不動産投資で成功するための管理会社の選び方と注意点

はじめに

不動産投資は、安定した収益を得るための有力な手段ですが、その成功は管理会社の選び方に大きく左右されます。管理会社の選択に迷っている人や、どのような基準で選べば良いのか不安な人も多いのではないでしょうか。

本記事では、不動産投資を成功に導くための管理会社の選び方と、知っておくべき注意点について解説します。

不動産投資における管理の重要性

不動産投資は資金を投じて収益物件を取得するという投資活動なわけですが、投資すれば終わりではなく、物件取得と同時に管理が開始されます。その点が株式など他の投資商品とは性格を異にするところで、「投資」というより「事業」に近いものです。

不動産投資における管理の重要性について見ていきます。

安全で衛生的な住環境の提供

不動産賃貸業というのは、入居者様に住環境というサービスを提供して対価を得る「不動産賃貸業」に該当します。不動産賃貸業では、オーナーは入居者に安全で衛生的な住環境の提供が求められるのです。

その内容は法律にも規定されていて、民法601条では入居者(賃借人)が賃料支払い義務を負う点と、オーナー(賃貸人)が目的物を賃借人に使用・収益させる義務を負う点が明記されています。

入居者に安全で衛生的な住環境を提供するためには、適正な管理が重要です。日常的な清掃などの細やかな手入れから大規模修繕、入居者の相談・苦情への対応などの実施で、入居者に安心して暮らしてもらえる環境が整えられます。

適切な管理は空室対策になる

日常の管理対応力は入居者満足度に直結し、入居者の「住み続けていたい」という気持ちに影響を与えます。結果として、空室は出にくくなり、空室が出たとしても早期に埋まりやすくなります。入居者満足度が高い物件は、魅力的な賃貸住宅として認知されるようになるでしょう。

逆に、迅速で適切なトラブル対応やていねいなコミュニケーションがない場合は、入居者の不満と不信感を招き、退去や契約更新拒否につながりかねません。

物件の資産価値の保全

経年変化にともなって、賃貸アパート・賃貸マンションの建物本体は少しずつ劣化します。また、空調設備や水回りなどの設備にも不具合が出てくるのは避けられません。もし、適切な建物管理を怠り、メンテナンスや修繕がおざなりになっていたら、建物・設備が痛む速度も早まってしまうでしょう。

定期的なメンテナンス・修繕、入居者の退去にともなう原稿回復工事、12~15年ごとの大規模修繕は建物の保守・維持に大事な工事で、物件の資産価値を保全する重要な業務なのです。

また、適切な管理によって空室が少なく入居率が高く保持された物件は、収益還元法により物件価格を高く保持できる効果もあります。

管理の3つの形態

賃貸経営における管理の形態としては、自主管理、委託管理、サブリースの3つの形態があります。

自主管理

自主管理とは、オーナー自らが収益物件の管理を行うスタイルの管理形態です。入居者募集や契約業務、清掃やメンテナンスなどの建物管理、家賃回収業務、入居者のクレーム対応などをオーナー自身が行います。

自主管理のメリットは、管理費用が抑えられることです。管理会社に委託しないため、管理委託手数料は発生しません。その費用が節約できた分、キャッシュフローを改善させられます。また、建物・設備の状態、共用部分の状況、入居者の様子などをオーナー自身が確認できるのもメリットです。管理会社を通して間接的に把握するよりも、ダイレクトに管理にコミットできます。

入居者とのコミュニケーションが密になる側面もあります。トラブルがあったときも入居者の協力が得られやすくなり、気心の知れた関係性の構築で長期入居してもらえたり、家賃滞納リスクを減少させられる効果もあります。

管理のための手間と時間が取られるのはデメリットです。複数棟所有したり、遠方の物件を所有したりするのは事実上無理だといえるでしょう。管理業務自体について専門知識が求められる場面もあります。プロの知見が求められる局面で、素人判断をしてしまうと重大な損失を招いたり、法令違反を犯したりするケースもあります。

委託管理

委託管理とは、オーナーが管理業務の全体または一部を専門の管理会社に依頼する管理形態です。不動産投資を効率的に運営するための選択肢として、多くのオーナーに利用されています。

委託管理のメリットとしては、管理会社の専門知識と経験を活用できる点が挙げられます。管理会社は賃貸管理のプロフェッショナルです。入居者募集や契約手続き、家賃回収、修繕・メンテナンスなど幅広い業務で、オーナーが個人で対応するよりも効率的な管理が可能です。

委託管理には管理手数料が発生します。管理手数料は家賃収入の5%程度が相場ですが、管理業務の範囲や会社によって異なります。

サブリース

サブリースは、オーナーが物件を管理会社に一括で貸し出し、管理会社がその物件を第三者に転貸する契約形態を指します。「一括借り上げ」や「家賃保証」とも呼ばれ、一定の収益を確保したいオーナーに人気のある管理形態です。

サブリース最大のメリットは、管理会社が家賃を保証するため、空室リスクと家賃滞納リスク対策になる点です。家賃収入の変動を抑えたいオーナーにとっては大きな魅力です。

サブリースのデメリットとしては、管理会社に一括で貸し出す際の家賃は通常の賃料相場よりも低めに設定されるため、収益性が低下する点が指摘できます。

また、サブリース契約では、管理会社が賃借人の立場になるため借地借家法で守られる存在になります。オーナー側からの契約解除に「正当事由」が求められたり、管理会社側から家賃減額請求されたりする可能性があり、この点をめぐって全国でトラブルが発生しています。

管理の基本的な業務内容

管理会社が行う管理業務は、入居者管理と建物管理の2つに大別されます。これは、賃貸管理のソフト面とハード面と定義できます。入居者管理と建物管理を細かく見ていきましょう。

入居者管理

入居者管理はその名の通り入居者に関する管理業務で、狭義の意味での賃貸管理です。入居者管理には入居者募集業務・仲介業務から、家賃回収代行業務や各種契約業務まで多岐にわたります。

入居者募集業務・仲介業務

入居者募集と契約手続きです。物件に適した入居者を見つけるための広告活動から、入居希望者の審査、契約書の作成まで、一連の業務を管理会社が行います。入居者募集業務は、管理会社が他の不動産仲介会社に依頼するケースもあります。

家賃回収代行

入居者が決まった後は、家賃の徴収が重要な仕事となります。毎月の家賃の回収はもちろん、未払いが発生した際の催促や法的手続きも管理会社が対応します。

入居者トラブル、クレームへの対応

入居者からの問い合わせやクレーム対応も管理会社の重要な業務です。住環境に関する問題やトラブルに迅速に対応し、入居者が安心して生活できるようサポートします。こうした対応がスムーズであるほど、長期的な契約関係が築かれる可能性が高まります。

建物管理

建物管理は建物の駆体や付随設備の管理を指し、ビルマネジメントとも呼ばれます。物件の状態を良好に保つため、定期的な点検と修繕管理も欠かせません。

日常清掃・定期清掃

日常清掃は廊下・エントランスなどの共用スペースの清掃、郵便受け周辺のごみの片付けなどを行う業務です。定期清掃ではエントランス・廊下・階段・外壁・駐車場などを徹底的に清掃し、美観を保ちます。

通常点検や法定点検

通常点検は建物や設備の劣化状況を確認します。法定点検は消防設備やエレベーターなど、安全面の確認が義務付けられており、定められた頻度で実施されます。これらを適切に行うことで、トラブルを未然に防ぎます。

大規模修繕の計画・実施

出典:国土交通省 民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック

大規模修繕はおおよそ12~15年に一度のサイクルで、外壁や配管の補修など建物全体を対象に計画されます。劣化を防ぎ、資産価値を維持するためには不可欠です。計画的な実施が収益安定化の鍵となります。

管理会社選びで確認すべきポイント

管理会社の選定は、不動産投資の収益性に大きな影響を与えます。適切な管理会社の選択で、空室率や賃料の滞納を改善し、安定した収益を得られます。管理会社選びで確認すべき重要ポイントを4点解説します。

入居者募集に強みがある

入居者募集に強みがある管理会社を選ぶようにしましょう。効果的な募集活動を行う会社は、物件の空室期間を最小限に抑え、安定した収益をもたらします。具体的には、不動産ポータルサイトやSNSを活用した広告戦略、広範な不動産仲介会社ネットワークの活用が挙げられます。入居希望者のニーズを的確に把握し、迅速に対応できる体制も重要です。

管理戸数の実績

出典:大東建託 賃貸住宅管理戸数、大東建託グループが28年連続で全国第1位を獲得

管理戸数の実績は、管理会社の実力を見極めるための重要な指標となります。管理戸数が多い会社は経験が豊富で、さまざまな状況に対処してきた実績があります。物件特性や地域事情、空室対策や入居者への対応力において豊富なノウハウが蓄積されていると考えられます。

管理戸数の多さは、賃貸管理におけるスケールメリットともなります。例えば、エアコンの交換設置を実施するにしても、管理戸数の多い管理会社は大量購入により仕入れを安くすることが可能です。

入居者満足度とトラブル対応力

入居者満足度が高い管理会社は、空室率が低く、長期的な安定経営につながります。クレームやトラブル発生時に迅速かつ適切に対応できる力を持つ会社は、入居者から信頼されやすく、結果的に物件の評判も向上します。トラブル対応力や入居者とのコミュニケーション力が高い会社は、オーナーにとっても安心感を与える存在です。

賃貸経営のサポート力

管理会社は単に物件を維持するだけでなく、経営全般を支援できる能力が求められます。定型的な管理業務を超えて、戦略的なリフォーム/リノベーションの提案、大規模修繕の提案、長期的な収支計画にもとづく出口戦略の策定などの「賃貸経営代行」を担うものとなっているのです。

こうした業務をプロパティマネジメントと呼びますが、プロパティマネジメントに対応できる管理会社は、オーナーの収益性を高め不動産投資を成功に導く力強い戦略的パートナーとなるでしょう。

管理会社変更の注意点

すでに不動産投資を始めていて、管理会社に委託しているオーナーの中で、管理会社を変更したいと思っている人もいるでしょう。

空室や家賃滞納、入居者トラブルが発生している、入居者サービスがスムーズにいかない、営業利益率が想定ほどいかないなど賃貸経営の悩みがあり、管理会社のパフォーマンスに不満を持つこともあるのではないでしょうか。

管理会社を変更することは、不動産投資において重要な決断ですが、手続きやリスクを十分に理解していないと、収益性や運営に悪影響を及ぼす可能性があります。ここでは、管理会社変更時の注意点について解説します。

契約内容の確認

現在契約している管理会社との契約内容を詳しく確認します。特に注意すべきポイントは、契約の解除条件や違約金の有無、解除通知の期日です。

契約書には通常、「契約解除の〇日前に通知すること」や「解除時に発生する違約金の金額」などが明記されています。こうした記載がある場合は、その規定に従います。規定に違反すると、余計な費用が発生したり、スムーズな管理会社変更ができなくなったりする恐れがあります。

新旧管理会社間の引き継ぎ

管理会社の変更では、旧管理会社から新管理会社へのスムーズな引き継ぎが不可欠です。以下のポイントを念入りにチェックしましょう。

入居者情報の正確な引き渡し…入居者の契約書や連絡先情報、家賃の支払い状況などを新管理会社に正確に伝えます。

未解決のトラブルやメンテナンス問題…未解決のクレームや修繕の進捗状況を確認し、次の管理会社が適切に対応できるようにします。

資金管理状況…入居者が支払った敷金・礼金の管理状況を明確にし、新管理会社に引き継ぎます。

円滑な引き継ぎを行うためには、管理会社同士のコミュニケーションだけでなく、オーナー自身も積極的に関与することが大切です。

入居者への通知

管理会社が変更される際には、入居者への通知も忘れずに行いましょう。入居者が突然の変更に戸惑わないよう、以下の情報を丁寧に説明します。

・新しい管理会社の連絡先や対応窓口

・家賃の支払い方法の変更がある場合はその詳細

・新管理会社の担当者の名前や役割

通知は、書面やメールを用いて正式に行うことが望ましいでしょう。社会的な問題となっている「振り込め詐欺」と間違われるケースもあるため、家賃振込先口座変更のお願いは丁寧に行わなければなりません。

金融機関への事前の連絡

金融機関から融資を受けて不動産投資を行っている場合は、管理会社変更を金融機関に事前に連絡します。管理会社の変更自体は融資に影響はありませんが、金融機関は融資した物件の担保価値が保全されているかを重要視するため、管理会社の確認も行います。

収益性や資産価値に影響を及ぼす可能性がある管理会社の変更をオーナーが無断で行うようなことがあれば、金融機関の印象を悪くするかもしれません。管理会社を変更するならば、金融機関に不安を与えないために事前に連絡しておきましょう。金融機関への事前連絡についても、新会社と対応方法を確認したうえで適切に対処しましょう。

まとめ

不動産投資においては入居者管理・建物管理が重要ポイントであり、信頼できる管理会社への委託によって安定した賃貸経営が実現できます。不動産投資は不動産賃貸業の経営そのものなので、適切な管理が収益性や資産価値の維持、入居者満足度の向上に直結するのです。

管理会社とのパートナーシップは、不動産投資の成功を大きく左右します。管理会社の選定や変更の際には、慎重な判断をおすすめします。

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