近年マーケットに大きな影響を与えているアルゴリズム高速取引とは?

近年、ITの進化により従来の人的(アナログ)な判断が主流だった投資の新たな方法としてアルゴリズム取引という手法が注目されています。様々な分野でコンピュータが駆使されており、現代社会では欠かせない要素の一つですが、万能ではないアルゴリズムのメリットとデメリットを把握しておきましょう。

1.アルゴリズム高速取引とは?

アルゴリズム取引はコンピューターシステムを駆使して「演算手続きを指示する規則性」のこと。要するにあらかじめ設定された数値(執行ストラテジー)に株価や出来高が達した際に自動的に売買を繰り返す取引のことを表しています。

執行ストラテジーは自己分析によって設定される場合もありますが、高度な知識を必要とするため、各証券会社が独自に分析し設定した複数の執行ストラテジーの中から投資家がチョイスする方式が一般的です。

従来の、取引所に直接注文を自動執行する仕組みの「ダイレクト・マーケット・アクセス(DMA)」とは分別されており、より有利な価格で証券会社独自のノウハウをあらかじめプログラミングとして盛り込んでいるという点が異なります。

2.アルゴリズム高速取引のメリット

アルゴリズム高速取引のメリットとしては、厳密な実行プログラムがトレードシステム上に盛り込まれているので常に監視しなくてもより優位性のある価格でポジションを保有することが可能になります。

また、副次的な効果として投資メンタルの影響を受けないという点も挙げられます。株価がもっとあがると予想していても含み益になると人間心理で早く利益を確定させてしまいたくなるものですが、アルゴリズム取引は人間心理の影響を受けないので想定している以上の利益を得ることも可能です。

3.アルゴリズム高速取引のデメリット

アルゴリズム高速取引のデメリットは、世界的な不況や市場の暴落などあらゆるリスクを想定したプログラムが組み込まれていないと思わぬ損益を出す可能性があります。

従って、優秀な実行プログラムを構築している証券会社を見つけるのは至難の業であり、アルゴリズム取引の運用結果など実績が示される時期までは運用開始は待つべきでしょう。そして、アルゴリズム高速取引が市場の流動性に厚みを増す可能性がある一方で、市場の不安定化をもたらす可能性が指摘されているので導入に伴うリスクを十分に検討する必要があります。

4.金融庁「高速取引行為者向けの監督指針」

ロイター通信社によると「欧州では2018年1月からアルゴリズム高速取引を手掛ける投資家の登録制が導入されて、取引記録の保存や誤発注の防止措置が求められる」とあるように、すでに欧州では機関投資家のみならず個人投資家もアルゴリズム高速取引を行うための環境整備が整いつつあります。

一方で、証券市場の流動性にさらに厚みが増す効果がある一方で市場の不安定化やシステムの脆弱性といった問題も懸念されています。我が日本では、金融庁より平成30年4月に発行された「高速取引行為者向けの監督指針」では、金融商品取引業者等向けの指針として、継続的なヒアリング等により高速取引行為者の業務の状況を適切に把握すると記載されています。

現在は体制整備やリスク管理が検討されている段階ですが日本国内の機関投資家にも普及しているように、近い将来日本の個人富裕層の間でもアルゴリズム高速取引が行われることが予測されます。

まとめ

米国の機関投資家だけでなく国内の機関投資家の間でも解禁されているアルゴリズム高速取引ですが、市場の不安定化の懸念がされるなど実態が必ずしも明らかではなく、証券会社・取引所・証券規制当局のいずれも実態把握できていない中、各方面にどんな影響をもたらすのか安定性・効率性・公正性を見極める必要があります。

しかし、アルゴリズム高速取引が本来持つ正確性・効率性を生かすことができればかつてない企業価値が生まれ資産形成に与える影響は無視できない存在になります。今後も、引き続きアルゴリズム高速取引の市場動向と各証券会社の運用成績には注意を払う必要がありそうです。

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