目次
はじめに
毎日忙しい上場企業社長の方々にとって、個人資産の管理はもっとも頭を悩ませる問題ではないでしょうか。上場企業社長は、資産の多くを占める自社株を売却しにくいため、資産配分の最適化を進めにくいからです。
この記事では、資産運用に悩む上場企業社長の方へ、実際の事例を紹介しながら「資産配分最適化の方法」や「最適なポートフォリオ構築方法」を解説します。
富裕層が目指す資産運用の目的とは?
富裕層が目指す資産運用の目的は、資産成長と資産保全(リスク管理)、そして資産承継にあるといってよいでしょう。
富裕層の資産運用でもっとも注意すべきポイントは次の2つです。
・リスク管理と資産成長のバランス
・長期的視点での資産配分の考え方
リスク管理と資産成長のバランス
富裕層の上場企業社長は、ポートフォリオの最適化を通じて、リスク管理と資産成長のバランスを取る必要があります。
ただし、上場企業社長は「資産の大半を日本株(自社株)が占める」「自社株を売却しにくい」という特殊な事情があるため、資産配分の最適化には綿密な計画と一定の時間が必要となります。この点については、後ほど事例を交えて詳しく紹介しましょう。
長期的視点での資産配分の考え方
現役の上場企業社長は、本業で忙しく資産運用に手間をかけられないこと、また将来のリタイヤを視野に入れて、特に長期的視点で資産配分を考えていく必要があります。
また、会社売却を検討している場合は、保有資産を活用し、いかに安定した収入を得ていくかが資産配分の大きなポイントになります。
事例で見る富裕層の資産運用戦略
上場企業社長は、保有資産のほとんどを自社株が占めているといった方が多く、「どうやって運用していくか」「どうやって資産配分を最適かしたらよいか」というご相談を受ける機会が増えています。
ここでは、上場企業社長に提案した資産配分最適化の事例をみていきましょう。
提案を行った上場企業社長の属性などは以下の通りです。
47歳・男性
上場会社創業社長(東証マザーズ)
持株比率 : 40%(時価総額 : 300億円)
【年収】
役員報酬 : 2,500万円
【家族構成】
奥様 : 40歳
長男 : 10歳
【上場企業社長】ご相談時の資産配分
こちらが、ご相談いただいた時点での資産配分です。
上場会社のオーナー社長ということで、日本株(自社株)の割合が非常に高くなっています(①)。
上場企業社長といえば、「キャッシュリッチ」なイメージもあるのですが、資産の大半が自社株のため、現預金は決して多くありません(②)。これは、他の上場企業社長にも多く見られる傾向です。
実物資産は、ご自宅の国内不動産(③)のみです。
全体の比率をみると、レバレッジ比率は総資産合計(④)部分、101.6%とご自宅の住宅ローンで少しレバレッジがかかっていますが、とても低い状態です。
金融資産比率(⑤)は97.6%、実物資産比率(⑥)は2.4%、ということで、ほとんどが金融資産です。
また、外貨比率(⑦)が0%、株式が99.5%で債券が0.1%(⑧)と、かなり偏った資産配分になっています。
【上場企業社長】現状分析
これらの資産配分を分析した結果、次の5つのポイントが問題と考えられました。
・実物資産の保有比率が低い
・外貨の保有比率が低い
・株式の保有比率が高い
・債券の保有比率が低い
まず、レバレッジ比率が101.6%と非常に低く、投資効率が良くありません。
また、日本株の保有割合がとても高いので、実物資産の保有比率が低いです。
そして、外貨保有比率が低い、株式保有比率が高い、債券の保有比率が低い、という点が問題点です。
これをどのように最適化するかというと、資産のほとんどを占める日本株をどう活用していくかが大きなポイントです。考えられる方法は3つあります。
・日本株を担保に証券担保ローンで資金を調達、キャッシュを使って最適化する
・上場企業社長という属性があるので銀行ローンを活用して不動産の資産形成を進める
このお客様の場合、「日本株を担保に証券担保ローンで資金を調達、キャッシュを使って最適化する」という方法をとりました。
【上場企業社長】ご提案内容(再配分)
現状分析をもとにして、どのように資産を再配分するかまとめたのが次の配分シートです。
右下に増加した資産を記載しています。日本株式(自社株)を担保に有価証券担保ローン(⑨)を12億円借りています。
この12億円をキャッシュとして、さまざまな資産に配分します。
今回の場合は、(⑩)の通り配分しました。もともと株の保有比率が高い方なので、外貨投資を考慮しても株式は少なくなっています。
つまり、資産のバランスを考えると債券に投資した方がよいということです。
そして、このように再配分した場合の全体の比率が左下です。
レバレッジ比率(⑪)は、当初101%だったものが、116.4%まで上がっています。
借入が20億円ほどあるので、かなりレバレッジ比率が上がりました。
金融資産と実物資産の比率(⑫)は、当初から改善し、9:1ほどになっています。
そして、外貨比率(⑬)が6.6%、株式と債券の比率(⑭)が95:4程度となっています。
これが再配分した内容なのですが、上場企業の創業社長は、一発で資産配分の最適化ができないという点で他の富裕層の方々と異なります。
これは、自社株を簡単に売却できないからです。
このため、毎年少しずつ持ち分の1%〜3%程度を売却していくことが一般的です。
つまり、時間をかけて最適化していくことになります。
続いて、この方が毎年2%ずつ持ち株を売却し、できたキャッシュ(毎年6億円)を色々な資産に再配分するとどうなるのかを次に紹介します。
【上場企業社長】ご提案内容(10年後)
こちらは、毎年2%ずつ持ち株を売却して、さまざまな資産に投資した場合の10年後の資産配分シートです。
まず、自社株を2%ずつ10年間売却していくので、日本株式は60億円減少します(⑮)。
そして、自社株を売却した資金で増加させるのが(⑯)の資産です。
全体のバランスをみていきましょう。
総資産合計(⑰)は、当初120億円に対して171億円とかなり増加しています。
また、レバレッジ比率(⑱)は再配分で116%でしたが、140%まで高まっています。ここまで高くなると、かなり効率よく運用できているといえるでしょう。
そして、金融資産と実物資産の割合(⑲)ですが、まだ実物資産(株式)が多いのですが、6:4程度まで改善しています。
外貨比率(⑳)は50%程度が理想ですが、外国株式・債券を増やしたことで、40%程度まで高くなっています。
株式と債券の比率(㉑)ですが、およそ2:1まで改善しています。
このように、10年間でかなり資産配分を最適化することができました。
この資産配分最適化事例は、次の動画で詳しく解説しています。ぜひ、併せてご覧下さい。
まとめ:上場企業社長がポートフォリオを最適化するには
事例で紹介した通り、上場企業社長は自社株を簡単に売却できないことから、時間をかけてポートフォリオを最適化していくしか方法はありません。
毎年、持ち株の1%〜3%程度を売却し、そのキャッシュを使ってさまざまな資産に配分していくことが一般的です。
また、今回の事例のように、レバレッジ比率や金融資産と実物資産の比率、外貨比率など、最適なバランスでポートフォリオを構築していく必要があります。
ただし、忙しい企業オーナーの方にとって、自ら資産を売却し、ポートフォリオを最適化していくことは難しいでしょう。
私たちウェルス・パートナーでは、多くの企業オーナーさまへ資産運用アドバイスを行い、実践のお手伝いをさせていただいてきました。
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株式会社ウェルス・パートナー
ポートフォリオマネージャー
早稲田大学商学部卒業後、SMBC日興証券株式会社へ入社。富裕層、会社経営者向け資産運用コンサルティング業務に従事。証券会社では顧客に寄り添った提案ができないと思っていたときに代表の世古口と出会いウェルスパートナーの創業に参画。資産1億円以上の富裕層向けに資産保全・管理、相続・事業承継対策等のアドバイスを行っている。富裕層や資産形成層向けのセミナー講師としても活動中。