2019
12/04
経済・マーケット

はじめに

iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAなど、以前と比べると投資が身近に感じられるようになってきましたね。

国内にはさまざまな証券会社がありますが、なかでもネット証券は手数料が安価であることから投資初心者の方も取っつきやすく人気が高まっています。

そんなネット証券会社の1つであるSBI証券(SBIホールディングス)ですが、2019年10月30日に催された決算発表会にて、CEOである北尾吉孝氏が「3ヶ年計画で、SBIグループ内の証券関連事業会社で手数料の完全無料化を目指す」ことを発表しました。

本記事では、SBIホールディングスがこのような方針を決定した背景や、3ヶ年計画の詳細についてご説明していきます。

手数料完全無料化の背景

まずは、SBIホールディングスが手数料の完全無料化にを目指す背景についてです。

それは、アメリカの証券会社が手数料完全無料化をすでにスタートしていることにあると思われます。

発端となったのはFintech企業の「ロビンフッド」です。2013年に設立されたロビンフッドは、株やETFなどにかかる売買手数料が無料の投資アプリを提供し始めました。

アプリはとくに株式投資初心者や若者からの需要が大きく、同社は投資家からの企業評価も非常に高いため、時価総額は2019年7月22日時点で76億ドル(約8,200億円)にも上っています。

このロビンフッドのインパクトはアメリカの他証券会社にとっても非常に大きく、2019年9月末には証券会社のインタラクティブ・ブローカーズ、10月上旬にはチャールズ・シュワブが売買手数料の無料サービスを始めました。

以上のようなアメリカの証券会社が手数料を無料にする動きを受けて、SBIホールディングスも手数料無料を発表したようです。

また、理由はこれだけではなくSBIホールディングス内のSBI証券は、本来証券会社が収益源としている売買手数料に依存しないような事業基盤を確立できているという点が挙げられます。つまり、SBI証券では収益源の多様化が進んでいるのです。

ちなみに上記でご紹介したアプリを提供するロビンフッドは、月額6~15ドルの会費が発生するプレミアプランを設けています。

そのプランには口座残高の最大2倍までの信用取引が可能になったり投資資金を口座に入金した後の確認機関が不要になったりとトレーダーにとってはメリットがあるため、会費を払う方も少なくありません。

そのため、ロビンフッドは有料プランの会費が主な収益源となっています。このように、売買手数料を無料にする証券会社は、売買手数料に依存しないビジネスモデルを確立している必要があることがわかります。

図1 SBI証券プレゼンテーション資料

(https://www.sbigroup.co.jp/investors/library/presentation/pdf/presen191030.pdf)より

当サイトにて作成

図1は、2019年3月期上半期と1年後の2020年3月期上半期の売上構成比のグラフです。

トレーディング収益が大きく増加しており、業績を支えていることが読み取れるかと思います。トレーディング収益とは、暗号資産取引や外貨建債券に係る収益のことです。

ほかにもIPO引受金(引受社数1位)やM&Aアドバイザリーなどによって、ホールセール部門が大きな収益を上げています。

一方で売買手数料は減少していますよね。

ただし売上高自体は8.7%増加しているため、売買手数料に依存していない事業基盤がしっかりと確立されていることがわかりますね。

このような点も、SBIホールディングスが売買手数料を無料化に踏み切ることができる背景といえるでしょう。

以上、SBIホールディングスが売買手数料完全無料化を目指す背景について主な2つをご紹介しました。

SBIホールディングスが目論む3ヶ年計画

次に、SBIホールディングスが予定している3ヶ年計画について、詳細をご紹介していきます。

SBIホールディングスは「ネオ証券化」なるものを推進しています。ネオ証券化とは、“売買手数料やトレーダーがこれまで負担していた一部費用の無料化を図る”ことをいうようです。

SBIホールディングスが目指すネオ証券化への道のりは、大きく3つに分けることができるようです。

ホールセール部門のリテールビジネスをさらに向上させる
上記でも触れましたが、SBI証券ではホールセール部門の収益が売上高に大きく貢献しています。

ホールセール部門がおこなうリテールビジネスの販促活動を強め、新規顧客の獲得に力を入れる方針のようです。とくに強化すべきはiDeCoやNISAとしています。

事業基盤を広げる

ネオ証券化を実現させるには、なんといっても売買手数料に依存しない事業基盤の確立が必要になります。

IPO引受やM&Aアドバイザリーだけではなく、中小企業のマッチングサービスに特化した「TRANBI」と連携した中小企業経営者の事業承継支援や、国内外の機関投資家向けの株式・投資信託の営業販売を強化していく方針のようです。

【車の両輪】収益力向上とコスト削減

ネオ証券化の実現はもちろん、実現したあと継続していくためには、収益力向上とコスト削減は必要不可欠です。

狙いとする収益には、信用取引拡大による金利収入の増加や機関投資家向けのレンディング事業拡大による営業者報酬があるようです。

一方でコスト削減策には、AIなどの最先端技術取り込みやブロックチェーン活用などが挙げられます。

以上が3ヶ年計画の道のりです。この計画は予想通りに進んでいくのでしょうか?

まとめ

本記事では、SBIホールディングスの売買手数料完全無料化について解説してきました。

証券会社の収益源だと思われていた売買手数料に依存しない証券会社は日本にも誕生するのでしょうか?今後の動きに注目しましょう!

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者3万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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