はじめに
若い時に生命保険へ加入するのと比べて、50代になると、生命保険が必要となる期間も短くなりますし、保険料も高くなります。
そのため、50代の方は、新たに生命保険に加入したり、今ある保険を切り替えたりすることに疑問や不安を感じることが多いと思います。
そこで、50代にとっての生命保険の必要性、選び方・見直し方について、代表的な3つのパターンに分けて説明していきたいと思います。
1.典型的な3つのパターンをもとに生命保険の必要性を考える
本稿では、典型的と考えられる以下の3つのパターンに分けて解説いたします。
(1)既婚者で子どもがまだ独立していない場合
(2)既婚者で子どもが独立している、もしくはいない場合
(3)独身者の場合
(1)既婚者で子どもがまだ独立していない場合
50代でもまだ子どもが学生であり、一緒に暮らしているといったケースも多いでしょう。
この場合は、家族の生活費に加え、子どもの教育費も必要です。
もし、子どもが大学の医学部へ進学を希望しているとなったら、高額な費用が必要です。その上、実家から離れ一人暮らしすることにもなれば、仕送りも必要になるでしょう。
このような状況で、ご自身の身に万一のことがあった場合、手元の貯蓄等の資産、死亡退職金、遺族年金などで生活費・教育費を確保できれば良いですが、そうでなければ、十分な死亡保障がついた生命保険(定期保険・収入保障保険)を活用することをおすすめします。
なお、遺族年金の受給額は、18歳以下の子ども1人がいる世帯であれば、自営業者なら年額約100万円、平均的な月収額が約35万円の会社員なら年額約156万円です。少なくともこれだけで家族が不自由なく暮らしていくのは難しいでしょう。
①定期保険と収入保障保険の違い
定期保険・収入保障保険はいずれも被保険者が亡くなった際に、遺族に対して死亡保険金が支払われる保険期間があるタイプの生命保険です。
ただ違うのは、定期保険は死亡保険金が一括で受け取るのに対し、収入保障保険では「月何万円」など、毎月一定額の保険金を給料のように受け取るタイプだという点です。
保険料を比較すると、定期保険より収入保障保険の方が安価となっています。なぜなら、定期保険はいつ亡くなっても一括でまとまった保険金が支払われますが、収入保障保険は亡くなった時から毎月保険金が支払われるので、保険期間中、毎月、保険金の総額が少なくなっていくからです。
②働けなくなった時の保障も必要
補足しますと、死亡保障だけでなく、働けなくなった時の保障も重要です。これは、以下の2つに分けて説明します。
・ドクターストップで仕事を休まなければならなくなった場合
・仕事への復帰自体が困難になった場合
■ドクターストップで仕事を休まなければならなくなった場合
まず会社員や公務員であれば、仕事を休まなければならなくなった場合、おおよそ給料の2/3の金額にあたる「傷病手当金」を約1年6ヵ月の間受け取ることができます。
これに対し、自営業者・フリーランスには、傷病手当金のような制度はありません。
そこで、仕事を休むことになるとすぐに収入がなくなる自営業者や、傷病手当金だけでは不安な会社員・公務員は、所得補償保険の加入をおすすめします。
所得補償保険は、医師から、治療のために休養が必要だという診断がされて4日~7日経過した後の期間について、月ごとに一定額の保険金を受け取れる保険です。最長で2年程度の間、「月何万円」といった一定額の保険金を受け取ることができます。
ただし、これも、補償を受けられる期間は最長で2年なので、それを超えて、仕事への復帰自体が困難になった場合のリスクも考える必要があります。次をご覧ください。
■仕事への復帰自体が困難になった場合
それでは、仕事への復帰自体が困難になった場合はどうすれば良いでしょうか。
この場合の公的保障として、障害年金の制度があります。ただし、障害年金はあくまで最低限の額しか受け取れず、遺された家族の生活費等をまかなうのには不十分です。
したがって、不足分をカバーするために、毎月保険金を受け取れる「就業不能保険」も検討したいところです。就業不能保険は、働けない状態が60日継続した後から、契約した年齢(65歳までなど)まで毎月「何万円」などの保険金を受け取れます。
(2)既婚者で子どもが独立している、もしくはいない場合
既婚者で子どもが独立している場合でも、遺された家族、特に配偶者が生活に困らないようにお金を確保しておくことが必要です。
そのため、手元の貯蓄などに不安があれば、子どもが独立していない場合と同様に、生命保険で遺族の生活費を確保するための保障を確保しておくことをおすすめします。
ただし、子どもの生活費・教育費は心配しなくて良いので、死亡保険金の額は少なくてすみます。
また、もしも子どもが独立する前に加入した生命保険の契約があれば、保障額を見直すことによって保険料を節約できる場合もあるので、見直してみてもよいでしょう。
(3)独身者の場合
独身者で養っている家族がいないのであれば、生命保険は必ずしも必要ありません。
ただし、自分に万一のことがあった時に、葬儀代等の面で肉親に迷惑をかけたくないのであれば、葬儀代を確保できる程度の額で生命保険に加入するのが有効です。
葬儀代がどのくらいになるかは地域差などがあり一概には言えませんが、全国平均でおよそ200万円程度かかります。
また、病気やケガで働けなくなるリスクに備え、所得補償保険や就業不能保険に加入しておくことをおすすめします。