2019
05/22
最終更新日:2019/05/24
経済・マーケット

はじめに

最近頻繁に新聞に取り上げられている米中貿易戦争、一体どんなものなのか、一般人の私たちにどんな影響を与えるかがいまいちわからない方も多いでしょう。
しかし実際、日本にも、個人投資家にも大きな衝撃を与えることが想定され、損失回避のためには注目必須のテーマです。
今回はマーケットの視点から、米中貿易戦争についてわかりやすく紹介したいと思います。

経緯

米中貿易戦争は、2018年以降、アメリカと中国相互に追加関税を実施し始めたことにより顕在化した貿易問題です。1990年代から経済的に急成長を遂げた世界第2の経済大国中国と、20世紀から約100年に渡って世界の覇権を握ってきた世界唯一の超大国である米国の競争の一角の顕在化でも言われます。

2018年1月、中国税関総署が2,758億1000万ドルの過去最高対米貿易黒字額を発表しました。この発表をきっかけに、アメリカは次々追加関税を実施しました。

そのあと、中国の報復関税により紛争が大きくなり、3月、アメリカが鉄鋼、アルミニウム製品に追加関税を行う方針を発表し、米中貿易戦争が本格化しました。

5月3日北京、5月17日ワシントンでの米中閣僚会議を経て、米中は会談で問題を解決しようとしています。一度は成果を見せましたが、最近では合意の後退が見られます。

5月10日、米中通商協議は折り合わず、中国が90%完成していた合意文書案を大幅に修正したということで、アメリカは2,000億ドル規模の追加関税を10%から25%に引き上げることに。

米中関係はどうなるか

経済学の視点から、もっとも悪影響を受けてしまうのはアメリカの消費者と中国の輸出企業と見られます。

アメリカの家計が関税を負担してしまう

今回の状況が続くと、内需に支えられている米GDPには大きな打撃ではないでしょう。
特に第三弾の追加関税により多数な消費財も増税対象になり、アメリカの家計への直撃と言われます。トランプ氏は、「アメリカの消費者が関税を支払わなければならない理由はない」と述べましたが、最新の報告によると、関税の負担がすでにアメリカの個人や企業に転嫁されていることがわかりました。

中国の輸出企業が関税を相殺するために価格を引き下げている確固たる証拠はありません。関税上昇は物価上昇につながる可能性があります。加えて、米中貿易戦争の悪化は企業や市場、消費者心理に悪影響を及ぼし、経済成長に支障をきたす恐れも十分考えられます。

中国輸出企業に大きなピンチ

さて、これは中国にどんな影響を与えるでしょう。
米国政府は、中国は代わりの輸出対象を見つけることが容易ではないことを認識し、第四弾追加関税を発表しました。中国の輸出産業の基盤が揺るがされることにより、中国政府は知的財産権の保護などの妥協を迫られています。

中長期的には、世界のサプライチェーンへの影響は避けられません。追加関税政策がこのまま続くと、「世界の工場」と呼ばれる中国の動揺は必然でしょう。中国の生産拠点が他の新興国に移転されると、現在中国経済を支えている輸出と個人消費に重圧をかけます。

国際通貨基金(IMF)の分析によると、米国における機械電子機器の輸入は中国が最大で22%を占めていますが、追加関税の影響が拡大するにつれて12%まで低下する可能性が高いと考えられます。

IMFは、関税戦争が長期化すれば米中貿易規模が30%〜70%縮小する可能性があると警告しました。また、スイスの大手銀行UBSは、中国が米国の追加関税を受けた結果として、中国のGDP成長率が1.6%から2.0%くらい低下する可能性があると予想しました。

投資に与える影響

投資家のリスクオフ志向

1.日本円
過去、世界に不安定な要因が増加するとの予測が強まったときに、世界の金融市場がリスク回避に動き、リスク資産の株式から安全資産の国債に資金がシフトしたことがありました。

今回も、特に、為替市場では経常黒字でインフレ率が低い国の通貨が逃避先となり、円が選好されています。短期的に、世界に米中貿易戦争による景気不安感が強く、一時的な円高が見られます。

2.米株/ドル
追加関税がもろ刃になることにもかかわらず、トランプ氏は米経済指標が好調と述べたうえに、強気な姿勢を見せました。「このまま局面が悪化すると先に弾切れになるのは中国だ」という認識が広まったということもあり、米S&P500指数の上昇が持続しています。長期的にドル高の傾向も見られます。

3.先進国債券

中国が米製品への関税引き上げという報復措置を表明したことを受け、リスク回避の動きに加え、米国などの先進国債券の買いが優勢でした。長期債、超長期債に上昇が目立ちます。

4.金
日本円と同じく、安全資産の金も好調です。

米中動向を見極めることが必要

しかし、政治情勢は日々変化しています。世界経済は米中貿易戦争を嫌気ということは間違いないかと思いますが、それ以上に先行きの不透明感を払拭することが困難な状況です。

相場がたいへん不安定な時期であるため、一般投資家は守りの姿勢で、米中の動向を見極める必要があるでしょう。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者3万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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