ヘッジファンド投資は危険?リスクとリターンを徹底分析

はじめに

アメリカの政策変更などにより経済状況が不透明な中、株式や債券といった伝統的な資産だけでなくヘッジファンドへの投資が注目を集めています。

「ヘッジファンド投資は危険なのか?」「リスクとリターンは?」など、ヘッジファンドに疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?

この記事では、ヘッジファンド投資における具体的なリスク要因とリターンについて紹介するとともに、実際の運用パフォーマンス例について詳しく解説します。この記事を最後まで読めば、ヘッジファンド投資のメリットとデメリットをしっかりと理解し、より適切な投資判断ができるようになるでしょう。

ヘッジファンド投資とは?投資信託との違いを比較

ヘッジファンドとは、さまざまな投資戦略を用いてリスクを管理しつつリターンを追求する投資ファンドの一種です。ヘッジファンド投資の目的は、マーケットの動向に左右されずに収益を上げることにあります。

ヘッジファンドは、投資家から集めた資金を運用会社がマーケットを通じて運用する「ファンド」の一種です。

ここでは、投資信託のインデックスファンド・アクティブファンドとヘッジファンドを比較して表にまとめてみました。

続いて、これら3つのファンドについて詳しく解説します。

インデックスファンド

インデックスファンドは、文字通りインデックス(指数)へ連動することを目的とした投資信託です。

例えば日経平均、S&P500やNASDAQなど、主要な指数へ連動した運用を目指すのが特徴です。

つまり、インデックスファンドへ投資すれば、その指数と同等のパフォーマンスを得られると考えてよいでしょう。

【メリット】

インデックスファンド投資のメリットは、まず運用状況を簡単に把握できる点が挙げられます。対象指数の動きをみていれば、保有ファンドの値動きを確認しなくても、おおよそのパフォーマンスを予測できるためです。また、運用コストが低い点もメリットです。運用がシンプルなので、高額な報酬のファンドマネージャーが不要になるためです。

【デメリット】

インデックスファンド投資は、特定の指数に連動する運用成果を追求するため、それ以上のパフォーマンスを期待できない点がデメリットです。

アクティブファンド

アクティブファンドとは、指数を上回るリターンを目指して運用される投資信託です。ファンドマネージャーが個別の銘柄を選定し、運用方針に基づいて積極的に売買を行うのが特徴です。

例えば、TOPIXをベンチマークにするファンドの場合、TOPIXのリターンが3%であれば、それを上回る4%、5%の運用成果を目指すのがアクティブファンドです。

【メリット】

ファンドマネージャーの実力次第で、指数を大きく上回る運用成果が期待できます。

【デメリット】

優秀なファンドマネージャーを探すのが難しく、インデックスファンドに勝てないアクティブファンドも多くあります。また、運用コストが高い点もデメリットです。ファンドマネージャーへの報酬や運用にかかる費用が高いため、全体的に運用コストがかかり、パフォーマンスに悪影響を与える場合も少なくありません。

ヘッジファンド

ヘッジファンドとは、さまざまな運用手法を利用して、マーケット環境によらず高いリターンを目指す私募形式のファンドです。

通常の公募型投資信託とは異なり、機関投資家や富裕層など、限られた投資家のみ参加できるのが一般的です。

また、すべてのヘッジファンドが当てはまるわけではありませんが、絶対収益主義を掲げ、毎年安定的にプラスのリターンを目指した運用がヘッジファンドの大きな特徴と言えます。

【メリット】

ヘッジファンド投資の大きなメリットは、値動きが安定しており、ボラティリティが低い点です。このため、大きなマイナスに直面するリスクが低く、精神的な負担も軽減されます。また、株式や債券など伝統的資産に連動しない運用を行うため、ポートフォリオに組み込むことでリスク分散効果が得られる点もメリットです。

 【デメリット】

ヘッジファンドは流動性の低さがデメリットの一つです。インデックスファンドやアクティブファンドなど投資信託は一週間程度で換金できますが、ヘッジファンドは換金まで1か月から3か月程度かかる場合がほとんどです。また、ヘッジファンドはコストが高く、成功報酬として運用益の20%程度がかかる場合もあります。加えて、国内では富裕層が投資できるヘッジファンドが限られており、投資ルートや情報が限られている点もデメリットです。

ヘッジファンド投資を考える際は、これら3つのファンドの内容やメリット・デメリットを考慮することが重要です。

ヘッジファンドの運用手法

ヘッジファンドは、さまざまな運用手法を組み合わせて高い収益を目指す投資手法です。

ここでは、ヘッジファンドのおもな運用手法とその特徴について解説します。

ロング・ショート戦略

株式のロング(買い)とショート(売り)を組み合わせて、株価上昇時だけでなく下落時にも収益を獲得する戦略です。

割安と判断した銘柄をロング(買い)、割高と判断した銘柄をショート(売り)するのが一般的で、市場全体の動きに左右されず利益を得られます。

昨今のヘッジファンド運用では、最も重要な戦略とされています。

グローバル・マクロ戦略

世界中の経済やマーケット、政治情勢などをマクロ(大局的)の視点から分析し、各国や地域のさまざまな資産に投資する手法です。大きな経済のトレンドや流れに乗った戦略といえます。

例えば、政策金利引き下げが予想される場合、債券価格上昇を狙って債券に投資するといった具合です。

イベント・ドリブン戦略

企業のM&A(買収・合併)、破産、経営再建など、株価に大きな影響を与えるイベントを利用して利益を狙う手法です。

例えば、A社がB社の買収を計画している場合、値上がりが見込まれるB社の株式に投資するといった具合です。

ヘッジファンドのリスク

ヘッジファンドは、マーケット環境にかかわらず安定した利益を追求できる点が特徴ですが、次の通りリスクも存在します。

市場リスク

株価や為替、金利などマーケット環境の変動によってファンドの資産価値が減少するリスクのことです。

ヘッジファンドは マーケット環境によらず利益を狙える点が特徴ですが、予測が外れると大きな損失を被ることがあります。

流動性リスク

先述のとおり、ヘッジファンドは現金化するまでに時間がかかるため、流動性リスクがあります。

市場が急変した際に、資産をすぐに換金できず損失が拡大するリスクには注意が必要です。

また、ヘッジファンドの中には四半期に一度しか解約できないなどの条件が付されている場合もあるので、投資前に解約の条件を確認することが重要です。

運用者リスク

ヘッジファンドは、ファンドマネージャーの能力や判断に大きく依存するため、運用者のミスや不正行為がリスクとなります。

このため、運用の失敗や不正行為(詐欺)によって、投資家が損失を被るリスクがある点に注意が必要です。

また、ヘッジファンドは情報開示が限定的で、運用内容が不透明な場合もあります。他にも、ヘッジファンド自体が破綻するリスクもあるため注意が必要です。

ヘッジファンド投資のリターン例

それでは実際に、ヘッジファンド投資はどれくらいのリターンが期待できるのでしょうか?

ここでは、年間リターンや変動率といった実績ベースの数値を参考にしながら、以下の3つのファンドのリターン例を解説します。

ファンドV

ファンドVは「アービトラージ」という投資戦略を利用したヘッジファンドです。

アービトラージ戦略とは「鞘取り戦略」とも呼ばれ、2つの資産(資産Aと資産B)が連動して動く場合、価格に乖離が生じたときに活用する戦略です。

例えば資産Aが上昇し、資産Bが下落して価格差が拡大した場合、価格が上昇した資産Aを空売りし、下落した資産Bを購入します。その後、価格差が縮小した時点で、AとBの差額を利益として確保します。

アービトラージ戦略は、価格が乖離している2つの資産をみつけ、両者の価格が収斂することで得られる利益を狙います。このため、リターンは1桁台程度に留まりますが、変動率が低く安定した運用が可能という特徴があります。

実際に、上記ファンドVでも年間リターンは6.7%と決して大きくありませんが、変動率が2.5%と非常に安定した運用実績を得られています。

ファンドW

ファンドWは「ロングショート」という投資戦略を利用したヘッジファンドです。

ロングショート戦略とは、買い(ロング)と売り(ショート)を組み合わせることでリターンを狙う戦略で、おもに株式による運用で用いられます。

この戦略の特徴は、マーケットの環境やトレンドに左右されにくい点が挙げられます。

通常、株式運用では、上昇局面のみロングポジションで利益を生み出しますが、ロングショート戦略では下落側面でもショートポジションで利益を出せるため、マーケット環境によらず安定した収益が期待できます。

実際にファンドWの実績を見ると、年間リターン+14.7%と、世界株式の過去10〜20年の平均リターン(7〜8%程度)を大きく上回っており、とても優秀なパフォーマンスといえるでしょう。変動率は15.9%とやや高いですが、それを大きく上回るリターンが得られています。

このようなリターンと変動率は、インデックスファンドやアクティブファンドでは実現が難しいため、まさにヘッジファンドならではの運用成果といえるでしょう。

ファンドA

ファンドAは「マルチ戦略」として、文字通り複数の戦略を組み合わせて運用しているヘッジファンドです。

具体的には、さまざまなヘッジファンドに投資する「ファンド・オブ・ファンズ」という手法をとっています。投資先は、アメリカでも上位に入る規模のヘッジファンドなど、有名で実績のあるファンドばかりです。

投資先のヘッジファンドもそれぞれ異なる戦略を採用しているため、分散によってリスクヘッジを図りながら安定した運用を可能としています。

実績をみても、年間リターンは9.3%、変動率は3.2%と非常に優れており、ファンドVと同様に低い変動率ながら、高いパフォーマンスが得られています。

ファンドAは「安定と運用と高いリターンを求める方」「株式や債券と相関しない資産を持ちたい方」に向いたヘッジファンドといえるでしょう。

なお、最新のヘッジファンド投資戦略については次の動画で解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

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0:00 オープニング
0:30 はじめに
2:26 ファンド3種の特徴
11:55 実績ある海外ヘッジファンドの一例
20:59 株式・債券との比較
22:57 資産配分(当初)
25:02 資産配分(再配分後)
27:16 まとめ
31:12 エンディング

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▼プロフィール
世古口俊介(せこぐちしゅんすけ)
株式会社ウェルス・パートナー代表取締役
資産数億円以上の富裕層を対象に資産運用コンサルティングを行う。株式や債券、不動産などすべての資産クラスを扱い資産全体を最適化。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者2万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」を通して日本の富裕層に資産運用の情報を発信。

▼経歴
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱東京UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレー証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベート・バンキング本部の立ち上げに参画し同社の成長に貢献、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。

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まとめ

ヘッジファンド投資は、マーケット環境によらず高いパフォーマンスが期待できるほか、株式や債券などと分散効果が期待できるメリットの大きな投資手法です。

ただし、ヘッジファンドは過去のパフォーマンスのほか、ファンドの破綻リスクや流動性リスクなどを十分に理解したうえで投資を検討する必要があります。

はじめてヘッジファンドへ投資する方であれば、IFA(資産運用アドバイザー)などプロのアドバイスを受けるのもよいのではないでしょうか。

私たちウェルス・パートナーは、これまで多くの富裕層の方々からヘッジファンド投資のご相談をいただき、運用アドバイスを行ってまいりました。

ヘッジファンド投資に興味をお持ちの方は、ぜひウェルス・パートナーの無料相談をご利用ください。

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