2019
07/31
経済・マーケット

はじめに

仮想通貨業界で今、最も勢いのある資金調達手段でIEO(Initial Exchange Offering)というものがあります。

2016年から2018年頃だとICO(Initial Coin Offering)と呼ばれる独自トークンを発行した企業側とそれを投資対象として買っている投資家がこれまでの株式や社債とは違った形で仲介業者を介在させない資金調達手段として注目を浴びてきました。

ちなみに、ICOによる資金調達は2016年以降で合計290億ドルに達しました。

しかし、今年に入っていからはICOの不正取り締まり強化による下火傾向も相まってIEOという資金調達手段が脚光を浴びています。

そこで今回は、「IEOとは何か」をポイントにICOとの違いとともにご説明していきます。

ICOとは

ICOとは企業自らが実施する資金調達で、通貨発行のコストを自社で負担し、ウェブサイト上で通貨を販売します。

ICOによる資金調達は16年以降で合計290億ドルに達したが、米証券取引委員会(SEC)を筆頭に規制当局が不正取り締まりに乗り出したため、今年は急減速しています。


(図1)

図1より、2018年のICO件数は莫大ですが、今年に入り急激に下火になり、むしろIEOの件数が圧倒的に伸びています。

ICOのデメリット

このようにICOが縮小した理由は、米証券取引委員会(SEC)が、メッセンジャーアプリなどの開発を手がけるKikを証券法違反として訴訟したという規制強化による影響もあります。

しかし、ICO縮小の要因はそれだけではなく、例えば「企業側が投資家に直接アプローチしなければいけない」ことや、「トークンを引き渡す相手(投資家)の信頼性」、「ICO完了後の取引所への未上場」が当初から懸念されていました。

IEOとは

IEOではICOでのデメリットを解消すべく仮想通貨取引所という仲介業者を企業と投資家の間に介在させることで、手数料こそ収益源として取りますがより利便性の高いシステムへとICOを進化させました。

IEOはいわば従来の証券ビジネスと同様のもので仮想通貨による資金調達に証券会社のビジネスを応用しただけのものです。

ICOの懸案を克服したとみられるIEOはどのような仕組みなのでしょうか。

1)投資家に的確にアピールできる

ICOでは企業が投資家に直接アピールしていかなければならないため、ここに多くの労力を費やす必要が出てきます。

一方、IEOでは取引所にプロジェクトが掲載されるため、すでに取引所を利用しているユーザーに直接アピールできます。
例えばBinanceは1,000万人を超えるアクティブユーザーを抱えており、同取引所でIEOを行えば簡単にこの1,000万人にリーチできます。

2)コスト削減

IEOでは取引所に支払う手数料は発生しますが、ICOのような投資家に直接アピールするための労力や支出は必要ないため、その分をプロジェクトの開発や運営体制の強化などに充てることが可能になります。

3)取引所がプロジェクトの審査を行なう
取引所はプロジェクトチームからIEOの申請を受け取った後、内容を精査します。これにより、企業のIEOについて投資家に対して信頼を担保することができるのです(中身がないプロジェクトはこの段階で欠格になります)。

4)IEO後取引所へ上場されやすい

ICOでは投資家に対して売り出された後、取引所にそのまま上場されるなんてことはありませんでした。

しかし、IEOでは大手仮想通貨取引所で行われることが多く、トークンを売り出した後にはその取引所に上場される可能性も高いため将来性という点ではICOよりも優位性が高いです。

5)企業と投資家双方への信頼性の担保が可能

IEOでは資金力と信頼性を持ち合わせた取引所が仲介役としてプロジェクトチームと投資家の間に入るため、厳格な資金管理が行われ持ち逃げなどのリスクを大幅に減らすことができます。

IEOの今後

米ファイルシェアリング会社ビットトレントは、バイナンス・ローンチパッドにおいて14分間で700万ドルを調達し、同社を1億2000万ドルで買収したTRONの創業者、ジャスティン・サンCEOは「IEOはわれわれのような者に役立つ。わが社にはコンプライアンス(法令順守)をやっている時間が無いからだ」と語りました。

このように企業側からのIEO需要が高まってきています。

仮想通貨調査会社コインスケジュールによると、今年のIEO調達総額は現時点で15億ドルに上りました。これに対してICOは8億3600万ドルにとどまっています。

仮想通貨取引所の運営各社にロイターが取材したところ、現在ベンチャー企業数百社がIEOに向けて待機しており、処理し切れない規模だという。

IEOはICOのデメリットを克服した新時代の資金調達方法です。それは、従来の証券ビジネスをICOに落とし込んだもので、いわばIEOは「ICOの仲介業」と言えるでしょう。

取引所は手数料収入を受け取り、企業は信頼性・流動性の確保と取引所のユーザーへの容易なアクセスができます。投資家も信頼性・流動性の確保と投資対象の拡充、相場安定の機会が得られます。

恐らく、このような機動的な資金調達方法はかなり需要が高まり、従来の株式や債券は姿を消すかもしれません。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者3万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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