はじめに
新年を迎え、今年こそは資産運用を始めようと新たな目標を立てている方も多いことでしょう。NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの投資制度の充実や、証券会社や運用会社における手数料の引き下げや無料化により、個人投資家の投資環境はかなり改善しています。
一方で、依然として投資には興味がなかったり、過度にネガティブな印象を持つ方も多くいます。今回は統計を基に実態を探っていきましょう。
実は貧しくなり続けている?
金融中央広報委員会が昨年11月に発表した「家計の金融行動に関する世論調査 令和元年調査結果」によると、金融資産保有世帯のうち、単身世帯の保有金融資産額は平均値で 1,059万円(前回調査時は1,234万円)、中央値は300万円(前回調査時は350万円)となりました。
また、二人以上世帯でみると、平均値で 1,537万円(前回調査時は1,559万円)、中央値は800万円(前回調査時は800万円)となりました。
下図は過去3年間の推移を示したものですが、単身世帯、二人以上世帯ともに金融資産額が減少し続けていることが分かります。特に単身世帯においては2018年に前年比43.5%も減少し、更に昨年は同16.5%と連続で大きな減少となっています。
単身世帯で金融資産を保有していないと回答した人は全体の5.4%(前回調査時は5.6%)、二人以上世帯だと2.5%(前回調査時は1.6%)となっており、それらを合算した場合の数値が下図となります。
どちらの見方にしても、単身世帯が毎年大きく保有金融資産額を減らしていることが分かります。単身世帯が増加している日本においては、この数字は注目しなくてはいけません。多くの方が他人事ではないからです。
統計のマジックを見破ろう
いま見てきた数字はグラフにしたものも含めて、全て平均値になります。統計データを見るときに気を付けなければいけないのは、平均値だけを見ると実態を見誤るということです。
敢えて極端な例を出しますが、「平均年収が5,000万円の国」と聞いたらどう思いますか?とても裕福な国に感じるかと思います。しかし、たとえばこの国には国民が10人いて、1人の年収が5億円、その他9人の年収が0円だとするとどうでしょうか?非常に格差のある国であって、国民の多くは貧しいですよね。
つまり、平均値というのは上位層が思い切り数字を引き上げる可能性があり、それだけで判断するのは危険なのです。そこで、中央値というものを見ます。
すると、今回の調査結果からは違う観点も出てきます。単身世帯の保有金融資産額は平均値で 1,059万円、中央値は300万円。二人以上世帯は平均値で 1,537万円、中央値は800万円です。
平均値と中央値を見比べてみると、かなり乖離がありますね。つまり、日本でも格差は広がっているということです。
多くの人が準備をしていない
この調査は非常に興味深いデータが多いのですが、保有金融資産の内訳を細かく見ていくと、単身世帯のうち有価証券(株式、債券、投資信託)を保有しているのは34.0%。二人以上世帯では19.6%となっています。
つまり、実際に資産運用をしている世帯というのはまだ半数もいないのです。
冒頭でNISAやiDeCoなど投資に対する制度も整ってきたと書きましたが、保有金融資産のうち、NISAの利用率は単身世帯が10.2%、二人以上世帯では7.2%となっています。せっかくの制度をほとんどの世帯が利用していないのです。
私たちの平均給与の推移を20年前から見てみると、ほとんど上昇していないことが分かります。1998年からリーマンショックがあった2008年まで下がり続け、その後は上昇傾向にありますが、それでも20年前の水準には戻っていません。
昨年10月の消費増税以降、明らかに日本の経済は悪化しており、今後も私たちの給与が増えていくとは考えにくい状況にあります。老後資金が2,000万円不足するという話題が昨年は盛り上がりましたが、私の試算では不足金額が2,000万円どころか、その倍近くが必要になる人もいます。
そのような環境下において、私たちは将来のために資産運用をして備えなければいけませんが、先程見たように、まだ制度を活用して準備をしている人は少数派に過ぎません。
保有する金融資産をみると既に日本でも格差が広がっているといいましたが、準備をどれだけ早くしていたかどうかも、格差を広げる要因になります。
まとめ
実際にデータを見てみて、改めて今年は資産運用してみようと思いましたか?最初の一歩を踏み出すのは恐いと思いますので、自分でネットや書籍で勉強してみるのもいいと思いますし、プロに相談してみてもいいかもしれません。
最近は買い物などで貯まるポイントを使って投資をすることもできますし、ネット証券であれば手数料もほとんどかけずに少額から投資が出来ます。
知識をつけてから始めるのは素晴らしいと思いますが、まずはやってみて、やりながら慣れていくというスタンスで開始してみるのがいいでしょう。