皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
目次
はじめに
本日のテーマは、「資産管理会社の『資産承継』への活かし方」という内容でお届けをしたいと思います。
資産管理会社という資産を運用するための目的だけで作られる会社があるのですが、主な目的は2つあり、1つは資産運用へ活かすという目的、もう1つが資産承継、相続対策へどのように資産管理会社を使うかという、2大目的があります。
資産管理会社の活用イメージ
資産管理会社を資産承継に生かすための、ざっくりとした活用のイメージがこちらになります。この図にエッセンスが詰まっています。
資産管理会社のバランスシートです。この中央の部分が銀行借入や資産などを表しています。役員からの借入金や銀行からの借入金で、外国債券や国内の不動産に投資をしています。
それぞれ6億円の管理会社になっているのですが、資産承継のポイントは、一番右下に記載されているお子様になります。
このお子様が会社の株式を持っているのですが、一般的には会社を作った親御様、代表者の方が株主というイメージを持たれるのではないでしょうか。
ただし、資産管理会社でさまざまな投資を行っていくと、基本的には資産が増加します。この場合、お子様が株式を持っていれば、増加した資産もそのままお子様の資産となります。つまり、資産承継してることになるため、相続対策まで考えると、お子様が株式を持っていた方が良いということになります。
したがって、資産管理会社というのは、お子様が株主となり、増えた資産がお子様の物になる。このように、資産承継のメリットを取るというのがポイントになります。
資産管理会社を使うメリット
それでは、先ほどのイラストの資産管理会社を使うメリットをお伝えしていきたいと思います。メリットは、次の通り大きく分けて二つあります。
相続税対策になる
1つ目は相続税対策になるということです。
すでにお伝えしたことですが、お子様が株主なので投資で増えた資産は、そのままお子様の資産になっているので、これで相続対策になっています。
最終的な相続の税金を減らせているということになります。
また、管理会社で不動産に投資している場合は、管理会社の株式の評価が下がりますので、この面でも相続税の対策になります。
実質的に不動産の贈与が可能
2つ目は資産管理会社で不動産に投資すると、実質的に不動産の贈与が可能になるということです。
本来、不動産を個人で持ってる場合、その不動産を贈与するというのは本当に手間がかかります、
お子様に不動産を贈与する場合は、登記を変更する必要があるため、登録免許税やもろもろのコストがかかったり、手間がかかるので、本当は現実的ではないのですが、資産管理会社に不動産を持たせると、お子様に管理会社の株式を渡すことで、実質的に不動産を贈与しているということになります。
したがって、500株の会社であれば株数単位で、一株ずつ渡すなどの方法でいろいろな方に渡すなど、実質的に不動産の贈与を可能にしているのが資産管理会社の相続上のメリットになります。
資産管理会社と不動産との組み合わせ
このように、資産管理会社と不動産を組み合わせることでメリットがあるのですが、なぜ不動産は相続上でメリットがあるのかというと、こちらのイラストが全てを表していると思います。
相続税評価というのは、現金だと10億円は10億円のままなんですが、これを自分で居住する不動産にすると6億円の評価になり、相続税評価額が40%下がります。
また、不動産を人に貸すと、さらに評価額が下がって4億5,600万円になり、約54%相続税評価が下がります。
これはもちろん、物件によってどれぐらい下がるかというのは違うのですが、概ねこのようなイメージです。
不動産がこれくらい評価が下がるので、管理会社が不動産を保有することで、管理会社の株式評価を下げる効果があります。
つまり、資産管理会社の株式をお子様に贈与することで、相続税対策になるということです。
注意点として、資産管理会社で不動産を持つ場合は、購入してから3年間は相続評価額は変わらないです。
購入して4年目以降から評価が下がるので、これは個人と違いますから注意してください。
資産承継上のデメリット・リスク
ただし、資産管理会社で不動産を管理する場合、次の通り資産承継上のデメリット・リスクもあるので、みていきたいと思います。
デメリット・リスクは、大きく分けて2つあります。
相続税のメリットがなくなる可能性
1つは相続税のメリットがなくなる可能性があることです。
資産管理会社で不動産投資をすることで、相続税のメリットがなくなることがあるとは、どういうことなのか説明します。
不動産を会社で買うというのは、資産管理会社で投資することになりますが、資産管理会社は基本的に資産がないわけです。純資産がない空の箱なので、不動産に投資して株式の評価が下がったとしても、0にはなりますが、そこからマイナスにはならないわけです。
マイナスになって個人資産の相続税評価額から引かれれば良いのですが、それはできません。したがって、個人で不動産に投資していた方が相続税対策になっているということが多々あります。
したがって、ご高齢の方に関しては、個人で投資した方が良いケースの方が多いと思います。お若い方だと亡くなられる確率が低いので、資産管理会社に投資した方がメリットが高いケースも多いのですが、やはりここはいろんな兼ね合いを考えて検討する必要があると思うのですが、意外とメリットがないことも多いということです。
それから、個人で不動産を持っていると小規模宅地の特例が使えます。
小規模宅地の特例とは、土地を事業用に使っていると土地の評価を半分にしてくれるという税制上の特例ですが、資産管理会社が土地を持っていると、この特例が使えません。
このようなデメリットがあるほか、資産を個人でではなく管理会社で持っているので、納税資金が不足するケースもあります。
これは、会社の株になってるからなのですが、管理会社が引き出せば個人で資産を保有している場合と同じなのですが、相続税は個人で払うので、管理会社にお金があっても、一時的に納税資金が不足するということはあり得るので、これはデメリットだとと思います。
相続争いの火種になる可能性
デメリットの2つ目は、資産管理会社で資産を持つことで相続争いの火種になる可能性があるということです。
これは資産を集中させ過ぎた場合です。
資産管理会社を作った場合に、個人の資産のほとんど全部を資産管理会社に統括してしまったとします。もし、お子様が3人いて親御様が亡くなり、株式を分けなくてはいけなったとしましょう。
この場合、よくこのチャンネルでお伝えしてるように不動産や、未上場の会社の株式、つまり資産管理会社の株式などは共有しない方が良いです。
共有することで誰も意思決定をできないような会社になったり、お子様の仲が悪かった場合に、誰も何も決定できないような会社になることで、争いになっているケースが多いです。
したがって、資産を集中させ過ぎることには注意した方が良いと思います。
争いに関するもう1つが、会社の支配権のコントロールに注意した方が良いということです。
最初のイラストでは、お子様に株式を渡しているのですが、反旗を翻される可能性もゼロではないということです。
例えば、大塚家具は事業会社ですけど、あの会社はお子様に実質乗っ取られています。
しかし、資産管理会社は上場しているような会社とは違って、いろいろとリスクをヘッジできる方法もあります。
最後に、資産管理会社の相続争いのリスクヘッジ手法を4つお伝えしたいと思います。
相続争いのリスクヘッジ手法
お子様1人につき管理会社を1つ設立
1つ目は、お子様1人につき、管理会社を1社作るというポピュラーな対策です。
お子様1人であれば、資産管理会社1つで良いのですが、2人いたら2つ、3人いらっしゃったら3つ作る。長男には長男の管理会社、長女には長女用の管理会社というイメージで会社を作るケースが結構多いのですが、当然コストも工数も増えますので、そこの兼ね合い、資産規模とコスト、工数の兼ね合いで決めていくというのが一般的だと思います。保有資産が数億とか10億以上あると資産管理会社をお子様ごとに作った方が良いとなる可能性が高くなると思います。
相続後の株式共有を回避可能
2つ目は、お子様ごとに資産管理会社を作ることで、相続後の株式の共有を回避する必要があるので、そのように遺言を書いたり、そのような設計をしておくわけです。ご家族にも伝えておくとか、事前に伝えておいてさらに、遺言を書いておくということで、この株式はこのお子様、この管理会社はお嬢様など、そういう準備をしていくのは大事だと思います。
お子様ごとにオリジナルの相続設計が可能
3つ目です。お子様ごとの管理会社を1社ずつ作ることで、長男は海外の不動産などを持っていても、エンジェル投資をしているベンチャー企業の株式などを持っていても、きちんと自分でコントロールできると思われるお子さんには、そのような資産に投資をしてる資産管理会社を渡せば良いです。
ただ、ご長女様は、ビジネスもあまりやってないし、分からない場合は、安定的に運用してるの債券を持っているような管理会社をお嬢様にお渡しするような設計、したがってお子様ごとのオリジナルの相続設計ができるということです。これもメリットなのだと思います。
無議決権株式などの種類株式の活用
最後に、4つ目です。資産管理会社は無議決権株式というものを発行することができます。このような特別な権利を持っている株を種類株式というのですが、これはお子様に株を渡してしまうことで反旗を翻されて自分の思い通りにならないというリスクをヘッジするために利用します。
例えば資産管理会社の株を100株発行して、1株だけ議決権株にして残り99株無議決権の株にします。そして99の株式だけをお子様に渡して、1株の議決権株を本人で持っていれば、財産としてはお子様が株式を持っているので相続対策になります。
ただし、会社のコントロールは自分がその1株の議決権株式ででできるということです。管理会社はこのようなことができますので、会社の支配権コントロールをするというのは有効だと思います。
そのような訳で本日は、「資産管理会社の『資産承継』への活かし方」という内容でお届けをさせていただきました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中