目次
はじめに
国際商品価格の上昇が続いています。とくに原油や銅などの上昇が顕著です。この記事では、商品価格の上昇の原因と株式市場との関係について解説します。
商品価格の上昇
新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、経済回復への期待が高まっています。そして、株式市場だけでなく、国際商品の値上がりが続いています。商品全体の値動きを表すロイター・コアコモディティ CRB 指数は、2021年の4〜6月に15%と大幅に上昇。四半期としては、2010年10〜12月以来10年半ぶりの大きさとなったのです。
米国の原油先物は24%上昇し、6月末時点の価格は1バレル=73.47ドルと、2018年秋以来の高値圏に達しました。銅価格も大きく上昇。2021年5月には、指標となるロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物が一時1万700ドル台まで上昇し、2011年2月に記録した史上最高値1万190ドルを10年ぶりに更新しました。
銅価格の上昇は脱炭素の流れも影響
銅価格の上昇は、世界消費の半分を占めるようになった中国経済の回復が主な要因です。ただ、銅価格の上昇は世界的な「脱炭素」の流れの影響も受けています。脱炭素とは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの排出量を「実質ゼロ」にすることです。「実質ゼロ」とは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を引いた実質の量をゼロにするということです。
今後は脱炭素化のため、太陽光や風力発電、電気自動車(EV)などの需要が高まると考えられます。そして、電気自動車(EV)の銅の使用量は、ガソリン車の3倍程度になります。ですから、電気自動車の普及による銅需要の高まりも、銅価格上昇の要因になっているのです。
ゴールドマン・サックス証券は、太陽光や風力発電、電気自動車(EV)などによって、銅の需要は2030年時点で540万トンと2020年比で440万トンも増えると予想しています。また、とうもろこしの価格も上昇しています。中国が飼料用として買い付けを増やしているだけでなく、ガソリンに混ぜて自動車の燃料として使う「バイオエタノール」としての需要の増加が、価格上昇の原因となっているのです。
商品価格を動かす要因
商品価格を動かす要因は、主に次の3つです。
需給
金や原油、穀物などはモノや資源なので、そのものを生産・供給する「供給家」と、そのものを必要とする「需要家」が取引を行い、商品価格が決定されます。供給家はなるべく高く売りたいと考え、需要家はなるべく安く買おうとします。
金融
各国の金融政策により株価や通貨が動き、それが商品価格にも影響します。とくに2000年代以降は、商品価格に連動するETF(上場投資信託)が上場されて取引量を伸ばしているので、株式市場の影響を受けるようになりました。
通常、株価が上昇すると景気が回復していると期待されるので、商品の需要も増加すると考えられます。ですから商品価格も上昇するのです。ただし、「安全資産」とされる金(ゴールド)は売られる傾向にあります。
また、商品の多くは米ドル建てで取引されているので、米ドルが上昇すると米ドル建ての商品には割高感がでて、売られやすくなるのです。
投機
現在の商品市場では、「投機」は大きな存在です。株式市場などが値上がりする「リスクオン」では商品価格も上がりやすく、株式市場などが下がる「リスクオフ」では、商品価格も下がりやすくなります。「投機」は短期的な動きであり、長期のトレンドを作るものではありません。しかし、大きく価格を動かす可能性があるので、注意が必要です。
商品先物取引とは
金や原油、穀物などの商品(コモディティ)を対象にした投機的な取引が「商品先物取引」です。商品先物取引は、少額の証拠金で大きな金額の取引ができる「レバレッジ取引」が可能です。また買いだけではなく売りからも取引できるので、値上がりと値下がりどちらの局面でも利益を狙うことができます。商品先物取引はレバレッジ取引と売りからも取引できるので、投機筋からも人気があるのです。
商品先物取引の役割
商品先物取引は投機的な取引に利用されるだけでなく、以下のような役割があります。
公正な価格形成
商品先物取引は投機筋だけでなく、生産者や消費者、流通業者など多くの人が参加して価格が決定されます。売り手と買い手のバランスによって価格が形成されるので、商品先物市場は公正な価格形成を担っているといえるのです。
価格変動リスクを回避
商品(コモディティ)を扱う生産者や流通業者・加工業者などは、商品先物であらかじめ売り(売りヘッジ)をしておけば、価格変動による損失をカバーすることができます。
まとめ
新型コロナウイルスワクチンの普及による景気回復期待により、商品価格が上昇しています。ただ、銅やトウモロコシなどの一部の商品は、景気回復だけでなく、今後の脱炭素化もにらんで価格が上昇しているのです。
また、商品価格と株価の連動性は年々高まっています。株式しか取引しない投資家も、商品価格をチェックするようにしてください。