分けて、地主が所有する土地にアパートを新築する、土地を購入してアパートを新築する、土地込みの新築アパート商品を不動産会社から購入する、中古アパートを購入するという4つの方法があります。

ここでは、中古アパート(オーナーチェンジ物件)を購入する場合の基本ステップを解説します。

投資目的を明確にする

一棟アパート投資を始める際には、まず投資目的を明確にする必要があります。短期的な収益を目指すのか、長期的な資産形成を目指すのか、節税が目的なのか、相続対策なのかをはっきりさせます。

また、本人のリスク許容度を考慮し、自己資金や借入可能額をもとにリスク計算を行うことが必要です。

出典:財務省中国財務局 「リスク許容度」を考えよう

市場調査と物件選定

投資の成功には適切なエリア選びが欠かせません。まず、人口動態や賃貸需要を調査して需要が見込まれるエリアを選定します。都市部や再開発地域のように人口増加が見込めるエリアや、職場、大学、商業施設の近隣といった賃貸需要が高い場所が狙い目です。

物件を選ぶ際には、時代のニーズにマッチした間取りや設備になってるかを確認します。リフォーム/リノベーションでカバーできる場合は、その費用も計上したうえで投資判断をします。

収支計画書の作成

不動産投資会社と相談のうえ、綿密な収支計画書を作成します。収益の計算では、年間家賃収入を物件価格で割り、利回りを算出します。空室発生率、家賃滞納率も現実的な数値を想定します。

維持コストについても把握が欠かせません。管理費や修繕積立金、保険料、ローン返済額といった必要経費を正確に見積もり、計画的に運用することが求められます。

金融機関への相談

一棟アパート投資において融資戦略は欠かせないもので、金融機関の選定は重要です。地方銀行や信用金庫は比較的柔軟な条件を提示するため、金利や融資期間を比較しながら条件の良い金融機関を選びます。

融資審査では自己資金が一定額求められます。そのため、物件価格の10~30%程度の自己資金を確保しておきます。

不動産売買契約を結ぶ

最終的に購入する物件が決まったら、不動産売買契約を締結します。その際、重要事項説明はしっかりと受けます。物件の権利関係や法的規制、共有部分の管理状況などは十分に確認します。不動産会社のサポートも受けましょう。

契約書の内容では、売買価格や手付金の額、支払い条件を確認し、特約事項も確認します。契約不適合責任についての免責の特約がある場合、条件をはっきりさせて契約書に明記することで後々のトラブルを防止できます。

物件の引き渡しと管理開始

金融機関の融資が正式決定すると物件の引き渡しとなります。引き渡し日には、ローンの実行、残額の決済、所有権移転登記が同日に行われます。引き渡し時には、契約内容通りの状態かどうかを現地でしっかりと確認します。設備や共用部分に損傷がないか、建物図面や修繕履歴、管理規約、鍵の受領確認も行いましょう。

管理が開始されますので、管理を委託する管理会社を事前に決めておく必要があります。物件の購入まで伴奏してくれた不動産会社に引き継いでもらうのも一つの方法です。

管理委託料は家賃収入の5%程度が一般的です。委託契約をする際には、管理内容(入居者管理と建物管理)を明確にしておきます。

一棟アパート投資に向いている人の特徴

一棟アパート投資に向いている人は、どのような特徴を持っているのでしょうか。その特徴を解説します。

学ぶ意欲があり、勉強熱心な人

一棟アパート投資には、不動産市場や資産運用の基礎、法律、税金など幅広い知識が求められます。そのため、セミナーや書籍を活用して学び続ける意欲がある人が成功しやすい傾向にあります。

不動産投資に必要な情報は日々変化しており、新しい法律や市場のトレンドを適切に把握しないと、損失リスクが高まる可能性があります。継続的に知識を習得し、専門知識のアップデートが重要です。

アパート経営を事業として取り組める人

不動産投資は、資金を投下すれば終わりという意味での「投資」ではありません。その意味で、一棟アパート投資は「事業」であり、成功させるためにはアパート経営を事業として捉える経営者マインドが必要です。

入居者募集活動や空室対策、修繕計画、家賃設定、リフォーム/リノベーションの実施、管理体制の構築など、経営者として幅広い視点で物件を運営することで、長期的な収益性が確保できます。

一棟アパート投資において成功する人は、問題解決能力や収益改善のための計画立案能力を持ち、常にアクティブな姿勢で経営しています。

リスクを分散して長期的に投資を考える人

投資家はリスク分散のために、アセットアロケーションを意識します。アセットアロケーションとは、投資資産を異なるアセットクラス(株式、債券、不動産など)の配分を指します。すでに株式などの金融資産を所有している投資家は、アセットアロケーションのために一棟アパート投資が推奨できます。

アセットアロケーションは、資産運用においてリスクを分散するための重要な手法です。異なる資産クラスの配分が運用パフォーマンスに大きな影響を与えるため、長期的な資産形成には欠かせないといえるでしょう。

不動産投資は、株式や債券と異なる特性を持ち、値動きが連動しにくい特性があります。他の資産クラスとの相関関係を考慮した分散投資が可能となり、資産全体のリスクを軽減できるのです。

まとめ

一棟アパート投資は、安定した収益を得るだけでなく、長期的な資産形成も可能である点が魅力です。投資を成功させるためには、想定できるリスクを洗い出し、マネジメントに万全を期すことが重要です。

初心者であっても、一歩ずつ計画的に進めていけば、着実に資産運用は可能です。まずは小さなステップから始め、自分の目標に合ったプランを構築しましょう。

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