2026
01/15
資産運用入門 資産配分 金融資産

皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。

今回のテーマは、「富裕層が金融資産だけで資産運用する場合の資産配分戦略」です。

富裕層の資産運用では、株式や債券といった金融資産に加え、不動産などの実物資産をバランスよく合わせ持つことがセオリーとされています。しかし実際には、不動産には一切投資せずに金融資産だけで資産運用する富裕層の方も一定数いらっしゃいます。

例えば、会社売却後に新規事業を検討している方の場合、事業資金を確保しておきたいため、流動性が高い資産だけで運用したいというニーズが強くなります。金融資産と比較すると、不動産は流動性が低く、投資や管理の面でも工数がかかります。そのような手間をできるだけ軽くし、ストレスを抑えて、管理の負担を軽くしたいという理由から、投資対象を金融資産に限定することは、ごく自然な判断といえます。

今回は、実際に当社お客様からご要望があり、金融資産に限定した場合の資産配分戦略についてお話しします。金融資産の中で、株式・債券・REIT・オルタナティブなどに、どのように分散して運用するのがいいのかご参考にいただけますと幸いです。

今回の内容についてはYouTubeチャンネル『世古口俊介の資産運用アカデミー』でもご視聴いただけます。

40代男性の資産配分例

資産配分(当初)

こちらの資産配分シートで、当初の状態から見ていきます。

ご本人情報は、40歳代前半の男性で、家族構成は奥様、長男、長女の4人家族です。職業は会社経営ですが、その会社は売却済みで、売却後も会社の代表を続けています。年収は2,500万円、国内不動産はご自宅をお持ちです。

資産配分を見ていきます。さまざまな金融資産を保有されていますが、その中心は会社売却代金が含まれている5億4,000万円の現預金です。実物資産としては、2億4,000万円の価値のご自宅と住宅ローンが9,000万円ある状態です。

この方のご要望は主に4つあります。
1つ目は「会社売却代金5億円の有効活用」、2つ目は「安定したインカムゲインの獲得」、3つ目は「目標の年間成長率は+6%~7%」、4つ目は「流動性が高い金融資産の投資に限定したい」ということです。

今回は4つ目がポイントとなります。通常であれば、国内不動産を借入して投資するのが一般的ですが、この方は、流動性が高い金融資産だけに限定して投資したいというご要望をお持ちです。

資産配分(再配分)

この方のご本人情報や現状の資産配分、ご要望を踏まえてご提案させていただいた、最適と考えられる資産配分はこちらになります。

減少させる資産は、会社売却代金の5億円です。増加する資産は日本株式に4,000万円、先進国株式に4,500万円、新興国株式に1,500万円、日本債券に3,000万円、先進国債券に2.5億円、日本REITに4,000万円、外国REITに1,000万円、オルタナティブに 4,000万円、コモディティ金に2,000万円、コモディティその他に1,000万円となっています。

この中で内容がややわかりにくいのは、オルタナティブです。ヘッジファンドと呼ばれる資産です。コモディティ金は実物資産のカテゴリーですが、金に連動するETFなので、流動性の高さから金融資産と捉えて投資対象としています。コモディティその他は原油価格に連動するETFなので、コモディティ金と同じように金融資産と捉えて1,000万円配分しています。

再配分のポイント

今回の再配分のポイントは次の4つに絞られます。

ポイント1)外貨比率が高くなりすぎないように設計する

通常、富裕層の資産配分では、国内不動産を組み入れることが多いです。国内不動産は円建て資産であるため、円資産の比率が一定程度確保されます。しかし、国内不動産に投資しない場合、投資対象は海外資産に偏りがちです。何も意識せずに外国債券・外国株式・外国REITといった資産ばかりに投資してしまうと、外貨比率が過度に上昇してしまいます。

今回のケースでは、外貨比率が上がりすぎないように工夫した結果、再配分後の外貨比率は57.8%に抑えられています。通常であれば、海外の株式・債券・REITなどを多めにしますが、比率を上げないように、日本の株式・債券・REITを多めにすることによって、外貨比率を抑えているのです。

今回、日本の株式・債券・REITは合計で1.1億円ありました。仮に、これを全て外貨にした場合、外貨比率は70%近くまで上昇してしまいます。これでは円高リスクが高くなりすぎます。国内不動産に投資しない場合は、外貨比率を抑えるために円建ての資産を増やす工夫をするという点が1つ目のポイントです。

ポイント2)インフレ対策を意識した資産配分

これも国内不動産がない場合の代替策となっています。日本の物価が上昇すると国内不動産の価値や家賃も上昇しやすいため、国内不動産を持てばインフレ対策が自然にできることになります。しかし、不動産を組み込まない場合、それに代わる対策を金融資産の中で講じなければなりません。

その代替策として有効なのは、株式・REIT・コモディティといったインフレに強い資産を多めに持つことです。今回のケースでは、5億円のうち、2.1億円を株式・REIT・コモディティに配分しました。全体の約4割をインフレ対策の資産にしている形です。

このように国内不動産に投資せず、金融資産だけで運用する場合は、インフレ対策を意識した配分を行っていく必要があります。

ポイント3)資産成長目標の達成

この方の目標は、+6%~7%でした。通常、国内不動産がポートフォリオにある場合、借入をして投資するので、自己資金に対する期待成長率を引き上げることができます。国内不動産の借入比率が6割程度の投資であれば、物件にもよりますが、+7%や8%の期待成長率が見込めることが多いため、資産運用の成長目標を達成するためにポートフォリオを作り込んでいきます。

しかし、期待成長率を引き上げてくれた国内不動産がない場合、この目標を達成するためには、株式・オルタナティブのような実績の成長率が高い資産やREITを資産配分の中に多めに入れていく必要があります。つまり、金融資産の中で攻めの配分が不可欠となるのです。

今回のケースでは、株式・オルタナティブ・REITは合計で1.4億円ほど配分していました。これは、資産全体の成長率を引き上げる原動力となっています。今回の再配分後の全体のバランスは、債券(守り)への投資額が2.9億円、株式・オルタナティブ・REITといった、いわゆる攻めの投資は2.3億円です。

守りと攻めの割合は、守りが約55%に対して攻めは45%と、概ね半々に近い資産配分になっています。目標の資産成長率が、今回の実例のように6%~7%とそれなりに高い目標の方に関しては、国内不動産の代わりとなる、期待できる成長率が高い資産、つまり攻めの資産を入れることが必要です。そのため、株式・オルタナティブ・REITなどを多めに配分することが重要なポイントとなります。

ポイント4)安定したインカムゲインの獲得

この方のご要望にもあったように、安定したインカムゲインの獲得も重要です。本来、国内不動産に投資すると安定した家賃収入が入ってきます。しかし、不動産に投資しない場合は、それに代わるインカムゲインを他の金融資産の運用でしっかり得ることを考えて資産配分する必要があります。

今回の再配分では債券に2.9億円投資しており、その平均の利率は約4.5%、年間の税引前のインカムゲインは1,260万円でした。また、REITも国内外合わせて5,000万円投資しているので、分配金利回りベース3.5%程度で、175万円のインカムゲインが期待できます。これらを合計すると、税引前キャッシュフローは年間で約1,430万円となります。

個人で運用した場合、20%の税引後で1,150万円のインカムゲインが、今回の再配分によって生まれることになります。このように、国内不動産に投資しないため賃料収入は得られませんが、それに代わるインカムゲインを債券やREITなどでしっかり得るという投資をする必要があります。

したがって、国内不動産に投資することで得られる経済効果をどう金融資産で代替して得ていくのか、それを考えながら再配分していくことが、金融資産だけで資産運用する場合のポイントになるのではないかと思います。

まとめ

最後に、今回のテーマである「富裕層が金融資産だけで資産運用する場合の最適な資産配分戦略」をまとめます。ポイントは4つです。

ポイント1)外貨比率が高くなりすぎない工夫が必要

国内不動産に投資しない場合は、円建ての投資の資産が減り、海外資産ばかりに投資してしまうことで、外貨比率が高くなりがちです。外貨比率が7~8割になると円高リスクが高まりすぎてしまいます。

そのため、通常よりも日本株式を多めにしたり、日本債券の比率を高めて先進国債券の配分を抑えたり、外国REITよりも日本REITの割合を高めにするなど、外貨比率が高くなりすぎない工夫をすることが求められます。

ポイント2)インフレ対策を意識した資産配分

国内不動産を持つことで、インフレ対策は万全になります。しかし、その不動産投資をしない以上、金融資産の投資の中でインフレ対策をすることが不可欠となります。国内不動産の代替資産となる、株式・REIT・コモディティといったインフレに強い資産を意識的に多めに配分するとよいでしょう。

ポイント3)資産成長を求めるなら株式・オルタナティブ・REIT多めに

債券で達成できないような+6%~7%以上の資産成長を期待するのであれば、株式・オルタナティブ・REITを多めに配分する必要があります。そうでなければ金融資産だけでそのような資産成長を達成することは困難です。

不動産に投資する際は借入を使うので、自己資金対比の期待成長率が高まり、必然的に資産配分全体の期待成長率も高くなります。その不動産への投資がない分、期待成長率の高い資産を多めに配分し、全体の成長率を押し上げる設計が必要です。

ポイント4)債券でインカムゲインをしっかり確保

不動産に投資すると安定した賃料収入を得られますが、不動産に投資しない場合、それに代わるインカムゲインを金融資産で代替しなければなりません。そのためには、国内外の債券をポートフォリオに組み入れ、安定的にインカムゲインを得ることが有効です。

これらのポイントは、全て国内不動産に投資しないデメリットを補うための作戦となっています。国内不動産の経済効果をどの金融資産で代替し、金融資産の配分をどれぐらいにした方がいいのかを考えて投資することが、富裕層に求められる最適な資産配分戦略といえるでしょう。

本日は「富裕層が金融資産だけで資産運用する場合の最適な資産配分戦略」という内容でお届けさせていただきました。

金融資産だけで最適な資産配分を行うには、目的やリスク許容度を踏まえた緻密な設計が欠かせません。ご自身に合った最適解を知りたい方は、ぜひ当社の無料相談をご活用ください。

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本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者20万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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[金融商品仲介業者]

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