はじめに
日本では、20代~60代の生命保険加入率は8割に上っており、今や日本人にはかなり身近な保険となっています。
そんな生命保険ですが、子どもにかける必要はあるのでしょうか。
ほとんどの人は、教育費等を積み立てるために、なんとなく子どもに積立型の生命保険をかけた方が良いような気がしているのではないでしょうか。
しかし、実は、子どもに生命保険をかける必要性はそこまで高いとはいえません。
今回は、子どもに生命保険をかける必要性が乏しい理由について解説します。
1.検討の余地があるのは貯蓄目的での加入
そもそも子どもに生命保険をかける必要はあるのでしょうか。
生命保険には、主に2つの目的があります。
(1)死亡保障や医療保障のため
(2)将来への貯蓄のため
このうち、死亡保障についてはそもそも、遺された家族の生活を支えるためのものなので、子どもに死亡保険をかける意味はありません。
また、貯蓄目的で生命保険を使う場合でも、子どもにかけるというのは有効であるとはいえません。
貯蓄するために活用できる生命保険には以下のようなもの考えられます。
(1)養老保険
(2)学資保険
(3)終身保険
この中で、総合的に考えると終身保険が最も有用といえます。しかし、終身保険は子どもよりも親を被保険者にする方が、あらゆる面で有利です。
以下、詳しく見ていきましょう。
(1)養老保険
養老保険は、保険期間中に死亡すると遺族に死亡保険金が支払われ、何事もなく満期を迎えると満期保険金を受け取れる保険です。
昔は利率が高く、貯蓄ができる有用な保険でした。しかし、現在では利率がほとんどなく、払込保険料の総額が、満期保険金を下回るものがほとんどです。
最悪の場合、元本割れを起こしてしまうので、貯蓄目的で加入するのであれば、全くおすすめできません。
(2)学資保険
学資保険とは、子どもの将来の学費のため積み立てができる保険のことです。
加入し続けると、進学時など、一定のタイミングで進学資金・満期額資金などの名目で給付金を受け取ることができます。
昔は無難でしっかり増える保険として、養育費の貯蓄に活用されることが多かったのですが、養老保険と同じく、マイナス金利になってからは利率がきわめて低くなっており、元本割れするものが大半になってしまっています。
また、死亡保障は、せいぜい、それまでに払い込んだ額が戻ってくるだけで、大きなメリットにはなりえません。
現時点では、以下の終身保険の方がおすすめです。
(3)終身保険
最後に終身保険です。
代表的なものとしては、今なお根強い人気がある低解約返戻金型終身保険(円建て)の他、利率の高い米ドルで運用する米ドル建て終身保険、投資信託や債券等で運用する変額終身保険が挙げられます。
貯蓄目的で使用する場合、必要なタイミングで保険を解約し、解約返戻金を受け取ることで、まとまったお金を手に入れることができます。
共通していることは、解約しなければ死亡保障が一生涯続くことと、保険料払込期間満了まで解約しなければ、ある程度の利率による増額が望めるということです。
しかし、この終身保険は親にかけるべきであり、子にかけるメリットは乏しいと言えます。
なぜなら、親にかけておけば、お金が積み立てられる他にも、親に万一があった場合、死亡保険金が支払われるので、子どもの養育費に充てられるという効果があります。
また、子どもと親とでは親の方が死亡のリスクが高いのは明らかです。
したがって、もし、子どもの方が解約返戻金の返戻率が多少高かったとしても、親に万一のことがあった場合のことを考えて、親が加入する選択肢をとるべきです。
以上、貯蓄目的であっても、子どもに生命保険をかける必要性は乏しいと言わざるを得ません。
さいごに
子どもに生命保険をかける必要性についてご説明してきました。
生命保険の目的には、「保障」と「貯蓄」の2種類があります。
まず「保障」については、生命保険は遺族の生活を守るためのものなので、必要性は低いといえます。
次に、養育費等の「貯蓄」目的では、数ある商品のなかでも終身保険がおすすめですが、これも子どもにかける価値は乏しいと言えます。
なぜなら、親に万一があった場合の子どもの教育費を用意するには親に保険をかけた方が良いですし、親の方が死亡のリスクが高いからです。