日経平均株価は3万円突破でバブル崩壊後の最高値水準に
東京株式市場では、5月17日に日経平均株価が1年8カ月ぶりに3万円台を回復し、2022年末から15%上昇。欧米の主要指数(米国のS&P500種株価指数 7%、欧州のストック600指数 9%)の伸びを上回っています。さらに、TOPIX(東証株価指数)は昨年末比13%上昇し、33年ぶりの高値圏にあります。
そして、19日の日経平均株価の始値は30847.36円でした。これは、2021年9月につけた取引時間中の最高値30795.78円を超え、バブル崩壊後の最高値を更新しました。
株価上昇の背景には、デフレ脱却への期待や遅ればせながらの景気回復、1ドル=130円前後で推移する円相場などがあります。また、銀行不安や信用収縮リスクがくすぶる中、海外投資家が日本の安定性を逃避先として再評価していることも、株価上昇の要因です。
しかし、割安感が薄れるにつれて、株価上昇の持続性は不透明になっています。今後は、企業業績や景気動向、地政学的リスクなど、さまざまな要因を注視していく必要があるでしょう。
今年は「セル・イン・メイ(Sell in May )」の相場格言はどうなる?
セル・イン・メイ(Sell in May and go away)は5月に米国株を売却し、9月まで市場から離れることを示唆する米国市場の格言です。この格言は、米国株が5月に高値をつけ、その後9月まで下がる傾向があることに基づいています。
この格言は米国市場の格言であり、日本株には当てはまらないのではないかという意見もあります。しかし、近年は米国株が下落すると、日本株にも売りが広がる傾向があります。これは、日本株に投資している外国人投資家の数が多いためです。そのため、日本株もセル・イン・メイの影響を受ける可能性があります。
しかし、この格言はあくまでも市場の格言であり、必ずしも正しいとは限りません。個別銘柄や市況をよく見て、自分の判断で投資判断をすることが大切です。
2022年11月以来の円安・米ドル高水準に
5月18日のニューヨーク外国為替市場では、円安・ドル高が進み、一時1ドル=138円台半ばまで円安が進みました。これは、2022年11月以来の安値水準です。この下落は、米国の債務上限問題に対する警戒感が和らいだことや、米連邦準備制度理事会(FRB)高官のタカ派的な発言などが影響しました。また、米金利先物市場の値動きから市場の利上げ確率を算出する「フェドウォッチ」では、6月13~14日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.25%の利上げを実施する確率が約37%と、1週間前より26ポイント上昇しました。これらのことから、ドルが買われ、円が売られたのです。
一方、日銀は金融緩和政策を継続する方針であり、日米金利差の拡大が円安をさらに加速させる可能性があります。
日本銀行(BOJ)は、大規模な金融緩和政策を当面継続する意向を表明しました。これは、インフレ率が政府と日銀が設定した目標の2%を超えているにもかかわらず、植田和男総裁が「自信を持って言える段階にはいたっていない」と述べたことによります。
こうした日銀の姿勢は、海外投資家の買い安心感につながりました。欧米の中央銀行は利上げを続けており、日銀は物価と経済を安定させるという難しい決断を迫られていて、日銀は緩和的な政策を継続することで、経済成長を優先していることは明らかです。
日銀の緩和的なスタンスの継続は、為替レートの安定にもつながっています。2月以降、ドル円相場は1ドル=130円台で推移していますが、2022年には150円台に突入する急激な円安に見舞われました。
円安は、日本への投資を促進する効果があります。ただ、2022年はドル建て資産を持つ外国人投資家は、為替レートによって資産価値が目減りする可能性があるため、様子見ムードを強めました。しかし、円相場が安定した今、日本への投資がしやすくなっています。輸出企業も業績の拡大が期待できるのです。
また、欧米に1年以上遅れて始まった日本経済の再開も、安堵感をもたらしています。国内では、コロナ禍で蓄積された過剰貯蓄が高水準で積み上がっています。インバウンド(訪日外国人旅行者)も、すでにコロナ以前の7割弱まで回復しています。日本政府観光局(JNTO)は、3月の訪日客数を181.7万人と発表。単月で150万人を超えたのは、2020年1月以来となります。さらに観光庁は2023年1~3月期の訪日客の一人当たりの旅行支出は21万2,000円と公表。2019年の通年実績(約15万8,000円)から3割増えています。
中国人観光客が本格的に戻ってくれば、さらに消費は拡大するでしょう。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの株価や、ドラッグストアを運営するマツキヨココカラ&カンパニーなどインバウンド関連の株価は最高値圏で推移しています。
景気の安定は、指標にも表れています。経済協力開発機構(OECD)の景気見通し指数では、主要7カ国(G7)の中で唯一、好不況の境目である100を上回っているのが日本です。日本の景気は欧米に比べ回復が遅れていますが、景気は安定しており、投資先として選択しやすいという傾向があります。ですから、5月後半から6月にかけて株高・円安傾向は続く可能性は高いとみています。
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。