目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
本日のテーマは、「ドラマで話題の『プライベートバンカー』が富裕層に秘密にしていること」です。現在、テレビ朝日系で木曜日21時から『プライベートバンカー』という富裕層の方の資産運用をお手伝いする仕事をテーマにしたドラマが、唐沢寿明さん主演で放送されています。前回は「プライベートバンカーが富裕層の方に教えていること」というテーマでお話ししましたが、今回はそのプライベートバンカーが富裕層の方に対して秘密にしていることについてお話しできればと思います。
教えていることがあれば、当然秘密にしていることもあるわけです。私は大手の金融機関で11年間プライベートバンカーをやっていたので、プライベートバンカーに関しては詳しいという自負があります。私の経験の範囲ですが、富裕層に対して秘密にしていることをお話しします。
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プライベートバンカーが秘密にしている5つのこと
早速、プライベートバンカーが富裕層の方に秘密にしていること、主に5つに分類できると思うので、わかりやすく一つずつ説明していきます。
ゴリッゴリの証券マンやサラリーマンが多い
富裕層の方が持っているプライベートバンカーに対するイメージは、「富裕層の資産を自分側に立って、いろいろな危険や資産のリスクから守ってくれる」「資産を防衛してくれる」「富裕層のガーディアンのようなイメージ」ではないでしょうか。しかし、そうではない方もかなりいます。実は、ゴリッゴリの証券マンやサラリーマンがプライベートバンカーをやっていることが結構あります。個人的に、そのようなバンカーの方が多いのではないかと思います。7割~8割がそのような方という印象があります。
プライベートバンカーといっても、上場会社の一社員なので、利益を上げるのが仕事になるわけです。ですから、日系の証券会社のように、仕組債や株の短期売買などで頑張って利益を上げて会社に貢献し、プライベートバンクに居続けるプライベートバンカーはたくさんいます。そのやり方しか知らなくて、ずっとやり続けている方が結構多いのです。
また、プライベートバンカーは、会社が富裕層に対してメリットがないことを提案した場合、「私のお客様なのですから、やめてください」「それなら会社を辞めます」というように、会社と対立してまでもお客様を守るイメージがあるかもしれません。しかし、ただのサラリーマンですから、そのような人はほとんどいないでしょう。ドラマの唐沢寿明さんのような方はいないわけです。9割5分くらいの方がただのサラリーマンなので、会社に恨まれてまで顧客を守る、気骨のあるプライベートバンカーはほとんどいないのではないかと思います。
私が過去にいたプライベートバンクでは、そのようなプライベートバンカーも中にはいましたが、割合としては少なく、1割いるかいないかくらいでした。時代と共に、プライベートバンカーも年齢が若くなり、会社としても組織としてもサラリーマン的になっていたり、大企業になっていたりということがあって、会社よりもお客様を優先する気骨があるプライベートバンカーは、今は少なくなっている傾向にあるのではないかと感じています。
外資系は成果出さないとすぐクビになる
これは、日系のプライベートバンカーや日系の証券会社・銀行のプライベートバンカーには当てはまらない話です。プライベートバンクの本場は外資系なので、本当のプライベートバンカーは、外資系のプライベートバンクのプライベートバンカーだと思います。
私はスイス系の銀行にいたのでよくわかりますが、成果を出さないと本当にすぐにクビになります。プライベートバンカーは、長期的な目線で運用しなければなりません。1年や2年ではなく、5年~10年、何十年先まで見据えて、お客様だけではなくお子様やお孫様まで世代を超えて資産をお手伝いするイメージです。それにもかかわらず、すぐクビにしてしまいます。
私が入ったときに最初に言われたのは、「富裕層の方から毎年50億円の資産を預かって、3年で150億円集めてください」でした。集められなかったり成果が思わしくなかったりした場合は、それまでという感じです。そう言われたわけではありませんが、雰囲気はそのような感じでした。実際に皆クビになってすぐに辞めていき、自ら辞めていく人もいました。50億円の目標に対して年間で10億円しか集められなかったり、成果が出せなかったり、利益を上げられなかったりすると、いなくなってしまうわけです。
私のいたプライベートバンクの場合、タイミングによりますが、毎年2割くらいのプライベートバンカーがクビになり、自分で退職する人もいて、また新しい人が2割入ってくる、そのような新陳代謝を繰り返していた印象があります。ですから、5年くらい経つと、元々いた人が全員辞めて違う人になっているというイメージもありました。
プライベートバンカーは、長期的に富裕層の方の資産を預かってお守りするというイメージがありますが、外資系は目標が厳しいので、成果が出せないとすぐクビになり、富裕層の方は「長期的にお付き合いをしたいのにがっかり」ということもあります。そのようなことはお客様に伝えづらいので、結構秘密にしていることが多いと思います。
不動産の有用性を語らない
富裕層の方の資産の半分くらいは金融資産で、もう半分は実物資産の不動産ということが多いです。プライベートバンカーは、プライベートバンクが取り扱っている金融商品を提案したり販売したりするのが仕事なので、富裕層の方が不動産に投資しても意味がなく、自分の成績にも会社の利益にもなりません。したがって、富裕層の方にとって不動産は必要で投資すべきと思っていたとしても、全体の配分として不動産も持った方がいいとは決して言わないでしょう。
「不動産は必要ない」「流動性が低い」「法律が変わる可能性もあり、相続対策になるかわからない」「全部金融資産で運用しましょう」「金融の時代です」「流動性が一番です」「債券は不動産より利回りがいいです」と提案するバンカーが多く見受けられます。このように、不動産の有用性を秘密にしているプライベートバンカーは比較的多いのではないかと思います。
証券担保ローンのリスクの高さを伝えない
プライベートバンクで購入した株や債券、ファンドを担保にしてお金を借りることができる「証券担保ローン」が、プライベートバンクの一つの特徴です。そして借りたお金をまた投資することをプライベートバンカーは提案することが多いです。しかし、この証券担保ローンは結構リスクが高いことをご存知でしょうか。
株や債券など、担保にしている資産自体に値動きがあるのに、それを担保にしてお金を借りてきて、それをさらに値動きの激しい資産に投資するので、当然借入してレバレッジをかけた分の投資リスクが高まります。また今、日本は金利が上がっているので、借入コストも上がります。
では、なぜ証券担保ローンを勧めるのでしょうか。プライベートバンクにとってはすごく儲かる仕組みになっているからです。例えば、10億円を運用して、さらに10億円借りてきて運用すると、20億円分運用していることになるので、プライベートバンクは当然儲かります。ですから、証券担保ローンをぜひやってほしいというのがプライベートバンカーの願いとなり、高いリスクを富裕層の方に伝えずに提案し、実行してもらっていることが多いのではないかと思います。
万が一のことが起こったとき、証券担保ローンを組んでいると、壊滅的なリスク、ダメージになるケースもあります。ですから、「このようなリスクを取っていいですか?」「過去を見るとここまで下がることもありますよ」とリスクを説明した上で、それでもやりたいという富裕層の方に対しては、提案して実行してもらうことはよいかもしれません。しかし、「富裕層の方は皆やっています」という感じで提案するプライベートバンカーが多いのではないかと思います。しっかりリスクも伝えた上で考えてもらうのが大事です。ここは明確にプライベートバンカーが秘密にしていることだと思っています。
金融商品の内容自体はどこでも大差ない
プライベートバンカーはプライベートバンクの金融商品を扱っていますが、プライベートバンクといっても特別な金融商品は正直ありません。100%ないとは言い切れませんが、それほど特別なものはそもそも世の中にはないと思われます。どこで株や債券を買っても条件は大体一緒です。せいぜい海外のファンドなどで、ヘッジファンドの取扱いがあるといった程度のことかと思います。ですから、どこのプライベートバンクや日系の証券やネット証券で金融資産のポートフォリオを作ったとしても、経済効果はそれほど変わりません。
まとめ
「プライベートバンクには特別なものがある」というイメージを富裕層の方はお持ちなので、「特別な金融商品を富裕層の方のためだけに扱っています」ということを言っておかなくてはいけないわけです。「金融商品はプライベートバンクでもネット証券でも同じです」などということは、地球がひっくり返っても言えないのです。
金融商品はオープンリソースになっているので、どこのプライベートバンクでもネット証券でも諸条件は変わりませんが、プライベートバンクにとっては不都合な事実ですので、金融商品の内容自体はどこも大差がないという真実に関しては、プライベートバンカーの方は富裕層には秘密にしていることではないかと思います。
本日は「ドラマで話題の『プライベートバンカー』が富裕層に秘密にしていること」という内容でお届けさせていただきました。

株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中