目次
はじめに
ESG(環境・社会・企業統治)投資への関心が高まり、個人投資家にもESGファンドの人気が高まっています。この記事では、ESGファンドとはどのような運用をしているのか、そして人気が高まっている背景について解説します。
ESG投資への関心の高まり
ESG投資への関心が、機関投資家だけでなく個人投資家にも広がってきており、ESGファンドの人気が高まっています。2020年10月26日に菅首相が所信表明演説で、「カーボンニュートラル宣言」をしたことによって、あらためてESG投資への注目が集まっているのです。
カーボンニュートラル宣言とは、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにし、脱炭素社会の実現を目指すということです。
2018年の世界のESG投資額は、30.7兆ドル(約3300兆円)に拡大しています。日本では GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2017年に投資原則を改め、株式だけでなく債券などすべてのアセットクラスで、ESGを考慮した投資を進めています。
ESG投資とは
ESG投資は、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)に配慮している企業を重視して選別を行う投資手法です。環境では、「環境汚染をしていないか」「二酸化炭素の排出量が多くないか」「再生可能エネルギーを使っているか」などをチェックします。
社会では、「労働環境の改善が行われているか」「女性活躍の推進を行っているか」「地域活動への貢献をしているか」などを確認します。そして企業統治では、「収益を上げながらも不祥事を防ぐ経営をしているか」などをチェック するのです。
米国最大の公的年金基金であるカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)は、2012年にすべての投資判断に「ESG」を組み込む投資原則を採用しています。そして世界最大の年金基金である GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、2017年に1兆円規模のESG投資を開始。今後は3兆円までESG投資を増やす予定です。
GPIFが採用した日本株のESG指数
GPIFが選定している、主な日本株のESG指数について解説します。
FTSE Blossom Japan Index
FTSE Blossom Japan Indexは、「FTSE All Cap Japan Index」をユニバースとし、潜在的ESGリスクの管理と対応具合によって銘柄が選定されています。この指数はETF(上場投資信託)を利用して直接取引することも可能です。
たとえば、「ダイワ上場投信ーFTSE Blossom Japan Index」の5月31日時点の組入銘柄上位は、以下の通りです。
1.トヨタ自動車 6.1%
2.ソニーグループ 3.6%
3.ファーストリテイリング 2.7%
4.三菱UFJフィナンシャル・グループ 2.5%
5.信越化学工業 2.4%
そして、5月末時点の騰落率は次のようになっています。
1カ月 2.6%
3カ月 5.4%
6カ月 14.4%
1年 29.9%
MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数
MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数は、ESG評価の高い企業群のパフォーマンスを示す指数です。MSCIジャパンIMIトップ700指数の中から、業種の偏りがでないように企業を選定します。
この指数にも、投資信託を通じて投資できます。たとえば、「eMAXIS ジャパンESGセレクト・リーダーズ」は、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数に連動する投資成果を目指すインデックスファンドです。
2021年5月末時点の組入銘柄上位は、以下の通りです。
1.トヨタ自動車 6.9%
2.ソニーグループ 4.8%
3.キーエンス 4.0%
4.東京エレクトロン 2.8%
5.任天堂 2.8%
そして、騰落率は次のようになっています。
1カ月 1.9%
3カ月 3.5%
6カ月 10.0%
1年 24.1%
「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」が1兆円ファンドに
ESG投資への関心が高まりつつある中、企業もESGへの対応を充実させる動きが加速しています。そして、投資対象になる企業が広がったことで、個人投資家向けの投資信託の数も増えているのです。
QUICK資産研究所の調べによると、国内でESGをテーマにした投資信託は、2020年末時点で152本と、2019年末から38本増えました。2020年に入っても、6月の時点ですでに40本が設定され、昨年の設定本数を超えています。
ESGファンドの代表が、アセットマネジメントOneの「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」です。個人投資家のESG投資への関心の高まりから、2020年の当初募集期間に、国内投資信託歴代2位の3,830億円を集めて話題になりました。
その後も順調に純資産総額を増やし、6月25日時点では約1兆1,298億円となっています。「ESG投資は一時的なブームに過ぎない」との見方もありますが、グリーンボンド(環境債)によって有利な条件で資金調達する企業が増えてきたり、年金基金などの機関投資家がESGに消極的な企業から資金を引き上げたりといった動きがでてきているのです。温暖化対策をはじめとするESGに長期的に取り組む企業も増えてきているので、今後もESGファンドの人気は続くと考えられます。
まとめ
ESGは一時的なブームで終わるのではなく、今後も主要テーマとして市場の関心を集めるでしょう。ただ、「ESG」と名前がついているだけで、中身はこれまでの投資信託と変わらないファンドもあります。ESGファンドを購入するときは、どのような運用をおこなうのか、どのような銘柄を組み入れるのかなどを確認してから購入するようにしてください。