2019
10/11

はじめに

年金2000万円問題が話題になったこともあり、老後の生活資金を確保する手段として、iDeCo(個人型確定拠出年金)への関心が高まっています。

一方で、資産運用ではなく保険を活用する方法として、個人年金保険で老後生活資金を準備する方法があります。これは、iDeCoの制度が生まれる前までは、特に利用している方が多かった金融商品です。

同じ「年金」という言葉がつきますが、その両者の性質はだいぶ異なっています。そこで、今回は、この個人年金保険とiDeCoについて制度を比較してみて、どちらを利用したらよいか検討してみます。

個人年金保険とは

民間の保険会社が販売している金融商品です。契約時に定めた年齢から、決まった年金額を受け取ることのできるタイプである定額型と株式や債券を中心に資産運用して、その運用実績によって年金額が増減する変額型の2種類があります。

年金保険のメリット

途中解約可能(払込金総額を下回る可能性あり)
契約年齢 受取開始年齢を自由に設定可能
掛金の上限なし

年金保険のデメリット

節税メリットが少ない
定額型の場合、急激なインフレに対応できない

iDeCoとは

iDeCoは、毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された定期預金・保険・投資信託といった金融商品で自ら運用し、60歳以降に年金または一時金で受け取ることのできる制度です。

加入者が当初は限定的でしたが、制度が改正され、加入対象者が現在では拡大しています。老後生活資金を自助努力で形成する制度として、国が作った制度であり、各種の非課税制度が利用可能です。

iDeCoのメリット

節税メリットが大きい(現役時代からメリット享受可能)

iDeCoのデメリット

60歳まで原則として途中解約できない
契約年齢が決まっている20~60歳まで
掛金に上限がある

個人年金保険とiDeCoとの比較

おおまかにまとめれば、個人年金保険は、利用する上での自由度が高いところがメリットであり、iDeCoは節税メリットが大きいところがメリットです。

節税メリットを最大限活用するのであれば、iDeCoを活用する方がおすすめです。ただ、利用する自由度が個人年金保険ほどではないので、一概に、iDeCoがよいとも言い切れません。両方の折衷策として、両者を併用する方法もありでしょう。

iDeCoは、自営業の方で最大毎月68,000円まで掛金を拠出可能で、他の加入資格のある方だともっと金額は少なくなります。ですので、掛金の上限額よりも大きな金額で毎月、掛金を拠出していきたいという方であれば、個人年金保険を併用することも一考だと思います。

iDeCoの節税メリット

iDeCoと個人年金保険との大きな違いのある節税メリットについて、さらに詳しく書いていきます。

iDeCoは、掛金、運用益、年金、それぞれに非課税制度があります。一方で、変額年金保険は、運用益に対してしか非課税制度がありません。そして、非課税制度が双方にある掛金についてみてみても、節税効果に大きな違いがあります。

iDeCoでは、掛金全額が所得控除の対象になります。一方で個人年金保険では、掛金の所得控除額は、所得税で最大4万円、住民税で最大2万8千円です。

具体例として、課税所得が500万円の方が、毎月2万円(年間で24万円)をiDeCoへの掛け金としたケースについて検証してみます。

この場合、所得税は20%、住民税は一律10%ですので、7.2万円(24万円×0.2+24万円×0.1)が、確定申告することで還付金として返還されます。

一方で、個人年金保険は所得税で最大4万円(年間保険料80,000円超の場合)、住民税で最大2.8万円(「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の所得控除限度額それぞれ2.8万円で合計した場合は7万円が限度額である点注意)です。

具体例として、課税所得が500万円の方が、毎月2万円(年間で24万円)を個人年金保険料の支払いをしたケースについても検証してみます。

この場合も、所得税は20%、住民税は一律10%ですので、6,800円(4万円×20%+2.8万円×10%)が確定申告することで還付金として返還されます。

iDeCoと個人年金保険の所得控除の節税効果を比較すれば、iDeCoの方が断然、効果が大きく効率的な資産運用が可能であることがわかります。

このように、掛金、運用益、年金それぞれに非課税制度があるため、年金資金を形成しているときから受け取るまでの長期間、節税のメリットを享受することが可能な点が、個人年金保険にはなくiDeCoにあるメリットです。

まとめ

iDeCoは節税メリットが大きいので、まとまった大きな金額を運用するのであれば、特にそのメリットは大きいでしょう。

一方で、掛金の上限が決まっており、中途解約が原則としてできないなど、制度の柔軟性に欠ける側面もあるため、生活を切り詰めて金額を拠出しないように気をつける必要があります。

また、個人年金保険は、iDeCoほどの節税メリットはないですが、掛金は自由に決められ、中途解約も可能です。iDeCoよりも自由度が高い運用が可能ですので、iDeCoがある今でも利用を検討する余地のある金融商品です。

これらのうち、どちらで、もしくはどのように併用して、老後生活資金を貯めていくかは、様々な要因を考える必要があります。

節税効果などの具体的なシミュレーションも考えてみる必要がありますので、専門家のアドバイスを受ける方法も一考だと思います。まずは、iDeCoと個人年金保険の特徴とその違いについて整理して、ご自身で考えてみて下さいね。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者3万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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