はじめに
ヘッジファンドは、市場の変動に関わらず利益を追求するファンドです。一般的な投資信託に比べて自由な運用が可能で、マーケットの上げ下げに関わらず利益を追求する積極的な運用を基本としています。
この記事では、ヘッジファンドと投資信託の違いやヘッジファンドの仕組みや税金、そして富裕層がヘッジファンドを利用する理由などについて詳しく解説します。
ヘッジファンドとは?
ヘッジファンドは、市場が上がっても下がっても利益を追求することを目的としたファンドであり、「避ける(hedge)」という意味のヘッジを活用しています。
普通の投資信託は運用方法に制限がありますが、ヘッジファンドは自由な運用が可能で、先物取引や信用取引などを積極的に活用することで、相場の上げ下げに関係なく利益を追求します。リスクヘッジをしながらも積極的な運用を基本としているのです。
金融庁「ヘッジファンドに関する調査」
ヘッジファンドと投資信託の違い
ヘッジファンドは運用会社が私募形式で大口投資家を募り、厳しい規制を受けにくく自由な運用戦略を設定できます。
また、ヘッジファンドは絶対収益を求めるため、株価が下がったときでもプラスになることを追求する点が、投資信託と大きく異なります。
また、投資信託は広く公募され、目論見書や有価証券報告書を発行する義務がありますが、ヘッジファンドは私募形式で富裕層や機関投資家などの大口投資家を対象にしており、最低購入金額も一般人にはだせないような高額に設定されています。
そのため、ヘッジファンドは厳しい規制を受けにくく、自由な運用戦略を設定できるのです。また、ヘッジファンドは絶対収益を追求するため、株価が下がったときでもプラスになることを目指す点が、投資信託と大きく異なります。
ヘッジファンドと投資信託の主な違いは、以下の通りです。
ヘッジファンドの現状
2022年の波乱相場を上手く乗り切り、ヘッジファンドは堅調な運用成績を残しました。そして、ヘッジファンドの平均的な運用成績は、14年ぶりに米株式指数を上回りました。
2022年は、米連邦準備理事会(FRB)をはじめとした各国の中央銀行の金融引き締めによって、株式や債券相場が両方とも下落しました。ただ、相場の大転換にうまく反応して戦略を切り替えたヘッジファンドたちが、好成績をけん引したのです。
2008年の金融危機以降、低金利環境が続く中で米株式市場は長期的な強気相場が続いており、ヘッジファンドの収益は相対的に見劣りする状況が続いていました。
しかし、2022年にFRBが歴史的なインフレの抑制に向けて急ピッチで利上げに動いた影響で、状況が一変。市場が混乱しても、大幅な下げ局面でも空売りなどを通じて積極的に収益機会を狙うヘッジファンドにとっては好機となったのです。
ヘッジファンドと税金
ヘッジファンドは富裕層や機関投資家からのマネーを受け入れますが、より有利な税制(税金)・法律を持つ「オフショア金融センター」で設立されることがほとんどです。
オフショアとは「沖合い」という意味で、アメリカから見たカリブ海を指して使われるようになりました。「タックスヘイブン(税制上のメリットを享受するために、法人登記や資産管理などを行う国や地域)」として知られるオフショアは、カリブ海、欧州、南太平洋沖に点在しており、ケイマン、英領ヴァージン諸島(BVI)、ルクセンブルク、英領マン島、パナマなどが有名です。
ヘッジファンドはオフショア市場に設立されたファンドが大部分を占め、税金の優遇を受けているのです。
金融庁「ヘッジファンド調査(2006)の結果」
富裕層だけが使えるヘッジファンド
かつては、ヘッジファンドは富裕層や機関投資家のためのものとみなされており、一般の人々には馴染みがありませんでした。ただ、ヘッジファンドを購入するには、主要なヘッジファンドに直接連絡を取ったり、海外の証券会社や銀行を通じて申し込んだりする方法がいくつかあります。
しかし、有名なヘッジファンドであれば、1口が1億円を超えることもあります。また、日本のヘッジファンドでも基本的には1口1,000万円以上が必要となります。
これは、お金を持っていない人々を拒絶しているわけではありません。ヘッジファンドは私募の形態であり、規制が比較的弱いため、顧客数には限りがあります。さらに、顧客には運用成績やファンドの組成について説明するためのサポートが必要であり、サポート体制も限界があるため、顧客数に制限があるのです。
まとめ
ヘッジファンドは、市場の変動に影響されず利益を追求するファンドで、自由な運用が可能です。そして、オフショア市場で設立されることが多く、税金の優遇を受けることができます。高いリターンを期待できるヘッジファンドですが、通常はまとまった資金が必要なので、富裕層や機関投資家が主な顧客になる点には注意が必要でしょう。
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。