はじめに
新型コロナウイルス関連の倒産がよくメディアに取り上げられています。
しかし、同時にネット媒体などでは新型コロナウイルス関連の「廃業」についても取り上げられています。
倒産と廃業にはどのような違いがあるのでしょうか。
そして、新型コロナによる中小企業への影響や実態はどのようになっているのでしょうか。
新型コロナ関連ニュースを読むときに知っておきたい言葉の違いや、経営者や富裕層が知っておきたい会社への影響について解説します。
廃業と倒産は何が違うのか
新型コロナ関係で会社を畳む場合、ニュースやネット媒体では「廃業」という言葉と「倒産」という言葉の両方を耳にするのではないでしょうか。
このふたつの言葉は手続き的に別物なので、混同してしまうとデータを読み違える原因になります。
倒産とは
倒産とは「資金繰り(支払いや返済)に困り、会社の継続が難しくなる状況のこと」です。
倒産には法的倒産と私的倒産というふたつの種類があります。
私的倒産は、銀行との取引停止など。
法的倒産は、会社再生や破産などの法的手続きを行う倒産を指します。
続けたいのに続けられない。
会社を続けることが返済などの資金繰りの関係で難しい。
このような状況を指すのです。
廃業とは
廃業とは「経営を続けることもできるが、自主的に会社を畳むこと」を意味します。
現状は大丈夫だが、新型コロナなどの影響により今後経営が苦しくなりそうだ。
経営が悪化する前に会社を自主的に畳む。
このように「続けられるが、会社を経営者の判断でやめるとき」などに使われる手続きが廃業です。
この他に、経営者が退職したいときや、体力的な問題で会社を続けることが難しいときなどによく使われます。
倒産と廃業の大きな違いは、「会社が資金などの面で継続可能でも将来や現状を見据えて自主的にやめること」です。
倒産件数には現れない廃業の数
新型コロナ関連のニュースでは会社の倒産と倒産件数がよく取り上げられます。
帝国データバンクによると、新型コロナ倒産は2020年7月8日16時の段階で全国322件です。
倒産数の多い業種は飲食店が49件と最多になっています。
次いで、ホテル・旅館業が46件です。
新型コロナによる自粛のあおりを受けた業種に打撃が大きかったという印象ではないでしょうか。
ただ、このデータには倒産件数は反映されていますが、廃業の件数は反映されていないのです。
自主的に会社をやめる廃業の件数が加算されると、新型コロナによる「会社や事業をやめてしまった件数」はかなりふくらむのではないかと指摘されています。
新型コロナにより廃業数が増加している
2020年の廃業・解散の件数は25,000件と見込まれています。
25,000件という数字は前年2019年よりも多い数字です(帝国データバンク:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p200107.html)。
2019年の廃業・解散の数は約23,000件でした。
2019年は2018年よりも廃業・解散の数が多かったため、2020年に過去より廃業が増えてしまっていることがわかります。倒産件数に合わせるとかなりの数です。
廃業が多かった年としては、リーマンショックがあった2008年が挙げられます。
2008年は資金繰りに困った中小企業の中でも製造業の影響が特に大きかったといわれています。
2020年の新型コロナウイルスでは、旅行や飲食の自粛により、飲食店や旅行業、観光業への打撃が特に多かったと分析されているのです。
倒産は2020年7月以降も増えると見込まれ、さらに5年後や10年後など、長期のスパンでの倒産要因になるだろうと予想されます。
廃業についても同様ではないかとの予想です。
まとめ
廃業と倒産は異なります。
廃業は主に自主的に会社や事業をやめることであり、倒産は資金繰りなどの問題から事業継続が難しいことを意味するのです。
新型コロナウイルス関連倒産は2020年7月8日16時の段階で全国322件ですが、自主的な廃業や解散を含めるとさらに多いという結論です。
倒産だけを見ると「テレビで取り上げられるより問題は深刻ではないのでは」と思ってしまいますが、廃業件数を含めるとかなりの数に上ります。
倒産と廃業は異なる。
この知識を前提に、新型コロナ関連ニュースを今一度チェックしてみてはいかがでしょう。