はじめに
6月9日、福岡で開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議が閉幕しました。今回の会議であげられた注目すべき議題について
簡単にご紹介したいと思います。
AI
今年の会議では、G20史上初でAIに関する原則を盛り込みました。
「信頼性のある自由なデータ流通(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)」や、人間中心のAIを実現する環境づくりを日本が提唱しました。
自由なデータ流通
「信頼性のある自由なデータ流通」というのは安倍首相が去年の1月に行われた「世界経済フォーラム年次総会」で提案された概念です。人や企業間の信頼に基づく自由なデータ流通を促して世界経済の成長につなげる理念として、「データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト」の頭文字を取ってDFFTと呼ばれます。
プライバシー保護
会議では、AIの運用に関するプライバシー保護が強調されました。AIの運営者は、システムのリスク管理をAIシステムライフサイクルの各段階に適用し、プライバシーやデジタルセキュリティなどAIシステムの基礎をきちんと整備する必要があるとあげました。
そのほか、国家間の協力の重要性も提示されました。
デジタル課税
もう一つの課題は、「GAFA」と呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのような巨大IT企業への課税の適正です。
事務総長のアンハル・グーリア氏は、今回の解決案に二本の柱があると説明しました。
多国籍企業の税逃げに対して
一つ目は事実上の企業総部に基づいて税金を徴収することであります。
これまでの多国籍大手IT企業は、その国にいる顧客の数にかかわらず、税金が低い国で名義上の総部を設置し、納税申告を行っていました。これにより税金を減らす一方、多くの人がこのようなやり方は公平の原則に反すると思い、税逃れだと批判しています。
そのため今回は企業が選定した国で精算させるのではなく、実際に企業活動が最も行われる国で精算させる方針が提案されました。
国際最低税率
二つ目の方針は国際最低税率を設定することです。税率の下限の設置により、国家間の「税率競争」を回避することが期待されます。企業がどこに移しても税逃げをできないように、包囲網構築を図っています。
大手IT会社にとって、この法規が導入されたら間違いなく税金の負担が重くなります。また、アイルランドなど企業税が相対的に低い国にとっては、企業を誘致することが難しくなる悪影響も予想されます。
これに対し、イギリスとフランスなどの多国籍企業課税の見直しを強く提唱してきた国が支持を示している中、反対にアイルランドや大手IT企業を多く抱えているアメリカは異議を唱えています。
最後に
グロバール経済
今回の主催者として日本は現在国際摩擦の背景でもある世界的な「経常収支の不均衡」の解決に向け、各国の経済活動に着目した独自の解決策を示しました。
貿易摩擦に関しては、米国は貿易収支の赤字を是正することを目指しています。
しかし、日本の見方として、貿易の不均衡は各国の消費や貯蓄など非貿易要因にも大きく左右されます。米国が中国や他の経常収支黒字国に対して引き起こした貿易戦争に日本は反対の立場を見せました。