目次
はじめに
不動産投資には魅力を感じる反面、そのリスクへの不安を抱えている方もいます。特に初めて不動産投資にチャレンジする場合、空室の発生や不動産価格の変動、入居者とのトラブルなどさまざまなリスクに頭を悩ませるかもしれません。
この記事では、不動産投資に潜むリスクを理解し、対処するための具体的な方法をお伝えします。リスクを正しく把握し、適切な対策を講じることで、自信を持って不動産投資に踏み出すことができます。
不動産投資のリスクを理解する
投資のリスクとは
不動産投資に限らず、投資には必ずリスクがつきまといます。日本ではリスクを「危険」や「危機」と理解している人が多く、そのため「リスクは回避するべきもの」とする考え方が一般的になっています。
しかし、リスクを正しく表現するならば「不確実性」です。実際に日本工業規格では、リスクを「目的に対する不確かさの影響」と定義しています。リスクは回避すべきものではなく、許容すべきものと考えるほうが正確です。
リスクとリターンは比例する
投資におけるリスクとは、リターン(収益)が予測できないこと、その投資商品の値動きの幅が大きいことを意味します。
重要なポイントは、リスクとリターンは比例の関係にある点です。大きいリターンを望むならば、リスクの大きい商品を選ぶ必要があります。つまり、ハイリスク・ハイリターンです。リスクをあまり許容できないと考えるならばリターンの少ない商品、つまりローリスク・ローリターンの投資商品を選ぶようにします。
不動産投資はミドルリスク・ミドルリターン
ハイリスク・ハイリターンの投資商品といえば、FX(外国為替証拠金取引)、株式の個別銘柄、暗号資産などが該当します。一方、国債や有名企業の社債などがローリスク・ローリターン商品の代表格です。
不動産投資は、その中間のミドルリスク・ミドルリターンに位置付けられます。不動産投資には特有のリスクが存在しますが、その対策方法もありますので、正しくリスクコントロールしていけば成功確率は上がります。
不動産投資のリスク6つと対策方法
ここでは不動産投資の代表的なリスク6つと、その対策方法を見ていきましょう。
空室リスク
空室リスクは、所有する物件に入居者が入らず、家賃収入を得られなくなるリスクです。不動産投資では、最大のリスクとして意識されるものです。
長期間にわたり空室状態が続くと、家賃収入が途絶えるためキャッシュフローが悪化します。ローン返済や管理費用、修繕費用の支払いも苦しい状況に陥る危険性があり、最悪の場合は自己破産にもつながりかねません。
空室リスクの原因にはさまざまな理由があります。物件が建っているエリアの魅力が低下することで、賃貸需要が低下したというのもその一つです。地域にあった大きな工場・大学の移転による人口の減少や、商業施設の撤退によるにぎわいの消失などもあります。
賃貸住宅の大量供給によって、競合物件が乱立することも空室を招く要因です。人口は増え賃貸需要も増加しているのに、それを上回る供給によって満足な入居率が実現できないケースといえます。
物件の間取り・設備が時代に合わなくなって、入居者に選ばれなくなっている事例もあります。一昔前にあった単身者向けの2K・2DKの間取りや、水回り3点ユニットなどが該当します。
空室リスクをコントロールするためには、以下の点を意識するようにしましょう。
①利便性が良く、賃貸需要のある立地の物件を選ぶ
②時代の流れや需要にあった間取り・設備を準備する
③入居者募集に強く、入居者満足度を高める管理を行う管理会社に委託する
家賃下落リスク
家賃下落リスクとは、想定以上に家賃が下落し、キャッシュフローや資金繰りが悪化するリスクです。
一般的に、収益物件は建物の経年変化に比例してゆるやかに家賃が下落します。新築物件は高めの家賃設定が期待できますが、ある程度の築年数までは家賃が下落するものです。おおよその目安ですが、家賃は築年数が1年経過するごとに1%下落するとされています。
不動産投資の収支計画においては、あらかじめこの点を織り込んで計画するのですが、想定以上の家賃下落が生じると予定していた収益が確保できず、キャッシュフローや資金繰りの悪化が生じます。
家賃下落リスクは、空室リスクと連動する面があります。賃貸需要のない地域や、空室になりそうな物件は家賃が下がりやすくなるのです。
また、日本全体の景気動向が家賃の引き下げに影響を与えることがあります。景気の悪化や失業率の上昇は居住者の支払い能力に影響を及ぼし、家賃の引き下げ圧力となり得ます。
家賃下落リスクをコントロールするためには、空室リスク対策と同様に、利便性が良く賃貸需要のある立地の物件を選ぶことが重要ですが、将来的な成長性にも着目するようにしましょう。そのエリアが、将来的にも人々を集める魅力があるのかを見極めます。
家賃滞納リスク
家賃滞納リスクとは、家賃を滞納する入居者が発生してしまうリスクです。
滞納者が滞納している期間オーナーは家賃収入が途絶えるばかりではなく、物件に居座られ続けるので他の入居者を入れることもできません。催促して入金してくれればいいのですが、交渉がこじれると明け渡し訴訟にまで発展することがあり、多くの金銭的コストがかかるばかりか、多大な関係者の精神的負担も引き起こします。
入居者は借地借家法で守られているので、オーナーからの契約解除のためには「正当事由」が必要となります。正当事由が成立するためには、オーナーと入居者による当事者間の信頼関係が破壊されなければならないとされています。1~2ヶ月程度の家賃滞納では、信頼関係の破壊とは見なされないのが現状です。
家賃滞納リスクへの対策としては、入居審査を念入りに行うことが重要です。家賃支払い能力は単に年収の高低ではなく、継続的に家賃を支払ってくれるかどうかという観点が大切です。入居審査のノウハウを持っている管理会社に契約業務を委託するのも大切なポイントでしょう。
近年では、家賃保証会社への加入を義務付けているところも多くなっています。家賃滞納が生じた際、家賃保証会社はオーナーに家賃支払いを保証してくれますので、リスクを低減できます。
災害リスク
自然災害は、不動産投資において避けられないリスクの一つといえるでしょう。例えば、地震や台風などによって物件が損壊すると、価値の損失は免れません。
また、民法において、オーナーは入居者に物件を適切に使っていただく環境を整えなくてはならない義務を有しており、災害などで物件に不具合が生じたときは修繕の義務を負います。
災害リスクへの備えは、保険に加入することが基本です。これを「リスク移転」と呼びます。収益物件のオーナーは火災保険、地震保険に加入しますが、加入前に保険のカバー範囲を確認しておきましょう。契約内容によっては、水害には対応していないなどのケースもあるため、慎重な確認が必要です。
なお、日本で地震の予見は不可能ですが、水害についてはハザードマップを見ることである程度予見が可能です。物件購入前に自治体が準備しているハザードマップを必ず確認し、水害発生の可能性の低い土地を選定するようにしましょう。
物件価格下落リスク
不動産には物件の価格下落リスクがあります。
不動産の価値は、景気動向・経済状況に強い影響を受けます。世界経済・日本経済の動向は、不動産市場全体に影響を及ぼし、物件価格の変動要因となります。景気が悪化する方向に行けば、不動産価格は下落に向かい、所有する物件の価格も下落するリスクがあります。
不動産価格は株価指数と強い相関関係があり、一般的に日経平均株価が半年後の不動産相場を表すと言われています。
物件が建っているエリアの景気動向も影響を与えます。日本全体が景気上昇最中であっても、物件のある地域では人口減少や商業施設の撤退などにより、景気が落ち込み賃貸需要が減退していれば、不動産価格は下落します。
不動産投資は「出口」、つまり「売却」によって完結します。不動産価格が下落すると、物件売却時に期待していた譲渡価格が得られず、投資の収支結果が悪化することになります。
キャピタルゲイン(売却益)を想定していたが、キャピタルロスになったというケースもありますし、キャピタルロスが想定よりも大きく、譲渡価格がローン残債に満たないため、ローン残債を完済するために自己資金を拠出するはめになるケースもあります。
価格下落リスクへの対策としては、不動産市場だけでなく世界経済・日本経済・地域経済の動向に気を配り、経済指標や地域の開発計画などの情報を収集することが重要です。多角的な視点で投資するエリアを選定することで、特定の地域リスクを避けることができます。物件購入時には過去数年間の周辺地域の動向を調査し、将来性のある地域の選定もリスク管理の一環です。
金利上昇リスク
金利上昇リスクとは、金利の変動によってローン利息が上昇し収益が減少して損失を生じるリスクを指します。不動産投資において、変動金利の融資を受けている場合、金利上昇のリスクをともないます。
日本は歴史的低金利の状況が続き、それが当たり前の感覚になっていましたが、昨今の物価上昇に起因して日銀が政策金利の上昇を始めました。政策金利が上昇しても、現段階では低金利状況であることには変わりませんが、今後日本はインフレ局面に入っていくことが予想されるため、さらなる金利上昇も予想されます。
金利上昇リスクへの対策としては、不動産投資ローン設定時に金利変動の特徴をふまえた商品選定があります。すでに不動産投資ローンを設定して、不動産投資を行っているオーナーは、ローンの借り換えが有効になる場合もあります。
金融機関によって不動産投資ローン商品は、固定金利型、変動金利型とさまざまなものがあります。将来的な金利変動の影響を軽減するために、さまざまなローン商品の中から自らの投資スタイルに合致したものを選ぶことが重要です。
リスクがあっても不動産投資をした方がいい理由
不動産投資には、リスクがあるとしても取り組む価値があります。ここでは、不動産投資のメリットを5つ取り上げます。
長期・安定的な収益が期待できる
不動産投資のもっとも魅力的なメリットとしては、長期にわたって安定した家賃収入を毎月得られることが挙げられます。
不動産投資の収益にはキャピタルゲインとインカムゲインがあります。キャピタルゲインは物件の売却によって得られる収益、インカムゲインは物件を保有していることで得られる収益(家賃収入)です。
キャピタルゲイン狙いの不動産投資もありますが、リスクが大きいので、日本での不動産投資の主流はインカムゲイン重視の運用となっています。
株式の配当金や債券の金利と比べても、家賃収入は魅力的な数字となっています。また、家賃というものは居住者の生活に根ざしているため、経済動向・景気動向にあまり左右されず安定して推移します。株式などは経済動向によってあっという間に下落するのですが、不動産は物件価格の下落も株式よりも緩やかですし、家賃に至っては不況下でも維持されたり、下落するとしても非常に緩やかです。
物件選びさえ間違えなければ、長期にわたって安定的な収益を期待できるのが、不動産投資最大の魅力です。
レバレッジにより資産形成を加速できる
「投資は種銭がものいう」といわれます。投資においては、元手となる自己資金の大きさが収益の大きさにダイレクトに反映するわけです。
不動産投資においては、金融機関による融資の活用で自己資金の何倍もの資産の運用が可能になり、資産拡大のスピードアップを果たせます。これを「レバレッジ効果(テコの原理効果)」と呼びますが、不動産投資の醍醐味といえるものです。
投資のパフォーマンスを図る指標として「利回り」がありますが、レバレッジを活用したときの指標として「自己資本利回り(CCR)」という指標があります。自己資金として出した金額に対してどのくらい利益が出たのかを表す目安ですが、自己資金だけの投資では5%の物件も、レバレッジ活用によって自己資本利回り10~15%以上の実現も可能になるのです。レバレッジをかけた不動産投資によって、投資パフォーマンスが2~3倍以上になるので、資産拡大をスピードアップする効果があるのです。
インフレに強い資産を得られる
出典:JIJI.COM 1月の消費者物価2.0%上昇 伸び率、3カ月連続で鈍化―総務省
不動産投資は長期的な資産形成においても利点があります。具体的には、不動産はインフレに対して強く、物価上昇に応じて物件価格が上昇し、家賃収入も増加する可能性があります。
インフレ局面になると、物価が上昇しそれまで1,000円で買えていたものが、1,200円支払わなければ手に入らなくなるというように、現金の価値が下落します。資産を保有していたとしても、それが銀行預金やタンス預金であれば、毎年価値を毀損させているわけです。
不動産の価格は、インフレ時の物価上昇と連動して上昇します。不動産投資の出口として物件の売却をした際には、キャピタルゲインを得ることが可能です。また、インフレ時には物件価格の上昇にワンテンポ遅れますが、家賃の上昇も生じます。家賃の上昇によって、インカムゲインも上昇していくことが期待できるのです。
長らくデフレに苦しんでいた日本でも、コロナ禍明けに物価上昇が続きインフレの初期段階に入ってきました。東京都心部のマンション価格は10年以上右肩上がりで上昇しており、今後も上昇基調が継続すると見られています。
所得税・住民税の節税になる
不動産投資には、所得税・住民税の節税効果があります。
家賃収入によって得られる所得は不動産所得になるのですが、不動産所得は総合課税のため、給与所得や事業所得などと損益通算ができます。不動産投資には減価償却という会計処理があり、実際には現金が出ていかないのに帳簿上赤字となることが一般的です。これにより、給与所得・事業所得の課税所得が圧縮され、所得税・住民税の節税につながります。
なお、節税効果があるのは、課税所得900万円以上(年収にして1,200万円以上)とされています。
相続税対策になる
不動産投資が相続税対策として利用される理由には、不動産の相続税評価額が低く抑えられる点にあります。現金や預金、金融商品などは相続税評価額が時価となりますが、不動産は独自の評価方法があり、時価の70~80%程度に圧縮することができます。
賃貸不動産の場合は借地権割合・借家権割合があるので、さらに圧縮され時価の50~60%程度になります。そのため、相続税の節税につながり、基礎控除以下まで圧縮されれば相続税を納める必要がなくなります。
また、収益物件購入のための不動産投資ローンの残債が残っていた場合、債務控除として相続財産から差し引けますので、その点もお得です。なお、団体信用生命保険に加入していて、ローン残債が弁済された場合は債務控除とはなりませんので、注意してください。
まとめ
不動産投資には特有のリスクがあります。リスクを放置していると損失やトラブルが発生し、最終的に不動産投資は失敗に終わる可能性が高まります。
ただ、不動産投資にともなうリスクは十分コントロールが可能です。不動産投資家は、基本的な投資・法律・税制などの知識をふまえ、不動産賃貸業の経営者としてリスクコントロールに努めましょう。
専門的な内容については、プロパティマネージャーや管理会社の知見に頼ります。プロの力を借りて経営を行うことが、不動産投資を成功に導く一番の近道です。
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株式会社ウェルス・パートナー
リアルアセットマネージャー
早稲田大学商学部卒業後、大和ハウス工業株式会社へ入社。富裕層・地主に賃貸住宅での土地活用ソリューション提案に従事。東急リバブル株式会社にて投資用不動産の売買仲介を経験後、株式会社ウェルスパートナーに入社。マネー現代などで記事の執筆も行う。