目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「2026年夏以降の米ドル債券最新投資戦略【後編】」です。
当メディアでは、定期的に米ドル債券の投資環境、利回り、為替動向、そして投資戦略についてお伝えしています。前編では「米ドル債券利回りの現状と見通し」および「米ドル円の現状と見通し」を解説しました。後編となる今回は「2026年夏以降の米ドル債券投資戦略」と「米ドル債券ポートフォリオ最新設計例」を取り上げます。
前編はこちらから
本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の推奨や投資成果を保証するものではありません。実際の投資判断にあたっては、ご自身の資産状況やリスク許容度を踏まえた慎重な検討が必要です。
2026年夏以降の米ドル債券投資戦略
2026年夏以降の米ドル債券投資における具体的な戦略ポイントは、以下の4点です。
ポイント1)平均債券格付けA台で平均利回り5%前半目指す
これは債券ポートフォリオ全体で運用した際の平均債券格付けと利回りの目標基準となります。通常、世の中全体の債券利回りが低い時期であれば、平均利回り5%前半を目指そうとすると平均格付けがBBB台まで下がってしまうことが多く見られます。しかし、現在のように世の中全体の利回りが高い環境であれば、平均格付けA台に保ったまま平均利回り5%前半を目指すことは難しくはないと考えます。信用力と収益性のバランスを取るうえで、この基準を目標として設定することが重要であると考えられます。
ポイント2)残存期間10年以内の銘柄は低格付け債と劣後債で利回りを底上げ
現在、米国10年国債の利回りは高水準にありますが、政策金利自体はまだ上昇していないため、10年以内といった残存期間の短い米ドル債券の利回りは相対的に低い状態にとどまっています。そのため、ポートフォリオを構築する際に残存期間10年以内の銘柄ばかりを選択すると、全体の平均利回りが押し下げられてしまう要因となります。
この課題に対応するため、残存期間10年以内の債券については、BB台以下の低格付け債や、発行体破綻時の弁済順位が低い劣後債を活用し、ポートフォリオ全体の平均利回りを底上げする手法も考えられます。
ただし、劣後債は普通社債より弁済順位が低く、発行体の信用状況が悪化した場合には損失が大きくなる可能性があります。
ポイント3)残存期間10年以上はA台以上の高格付け債で信用力強化
残存期間10年以内の債券に低格付け債や劣後債を活用すると信用リスクが大きくなりますが、これを補うのが長期債の役割です。残存期間が長い債券ほど長期間のリスクをとることになるため、格付けを高く設定した方が望ましいと考えています。
したがって、10年以上の長期で保有する債券については、目安としてA台以上の高格付け債券を選定し、ポートフォリオ全体の信用力をしっかりと強化するのが効果的といえるでしょう。
ポイント4)残存期間20年以上の銘柄を増やし、平均残存期間を長期化
残存期間20年以上と聞くと期間が長すぎると感じられるかもしれませんが、現在の米国10年国債利回り4.5%超(足元では4.7%前後)という水準は、過去のチャートと比較しても高めの利回りと言えるのではないでしょうか。このような条件の利回りを5年や10年といった短期間で終わらせるのではなく、中長期にわたって固定化することが資産効率の観点からは重要な考え方だと思います。
現在の金利状況を踏まえると、残存期間はある程度長い方が望ましいと考えられるため、20年超の長期債や超長期債もポートフォリオに組み入れ、平均残存期間を長期化する方法も選択肢の一つと考えられます。
米ドル債券ポートフォリオ最新設計例(2026年7月)
前述の投資戦略を踏まえ、2026年7月現在の最新条件に基づいて作成した米ドル債券ポートフォリオの最新設計例について解説します。
.png)
今回の設計例は全20銘柄の債券で構成されており、しっかりと分散を図ったポートフォリオとなっています。
業種・国
金融機関、保険会社、IT、自動車、娯楽など多岐にわたる業種に分散されています。発行体の国籍については、米国の発行体が大きな割合を占めています。
債券種類
普通社債が中心ですが、一部に期限付き劣後債が含まれています。戦略通り、残存期間が短い債券は期限付き劣後債で対応し、利回りを底上げする設計としています。
通貨・投資金額・保有比率
通貨は米ドルで、投資金額は全20銘柄にそれぞれ2,500万円ずつ配分しており、合計5億円のポートフォリオを想定しています。1銘柄あたりの保有比率は5%となり、高い分散効果が得られていることが確認できます。
残存期間
3年~10年といった残存期間が短い債券に加え、10年超の債券も数多く組み込んでいます。さらに、前述の戦略でお伝えした通り20年以上の超長期債(21年、23年、25年、26年、27年)や、30年以上の債券も3銘柄ほどポートフォリオに含めています。
ポートフォリオ全体の平均残存期間は18.2年です。
債券格付け
残存期間10年以内の短い債券はBBB台や、BB台・B台といった低格付け債を一部組み込んでいます。これはリスク許容度が高く、多数の銘柄への分散投資が可能な投資家を前提としていますので、全ての投資家に適した銘柄及びポートフォリオというわけではありませんので、ご注意ください。
一方で、残存期間10年超の長期の債券については、原則としてA台以上の高格付け債券を中心に構成しています。一部BBBも含まれますが、大部分がA台以上であり、中にはAA台やAAA台の債券も含まれます。ポートフォリオ全体の平均格付けは「A-」となり、日本のメガバンクの格付け(外資系格付け)と同等クラスといえるでしょう。
利回り
全体を見渡すと利回り5.0%〜5.5%前後の債券が中心となっており、一部には4%台の債券も組み合わされています。ポートフォリオ全体の平均利回りは5.4%となります。
このポートフォリオは、平均格付けA-という高い信用力を保ちながら、平均利回り5.4%を目指すものであり、戦略に則った内容となっています。また、残存期間20年以上の銘柄も組み込むことで、平均残存期間18.2年という長期間の固定運用を目指す設計例となりました。
米ドル債券ポートフォリオ設計例ポイント
このポートフォリオ設計例における主なポイントは以下の4点です。
ポイント1)平均利回り5.4%(米国10年国債上乗せ+0.7%)
米国10年国債利回り4.7%に対して+0.7%の上乗せ利回りが期待できるポートフォリオを構築していると考えます。複数社債への分散投資により、収益性としては大きいといえるでしょう。
ポイント2)平均債券格付けA-(日本のメガバンク相当)
日本のメガバンクと同等の格付け(外資系格付け)といえ、債券運用において一定の安全性を確保できていると考えられます。
ポイント3)平均残存期間18.2年
長期債を積極的に組み入れることで+8年の18.2年と長めの平均残存期間になっています。
ポイント4)相対的に高利回りの高格付け米国IT企業などの長期債を活用
残存期間が20年台や30年台の債券で、AA台以上の高格付けでありながら5.5%〜5.8%といった高利回りの銘柄が存在します。格付けに対して利回りが比較的割安な債券をポートフォリオに数銘柄組み込むことで、全体の平均利回りの向上に寄与しています。
2026年夏以降の米ドル債券最新投資戦略【後編】まとめ
最後に、「2026年夏以降の米ドル債券最新投資戦略【後編】」のポイントをまとめます。
ポイント1)米国10年国債利回り4.5%超は投資チャンス
前編で確認した過去5年間のチャートの通り、利回り4.7%前後という足元の水準は、過去5年間では相対的に高い水準にあります。現在の市場がこのような状況であることを認識し、投資判断に役立てていただくことが推奨されます。
ポイント2)円高が進む要因は乏しく、米ドルと米金利の連動性が復活
為替介入が行われても円高に振れにくく構造的な円高要因が少ない一方で、米ドルと米国金利の相関関係が復活している点に着目する必要があります。足元では円安要因が意識されやすい環境にあると考えています。
また、米ドルと米金利の連動性は復活しています。米ドルが上昇すれば米債券利回りも上がり、反対に米ドルが下落すれば米債券利回りも下がる傾向があるため、為替のタイミングだけを測る合理性は低くなっています。
つまり、為替にとって有利なときは利回りにとっては不利になりやすく、逆もまた然りであるため、どのタイミングでアプローチしても、経済効果に極端な差は生じにくいといえます。為替のタイミングを待ち続けるよりも、早い段階で投資を実行して利息収入を得ていくアプローチが有効と考えられます。
ポイント3)平均債券格付けA台で平均利回り5%前半を目指す
現在の市場環境において債券ポートフォリオを構築する際の、信用力と収益性の双方を満たす適切な目標基準となります。
ポイント4)平均残存期間を長くし、高利回りを長期間享受
現在の利回りは過去5年間との比較では相対的に高い水準であると考えるため、債券ポートフォリオを構築する際は、残存期間20年前後や20年超の長期債・超長期債を組み入れ、平均残存期間を長めに設定して高い利回りを長く享受する戦略が基本的な考え方の一つといえるでしょう。
本日は「2026年夏以降の米ドル債券最新投資戦略【後編】」という内容でお届けしました。
富裕層の方々を取り巻く資産運用環境は日々変化しています。ご自身の資産状況やポートフォリオに合わせた最適な米ドル債券の選定、具体的な運用シミュレーションにつきましては、ぜひウェルス・パートナーまでお気軽にご相談ください。
