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はじめに
近年会社に所属せず、個人事業主として働く方が増えています。
時間を自由に使い、自分の力を活かした仕事ができる点は個人事業主のメリットですが、万が一のことがあった場合の社会保障が充実しておらず、不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
本稿では、個人事業主の方にどんな経済的リスクが存在するのか、どんな保険がおすすめかをご説明していきたいと思います。
1.個人事業主が認識すべきお金に関する3つのリスク
会社員であればさまざまな社会保障が充実していますが、会社員と比べると個人事業主は適用できる社会保障の内容が少ないのが現実です。
このことから、個人事業主の方は、主に以下3つのお金のリスクを認識しておく必要があります。
(1)自分が死亡した場合の、遺された家族の生活費や教育費のリスク
(2)就業不能になってしまった場合の生活費のリスク
(3)重篤な病気にかかってしまった場合の治療費に関するリスク
以下、それぞれのリスクの具体的な内容と、そのリスクに備えるために役立つ保険の種類を解説していきたいと思います。
(1)遺された家族の生活費・教育費のリスクに備える保険
仮に自分が亡くなった場合、遺されたか家族は重い経済的負担を背負わなくてはならなくなります。
会社員であれば自身が亡くなった場合に、国からは遺族基礎年金と遺族厚生年金が毎月支給されます。
また死亡時に会社から受け取れる死亡退職金も、大きな助けになることでしょう。
一方個人事業主は退職金がないのはもちろんのこと、国からの保障についても遺族基礎年金のみとなります。
それに備えるためには、民間の生命保険が有効です。主な生命保険の種類として、以下3つがあげられます。
①定期保険
②収入保障保険
③終身保険
以下、それぞれの保険の特徴を簡単に解説します。
①安価な保険料で備えられる「定期保険」
名前の通り、保障期間が定められている(定期である)保険です。
「60歳まで」など決められた期間内のみとなります。
保険料は掛け捨てで戻ってくることはありませんが、解約時に返戻金がもらえる終身保険と異なり、安い保険料で高額の死亡保険金が受け取れるのが魅力です。
高額な死亡保障を安価な保険料で用意したいのであれば、定期保険が適切です。
②保険金を毎月給料のように受け取れる「収入保障保険」
収入保障保険とは定期保険と同様に保障期間が区切られた生命保険です。
保障期間中に被保険者が亡くなった場合、遺された家族は毎月10万円など決まった額を保険金として受け取ることができます。
一括の受取りでないこと、毎月の保障なので結果的に保障期間が短くなるにつれ受け取れる保険金額が少なくなることから、保険料は定期保険よりさらに安くなります。
③貯蓄にもなる「終身保険」
終身保険は、死亡保障より貯蓄性を重視した保険です。
死亡保険金の額を重視するのであれば、(1)の定期保険や(2)の収入保障保険の方が適しています。それに対して終身保険は、貯蓄性を求める方の保険です。
2.就業不能の状態になったときの生活費のリスクに備える保険
個人事業主であれば、自分が働けなくなったときの家族の経済的な負担についても考えておきたいところです。
仮に一家の大黒柱が働けなくなった場合、障害年金を受け取ることができます。
個人事業主であれば、年間78~140万円程度(会社員は58~300万円)の障害年金を受け取ることができます。
ただし個人事業主が受け取れる額は会社員より低くなる可能性が高い上に、受け取れるのは働けなくなってから1年半ほどたった後からです。
会社員の場合、障害年金が受け取れるまで傷病手当金として給与の約2/3を受け取れますが、個人事業主には残念ながらそのような社会保障もありません。
これらを補うために、個人事業主が検討したい保険の種類は以下の2つです。
(1)所得保障保険
(2)就業不能保険
この2つは似ていますが、以下の通りそれぞれ性格が異なります。
(1)働けなくなったとき、比較的すぐお金が受け取れる「所得保障保険」
所得保障保険は、毎月いくらかの決まった額を受け取れる保証期間が短期(最長でも2年程度)の保険です。
支払い対象期間が設けられていますが、医師のドクターストップがあれば、診断後7日程度で受け取ることができます。
傷病手当金がない個人事業主からすると、大変助かる保険といえるでしょう。
なお所得保障保険には長期型もありますが、免責期間が長くなってしまい短期型のようなメリットはありません。
個人事業主の方であれば、短期型の所得保障保険を傷病手当金かわりに活用するのがおすすめです。
(2)長期的に保険金を受け取れる「就業不能保険」
就業不能保険もまた、毎月10万円など毎月決まった額を受け取れる保険です。
契約期間は60歳までなど決まった期間まで長期的な保障を用意することができます。
仕事ができなくなったときには、その状態が続く限り所定の年齢まで、長期で保障が行われます。
ただし脳梗塞や心臓病等、重篤な病気の副作用として動けなくなるなど、仕事復帰が極めて困難な状況でないと保障が行われない点は注意が必要です。
また就業不能保険には60日間の免責期間があり、この期間は保険金を受け取ることができません。
この期間は、被保険者が就業不能状態であるか判断するために設けられています。