はじめに
米国のEC企業大手Amazonは今や、EC産業で世界トップのシェアをとっています。
みなさんも、スマホでAmazonの商品を一度は注文したことがあるのではないでしょうか?
しかし、今ではAmazonはEC産業に注力しておらず、クラウドサービス事業に重点を置いているのです。
同社が開発しているクラウドサービスはAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)と呼ばれ、2006年3月に初めてリリースしました。
今では法人向けに月間100万アクティブユーザーを抱え、Microsoftに抜かれるまでは世界シェアトップをとっていました。
また、10月下旬に米国防総省のコンピューターシステムをクラウドする案件を受託するはずでしたが、土壇場でMicrosoftに契約が決まり、Amazonは米政府を提訴しました。
そこで今回は、世界のIT市場における最先端市場である「クラウドサービスとは何か」から「Amazonはなぜ米政府を提訴したのか」まで解説します。
クラウドサービスって何?
現在、Amazon、Microsoft、Googleなど米国のIT企業を中心にクラウドサービスの開発が進んでいます。
クラウドサービスとは、ストレージやデータベース管理、データ分析、開発者用ツール、顧客管理システム、セキュリティなどあらゆる情報システムを一括でかつ低コストで提供しクラウド上で操作するサービスのことです。
これまでかかっていたIT関連の固定費も、クラウドの使用量に応じて料金を支払うようにすることで変動費へと変えることができ、かつ高速なITツールを提供できることからIT企業が法人向けに開発しています。
Microsoftも現在、OfficeやWindowsに依存したビジネスモデルから脱却し、Azureというクラウドサービスでヘルスケア、製造、金融など多岐にわたる事業への展開を試みており、その技術力から2019年10月下旬に米国防総省から100億ドルのコンピューターシステムをクラウド化する案件を請け負ったのです。
ちなみにクラウドサービスの流れについて、GoogleはGCPというサービスを開発しており、それにより2020年からGoogleは銀行業務を開始することを決めています。
このように、金融業界ではクラウドサービスによって従来の高コストであった送金システムや口座管理システムなどを、高速かつ低コストで運用することができ、人員も削減できることからIT化の流れが進んでいます。
また、クラウドサービスを使用した事業展開の流れは金融以外にも流通・リテール、教育、などあらゆる場面で利用できるのでIT企業がこぞって開発に乗り出しているのです。
なぜ米政府を提訴したのか
2019年11月22日、Amazonが米政府を提訴したことが分かりました。
なぜ提訴したのでしょうか?
結論から説明するとクラウドサービス市場のシェア争いの中で、米政権のAmazonに対する敵意が国防総省の案件の選考に偏見を与えた可能性があるからのようです。
10月までAmazonはクラウドサービスと事業で世界シェアトップをとっていました。
AmazonとMicrosoftはクラウドサービスにおいてシェアを奪い合っており、多くの関係者は国防総省の案件をAmazonが受託すると想定していました。
しかし、10月下旬にMicrosoftが国防総省の案件を請け負って、Amazonはシェアトップの座を奪われました。
これに対して、Amazonは米政府を訴えました。
というのも、以前からAmazon創業者で現CEOのジェフ・ベゾス氏は米トランプ大統領から敵視されており、輸送コストの引き上げや、反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いをかけられるなど犬猿の仲になっているのです。
また、ベゾス氏の不倫についてもトランプ大統領がリークしたという噂もあり、ベゾス夫妻の離婚直前にもトランプ氏はベゾス氏をツイッターで嘲笑しました。
このような経緯もあり、ベゾス氏は意図的に国防総省の案件がMicrosoftに委託されたとして米政府を提訴したのです。
クラウドサービス事業はライバルのMicrosoftが最も力を入れており、様々な事業への展開を視野に入れていることからAmazon側も黙認するわけにはいかず、法人向けの資金貸し出し事業「アマゾンレンディング」など徐々に金融業に展開しているAmazonにとってクラウドサービスで覇権を奪われるわけにはいかないのでしょう。
そして、今回の案件は日本円で1兆円をこえる規模なのでさすがにAmazonも痛かったはずです。