目次
はじめに
ヘッジファンドとは、デリバティブや空売りを駆使して市場の上げ下げに関わらずに利益を狙うファンドです。この記事では、ヘッジファンドの仕組みと市場規模、投資信託との違いについて解説します。
ヘッジファンドとは?
ヘッジファンドとは、様々な投資手法を駆使し、市場の上昇・下落に関わらず投資家の利益を追求する投資ファンドのことです。高いリターンを狙えますが、ヘッジファンドは私募投信なので一般投資家は参加できないことが通常です。
ヘッジファンドは、複数の金融商品に投資し、高い投資収益を上げることを目的としています。ヘッジファンドは1950 年代に米国で誕生し、1990 年代に広く知られるようになりました。ヘッジファンドは市場の上下動に関係なくプラスのリターンを追求する絶対収益型の運用とされています。
企業年金連合会「ヘッジ・ファンド」
日本におけるヘッジファンドの市場
日興リサーチセンターの調べによると、2022年12月末のヘッジファンドの運用残高は1兆2,939億ドルとなっています。ただ、日本のヘッジファンド市場は、登録されて活動しているヘッジファンドの数が少なく、小規模であると考えられます。また、日本のヘッジファンドは中・小型のゼネラリストタイプが多く、アクティビスト戦略やマクロ戦略はあまり見られません。
ただ、1990 年代以降、世界のヘッジファンドの資産規模やファンド数は急速に拡大し、特に 2002 年以降、機関投資家の投資規模の拡大が顕著です。日本においても、年金基金や金融機関などがヘッジファンドへの投資を拡大しています。
このようにヘッジファンド投資が拡大した背景には、最近まで主要国で低金利環境が続いていたことや、投資家の投資ポートフォリオの多様化ニーズが高まっていることが主な要因であると考えられます。
ヘッジファンドの仕組み
ヘッジファンドの戦略別構成比は、以下の通りです(2022年12月時点)
出典:日興リサーチセンター
代表的な戦略について解説します。
エクイティ・ヘッジ
エクイティ・ヘッジとは、株価指数先物や株価指数オプションを通じて、割安な株式をロングすると同時に、株式市場全体をショートすることでリスクを最小化する投資戦略です。個別銘柄でヘッジする「株式ロング・ショート戦略」も、広義のエクイティ・ヘッジ戦略に含まれます。
リラティブ・バリュー
リラティブ・バリューとは、金融商品間の価格差を利用して利益を得ることを目的とした投資手法です。具体的には、割高な商品をショート(売り)、割安な商品をロング(買い)して、両者の価格差を縮小させることで利益を得ることを目的とします。
リラティブ・バリューは主にヘッジファンドで利用されており、株式、債券、通貨、商品などの金融商品を組み合わせた投資戦略であることが多くなっています。
マクロ戦略
マクロ戦略とは、ヘッジファンドが経済指標を用いてマクロ経済の動向を予測し、株式から債券、コモディティまで、世界のあらゆる市場や商品にロング(買い)とショート(売り)を組み合わせて投資する戦略です。経済状況などを考慮して債券や通貨を売買する「マクロ戦略」をとるヘッジファンドは、2022年には金利の急上昇を追い風に、世界金融危機以降最高のパフォーマンスを達成する見通しです。
国立国会図書館「ヘッジファンドの構造変化とリスク管理」
ヘッジファンドをおすすめできる人
ヘッジファンドは、一般的な投資信託や株式投資では満足できない人や、高いリターンを求める人におすすめです 。ヘッジファンドは、市場の変動に対応できる柔軟な戦略をとり、多様な商品と手法で リスクを抑えながら利益を追求するからです。
ただし、ヘッジファンドは最低投資金額が高く(数千万~数億円)、私募の制約があることに注意が必要です。 また、ヘッジファンドは運用成績や商品の優劣だけでなく、信頼性や安全性も重視する必要があります 。
ヘッジファンドと投資信託の違い
ヘッジファンドと投資信託の主な違いは、以下の3点です。
1.募集形態と最低投資金額
ヘッジファンドが富裕層や大口投資家を対象とした私募型であるのに対し、投資信託は一般個人を対象とした公募型です。公募投資信託は、50人以上の投資家を対象にしたファンドです。これに対し、私募ファンドは、少数の投資家(2~50人)または特定の機関投資家のみを対象としたファンドです。
私募ファンドは、顧客のニーズに合わせて、より自由な設計が可能です。また、投資信託は100円や1,000円といった少額から購入できますが、ヘッジファンドは数千万~数億円といった資金が必要になる場合があります。
2.運用目的
ヘッジファンドはどのような市場でもプラスのリターンを追求する「絶対収益型」であるのに対し、投資信託はベンチマークを上回るリターンを目指す「相対収益型」です。
3.運用手法
ヘッジファンドはレバレッジや空売りなど自由度の高い手法を用いますが、投資信託は多くの規制や制限があります。
まとめ
ヘッジファンドは絶対収益を狙うファンドですが、必ずしも利益をだせるわけではありません。あくまでも分散投資の一つとして、資金の一部をヘッジファンドで運用するようにしてください。
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。