目次
はじめに
2024年、日本経済は新たな局面を迎えています。日経平均株価は、1月に33年ぶりの高値を更新し、かつての平成バブル時代の高値を超えることができるのかに関心が集まっています。
この記事では、2024年に注目されるイベントを中心にマーケットの動向を予測します。未来の投資戦略を考える一助となれば幸いです。
2024年1月の日経平均株価はバブル崩壊後の高値を更新
2024年の日本の株式市場は、2023年の流れを引き継ぎ活況です。東京株式市場における1月15日の日経平均株価は、6日間連続で上昇し、終値が前週末より324円高の3万5,901円となりました。これは、バブル崩壊後約33年11カ月ぶりの高値で、午後には一時的に3万6,000円を超える場面もありました。
この上昇の背景には、米金利の一時的な上昇停止を受けたハイテク株の好調さや、様々なテーマを持った個別銘柄に対する物色が進行していることが挙げられます。また、春闘による賃金の上昇や、インフレ経済への変革を予想しての個人消費関連も注目されました。さらに、東証株価指数(TOPIX)は、2023年12月29日から8日間連続で上昇し、買われる銘柄の幅が広がっています。
マーケットでは、個人投資家の動向も注目されています。東京証券取引所の発表によれば、1月第1週は売り越しだったものの、その後は上昇に乗り遅れないように買い増しを行っているとの観測があります。
新たにスタートした少額投資非課税制度(NISA)により、個人からの資金流入が相場を支えているとの期待が高まっているからです。2024年1月のQUICK株式月次調査によると、「もっとも注目している投資主体」に「個人投資家」と答えた割合が23%となり、前回調査から6ポイント上昇。これは10年ぶりの高水準となりました。
日経平均株価の過去最高値は「平成バブル」のピーク時の1989年12月29日につけた38915.87円で、2024年中にこの水準を超えるかどうかに注目です。
東証(東京証券取引所)の改革はどうなる?
東京証券取引所は、ブランド価値の向上と投資資金の増加に焦点を当てており、その一環として、2014年の伊藤レポートでROE8%を示すなどの動きを見せてきました。これに続き、2015年のコーポレートガバナンスコードの策定や2022年の市場区分の変更、そして2023年の低PBR改善要請といった一連の策が進められています。
最近では、親子上場の必要性について問う動きも活発になってきました。この傾向は、2024年にさらに加速すると予想されます。特に、プライム市場に上場した企業に対しては、一度上場したからといって安心していられない、という厳しい姿勢が見て取れます。東証はプライム市場を世界基準に沿った真の「プライム企業群」に限定したいという考えを持っているからです。
東京証券取引所は、2024年1月15日に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示状況(2023年12月末時点)を発表しました。
出典:東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関する開示状況」
「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について、2023年12月末時点で、プライム市場の49%(815社)、スタンダード市場の19%(300社)が開示しています(検討中を含む)。開示企業数は一定の進捗が見られており、東京証券取引所は引き続き検討・開示を行う企業数の増加に取り組むとしています。
日銀の金融政策の正常化はいつ?
2024年は日銀の金融政策が正常化の方向に進むかどうかが注目されています。多くのエコノミストは日銀がマイナス金利政策を2024年の4月までに解消し、金融政策が正常化されると予測しています。2024年の春闘で「賃金と物価の好循環」が確認できると、正常化への道のりが整うと見込まれているからです。中小企業を含む全ての産業界から積極的な賃上げが期待されています。
日銀の植田和男総裁は昨年12月7日の参院財政金融委員会において、金融政策運営が「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と述べました。これにより、金融政策の正常化が近づいているとの見方が広がり、円ドル相場は一時1ドル=141円台までの円高になりました。
植田総裁は、これまでイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を2回修正しています。大量の国債購入を見直し、市場機能を重視する一方で、日銀が金融政策を正常化し、マイナス金利政策やYCCを解消すれば、過度な円安が是正される可能性が高まるでしょう。
ただ、2024年1月1日午後4時10分ごろに能登半島地震が発生し、日銀の金融政策に影を落としています。被害の全容がつかめず、経済への影響が不透明だからです。昨年末までは日銀が1月の会合でマイナス金利政策の解除に踏み込むとの観測もありましたが、慎重姿勢が増え、外国為替市場では148円台まで円安・ドル高が進んでいます(1月18日時点)。
しかし、2024年前半に政策修正を予測するエコノミストは依然として多く、日銀は国内と海外の情勢をにらみつつ、修正タイミングを探ることになるでしょう。
米大統領選は再びバイデン氏とトランプ氏の争いか
米国でもFOMCの金融政策が注目されますが、2024年にもっとも関心を集めるのは米大統領選でしょう。米大統領への復帰を目指すトランプ氏がアイオワ州の共和党予備選で圧倒し、ふたたび「バイデン氏とトランプ氏の争いか」「トランプ氏が大統領になったらどうなる」という話題が増えてきました。
大統領候補を絞り込む重要イベントは3月5日の「スーパーチューズデー」ですが、民主党はバイデン氏、共和党はトランプ氏がかなり有力視されています。ただ、バイデン氏は81歳、トランプ氏は77歳と高齢なので、健康面のリスクには注意が必要です。
7月半ばに共和党大会、8月半ばに民主党大会があり、正式に候補が決定します。11月5日の米大統領選に向け、政治リスクが高まる点には注意が必要です。

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。