1.はじめに
アメリカの一大イベントである中間選挙が、11月6日に迫っています。
今回の中間選挙は、良くも悪くも話題に事欠かないトランプ大統領が就任してから初ということもあり、これまでのトランプ大統領の政策に対してアメリカ国民がどのような審判を下すか、選挙の結果を受けた今後のアメリカはどのように動くか、さまざまなシナリオが考えられます。
本コンテンツでは、アメリカの中間選挙および今回の中間選挙の焦点についてご説明するとともに、選挙後に予想されるアメリカの動きについて考察します。
2.中間選挙とは?
アメリカにおける中間選挙とは、上下院議員や州知事を対象に4年ごとの大統領選挙の「中間」の年の11月に実施される選挙のことです。選挙後の連邦政府の政策運営は選挙結果そのものを色濃く反映する傾向があり、さらに現職の大統領に対する信任投票のような意味合いを持つことから、アメリカ国内だけではなく世界中から注目されています。
今回の改選対象は上院(任期6年)が定数100議席のうち35議席、下院は任期2年のため全435議席です。現在は上院・下院ともに共和党が過半数を確保しています。
3.今回の中間選挙のポイントは?
今回の中間選挙は、下院で民主党が過半数の議席を確保できるか否かが最大のポイントです。
アメリカの国内経済は好調なものの、中国との貿易戦争やINF(中距離核ミサイル)全廃条約を破棄することによりロシアと一層関係悪化が見込まれるなど、依然としてトランプ政権に不安定感があることは周知のとおりです。
それでもトランプ大統領頼みの選挙とならざるを得ない共和党ですが、少なくとも上院は改選対象が共和党の9議席に対して民主党は26議席と共和党議席の多くが残ることになるため、共和党が過半数を維持するでしょう。
しかし、下院はそうではありません。
今回の共和党は現職議員のうち40人超がすでに不出馬を表明しています。このため、トランプ減税などによる景気回復や米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の合意などを受け支持率は回復基調のトランプ大統領ですが、何かと批判の声も根強いため共和党はある程度の議席を減らす結果になるのではないかと見られています。
事実、予備選の結果を見てみると、カリフォルニア州のように移民政策や人権問題発言などでトランプ政権に対する批判が強い州では民主党が健闘しています。
4.中間選挙後を予測する
ここでは、下院選において共和党および民主党がそれぞれ過半数を確保したケースを想定して、今後のそれぞれのケースを予測します。
仮に共和党が勝利した場合はこれまでの内需重視路線がより強硬的に推進され、追加減税や巨額のインフラ投資などの実現される可能性が高まります。
しかしこの施策はアメリカの財政赤字をさらに悪化させることにもつながるため、アメリカ10年国債利回りのさらなる上昇という事態を招きかねません。
一方で民主党が勝利すると、予算など各種議題の審議が滞ることが予想されるほか、トランプ大統領へ議会調査が頻発し各種政策が停滞、さらにはトランプ大統領が弾劾される可能性が高まるなど、政治的に不安定になる可能性があります。
これにより相対的にリスクの高い資産に向かっていた資金がアメリカ国債に流れた場合は、逆に利回り低下の可能性があります。
続いて株価ですが、アメリカでは、中間選挙後の株価は選挙が無い年の同時期に比べ好調に推移するという有名なアノマリーがあります。共和党と民主党のどちらが勝利したとしても、アメリカ経済の堅調さや企業の業績を考慮すれば売り圧力によりこのアノマリーを打ち消すとは考えにくいものがあります。
5.まとめ
以上のように、共和党・民主党どちらの勝利に終わっても今回の中間選挙の結果は株価に大きな影響を及ぼすことは考えにくいのですが、金利市場はボラティリティが高まる動きとなりそうです。米連邦準備制度理事会(FRB)の動向と併せ、引き続き要注視です。