目次
はじめに
「年金2,000万問題」がきっかけとなり、老後資産形成に関し、さらに社会の注目が集まっています。
過去記事では、このテーマに関連して、年金制度の概要および資産を増やす必要性について記載させていただきました。
金融庁「老後2000万円不足」問題!年金っていくら貰えるか知っていますか?年金制度についてわかりやすく解説
金融庁「老後2000万円不足」問題!② 2000万円不足するという考えはどんな生活を想定したものなのか?資産の増やし方について解説
では具体的に、老後生活資金として、どれくらいの資産をつくる必要があるのでしょうか。
今回は、過去の「金融庁「老後2000万円不足」問題」の記事に関連して、老後資金の貯蓄目標金額の計算方法について解説します。
老後資金の貯蓄目標金額はどのように計算するか?
結論から記載しますと、下記の計算式により、老後資金の貯蓄目標金額を計算することができます。
ライフイベントも加味した老後生活金額(①)―現在の準備済みの金額(②)=貯蓄目標金額
この点、話題となった「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」の中では、「公的年金による毎月の実収入」と「毎月の実支出」との差分の赤字金額を元に、貯蓄目標額の目安を計算しています。
しかし、老後生活では、毎月かかる支出もあれば、ライフイベントに応じてかかる、一時的な支出もあります。
また、老後生活資金を現在どれくらい貯蓄しているかも、個々人により、まちまちでしょう。
実際には、「ライフイベントも加味した老後生活資金」(①)を計算し、そこから、「現在準備済みの老後生活資金」(②)を引き算することで、より個々人に応じた貯蓄目標金額が見えてきます。
そこで、この①と②の金額の計算方法について、以下、解説していきます。
ライフイベントも加味した老後生活金額(①)の計算方法
公益財団法人生命保険文化センターが実施した平成28年度「生活保障に関する調査」のデータでは、「生活に必要な資金」に加えて、「ゆとりある生活のために必要な金額」も加味した老後資金を算出しています。
この、「ゆとりある生活のために必要な金額」とは、「旅行やレジャー」、「身内とのつきあい」「趣味や教養」、「子どもや孫への資金援助」、「耐久消費財の買い替え」、「隣人や友人とのつきあい」等、不定期に生じるライフイベントに伴う支出も含まれています。
実際にこのデータの「生活に必要な資金」と「ゆとりある生活のために必要な金額」とをプラスして、「老後生活金額」を計算してみると、毎月34.9万かかります。
仮に夫婦世帯で、夫が60歳男性の平均余命まで生きると考え、資産すると、以下の通りです。
34.9万(月額)×12か月×23.84=9,984万192円
(厚生労働省「平成30年簡易生命表」により60歳男性の平均余命を23.84年と設定)
また、夫がなくなった後の妻の生活費を、妻が仮80歳で寡婦になると仮定して、生活費を見積もると、以下の通りです。
34.9万×0.7×12か月×11.91=3,491万5356円
(厚生労働省「平成30年簡易生命表」により80歳女性の平均余命を11.91年と設定し
2人暮らしのときの生活費の7割で生活するものとして設定)
2つを合計すると
9,984万192円+3,491万5356円=1億3,475万7276円
となります。
このように、ライフイベントも加味して老後生活資金を計算すると、少なくとも1億円は必要であることがわかります。
現在の準備済みの金額(②)
この点は、預金等残高、公的年金、企業年金、私的年金の4つの金額を確認して、合計金額を算出します。以下、それぞれ金額の確認方法を記載します。
●預金等残高
これらには、銀行口座にある貯蓄残高、証券会社にある証券口座残高が挙げられます。
銀行口座にある貯蓄残高は、銀行に行って記帳したり、インターネットバンキングを利用することで、残高を確認することができます。
また、証券口座の残高は、直近、証券会社から送付されてきた取引残高報告書に記載の金額を利用するか、インターネットで現時点での残高を確認することができます。
●公的年金
日本年金機構のホームページの「ねんきんネット」もしくは、ご自宅に郵送される「ねんきん定期便」で年金額を計算します。
ここで確認できた夫婦それぞれの年金額に、65歳からの平均余命金額(男性19.70年、女性24.50年)を乗じてみることで合計金額を計算することができます。
また、個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用されている方は、金融機関(運営管理機関)からの通知書面、もしくは金融機関(運営管理機関)のウェブサイトにて、現在の残高を確認してみることも必要です。
●企業年金
企業にお勤めの方であれば、退職金の種類および想定金額を、社内規程をチェックしたり、関連部署への問い合わせにより、確認することができます。
また、企業型確定拠出年金(DC)に加入されている方や財形貯蓄を行っている方は、インターネットや通知書面により、現在の残高を確認することが可能です。
●私的年金
個人年金に加入されている方は、保険証券を見て、基本年金額に年金受け取り期間を乗じて、受取金額を確認することができます。
その他、生命保険の満期金もあれば、その金額も確認し金額に追加します。
まとめ
以上のように見ていくと、老後資金の貯蓄目標金額を計算するのは、簡単とはいえないかもしれません。
ただ、おおまかに一度計算してみるだけでも、これから自分が、だいたいいくら貯蓄をする必要があるかの目安がわかるでしょう。
目安がわかれば、今後の老後資金作りをどのように行っていくか、戦略を立てることができます。ひいては、日々のお金をどのように使っていくか、という日常生活のお金の使い方を見直す、きっかけにもなり得ます。
老後資金に関しては、恐怖心をあおるような情報も少なくはありません。そのため、あれこれ考え、不安になることもあるかもしれません。
そういった問題は、数字に落とし込んで考えてみることで、課題がわかり、恐怖心も和らげることができます。
まずは、概算でもいいので、一度計算し、ご自身の老後生活の資金について考えてみて下さいね。