目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「外資系IT上場会社勤務の自社株富裕層40代男性・7億円の資産運用相談実例」です。
近年、外資系ITの上場企業に勤務されている方からの資産運用のご相談が増えています。例えば、最近上場したSpaceX社などは時価総額が数百兆円と、日本の企業では考えられないような規模になっています。
こうした外資系企業の日本法人にお勤めの方は、報酬の対価として自社株を受け取ったり、ストックオプションを保有したりすることで、総額10億円規模に達するケースが珍しくありません。今回は、外資系IT上場企業に勤務し、多額の自社株を保有する40代後半男性の実例をもとに、その資産状況や具体的な再配分のシミュレーションとその効果について詳しく解説します。
本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の推奨や投資成果を保証するものではありません。実際の投資判断にあたっては、ご自身の資産状況やリスク許容度を踏まえた慎重な検討が必要です。
外資系IT上場会社勤務の自社株富裕層40代男性・7億円の資産運用相談実例
資産配分(当初)
まずは、今回のご相談者の基本情報と資産状況、ご要望を見ていきます。
ご相談者の基本情報
40代後半の男性で、家族構成は妻・長男・次男の4人家族、外資系IT上場企業(日本法人)に勤務で、年収は2,700万円です。東京都内に国内不動産(ご自宅)を保有しています。
当初の資産配分
金融資産において非常に特徴的なのは先進国株式であり、その額は9億5,000万円に上ります。そして、この全てが勤務先の自社株でした。その他の資産としては、日本株式や日本債券、現預金と、国内不動産(自宅:1億8,000万円/住宅ローン残高5,000万円)、および金ETF(コモディティ金)を1,000万円保有している状況です。

全体のバランス
ご相談者の当初の資産バランスには、外資系IT企業勤務の方特有の顕著な偏りが見られました。株式比率が95.8%、外貨比率が84.9%と、かなり株式と外貨に偏った資産配分になっています。
ご要望
この方のご要望は、主に以下の4つです。
1つ目は「自社株に偏った資産配分を見直したい」です。外貨や株式に偏っていること、そしてその中でも特定の1社の上場企業のリスク(会社のリスク)を取りすぎているという意識をお持ちでした。そのため、自社株に偏った配分を見直し、最適な資産配分にしたいというご要望です。
2つ目は「退職に備え、現在の報酬と同等の税引後収入がほしい」です。
この方はまだお若いのですが、お子様が小さいということもあり、早めに退職して子育てに専念したい、いわゆる「プチFIRE」のような生活を希望していました。仕事をする可能性はあるものの、今は子育てに集中したいため、1年~2年後といった近い将来の退職を想定し、現在の報酬と同等の手取り収入が欲しいというご要望です。
3つ目は「退職前が有利なら国内不動産の借入を実行したい」です。
この方は、退職するとご自身の信用や収入の証明がなくなるため、銀行からの借入がしづらくなるのではないかという認識をお持ちでした。それならば、国内不動産投資を有利に進めるために、会社に勤めているうちに借入を実行したいというご要望です。
4つ目は「自社株の1億円分だけは売却せず残したい」です。
自社株に偏っているのが課題というものの、やはり会社に対する思い入れを強くお持ちでした。そのため、9億5,000万円の自社株のうち、1億円分だけは売却せずに残して持っておきたいというご要望です。
自社株売却後の資産配分
資産運用を始める前に、まずは自社株を売却するのが最初のステップとなります。ご要望どおり1億円分の自社株を残し、残りの8億5,000万円分を売却しました。こちらが自社株売却後の資産配分です。

減少させる資産
先進国株式(自社株):8億5,000万円
増加させる資産
この売却によって大幅な利益が出るので、それに対する税金(譲渡益税など)1億4,000万円を差し引いた7億1,000万円が、外貨建ての現預金として入ります。
資産配分(再配分後)
7億1,000万円の現預金を使用し、次のように資産運用の再配分(リバランス)を行いました。

金融資産への再配分
日本株式に4,000万円、先進国株式に3,000万円、新興国株式に3,000万円投資しています。先進国株式については、自社株を元々1億円分保有しているので、増やしすぎないようにかなり抑えていますが、3,000万円程度は増やした方がいいと判断しました。
次に、日本債券に6,000万円、先進国債券に3億6,000万円、債券の合計投資額は4億2,000万円となります。そして、外国REITに2,000万円、オルタナティブに4,000万円という配分になりました。
実物資産への再配分
国内不動産に4億7,000万円、こちらは都内の一棟RCマンションで、好立地の物件です。この方のご要望どおり、会社に勤務中の方が有利に組めるということで国内ローンを活用し、銀行から3億5,000万円を借入しました。借入比率は70%前半と比較的高く保ちつつ、それなりにいい条件で借入ができたといえます。
そして、コモディティ金に500万円、コモディティその他に500万円という再配分を実行しています。
再配分による投資効果
この再配分を行ったことによる具体的な投資効果について、「リスク分散」「資産成長」「インカムゲイン」の観点から見ていきます。
リスク分散の観点
当初の状態と再配分後の状態を比較すると、資産配分の重要な比率がどのように変化したかがわかります。

借入比率(投資効率)
元々は住宅ローンだけで104%でしたが、新たに3億5,000万円の借入をしたことによって140%へと高まっています。ただ、高すぎるわけではなく、ご相談者の40代後半という年齢やリスク許容度などを勘案しても十分に保守的な範囲内であり、ちょうどいい比率といえるでしょう。
実物資産比率
元々は16%とかなり低かったのですが、不動産がかなり増えたので48%となり、金融資産と実物資産の割合はほぼ「フィフティ・フィフティ(半分ずつ)」のバランスに整えられました。
外貨比率
元々は自社株の割合が大きかったため84%と非常に高く、外貨に偏っていましたが、円建て資産を増やすことで比率を大きく落とし、60%まで下げることができています。一部自社株を残すという前提があるため、ニュートラルに配分しても外貨比率は高めになりやすい傾向があります。そのため、国内不動産や日本債券などを意識的に増やすことによって、外貨比率をできるだけ低く抑える工夫をしています。全体の6割が外貨、4割が円というバランスであれば、許容範囲といえるでしょう。
株式・債券比率
株式の比率は95%から28%へと大幅に減少しています。自社株を売却したためこのような結果となりますが、28%は残しているため、低すぎるわけではありません。
一方で、元々は1%とほとんど保有していなかった債券比率が59%へと増加しています。株式と債券の比率は概ね1対2で、債券の割合の方が大きくなっています。これにより、守り中心でありながらも完全に守り一辺倒ではなく、資産成長やインフレ対策も十分に意識した配分を目指しています。ご相談者の年齢も40代後半ですし、ある程度はリスクを取ってもいいと考えました。
資産成長の観点
今回の運用における純資産の年間期待成長率は、おそらくプラス6%以上はあると考えられます。現在の日本の物価上昇率は直近5年ほどを見るとプラス2%~3%程度ですので、それを上回るような期待成長率を想定したポートフォリオといえるでしょう。このように、しっかりとリスク分散をしたうえで、資産成長を目指していくアプローチとなっています。
インカムゲインの観点
ご相談者は早期退職を目指しており、退職後は資産運用による収入での生活を希望しています。そこで、現役時代と同等程度の手取り収入を確保するという目標が達成できているかを確認してみましょう。

金融資産からの年間税引前インカムゲイン収入(想定)
・債券利息:4億2,000万円(日本債券+先進国債券)× 利回り4.5% = 年間1,890万円
・外国REITの収入:2,000万円×利回り3.5% = 年間70万円
実物資産(国内不動産)からの年間税引前インカムゲイン収入(想定)
・実質賃料:4億7,000万円 × 実質利回り3.8% = 1,786万円
・年間ローン返済額(元利均等):1,327万円
・年間キャッシュフロー:1,786万円 − 1,327万円 = 年間459万円
年間税引前合計キャッシュフロー(試算)
金融資産と不動産からの収入を合算すると、年間の税引前合計キャッシュフローは約2,419万円となります。税金を仮に20%と想定すると、税引後の年間手取り収入は約1,935万円となります。
ご相談者の現在の収入は額面で2,700万円です。額面ベースで見ると投資のインカムゲインによるキャッシュフローよりも多いのですが、給料に対する税金は非常に高いため、税引後の手取り収入で見ると現在は1,700万円程度となります。
つまり、手取りベースで比較すると、実は今回のシミュレーションによるインカムゲイン(1,935万円)の方が多くなり、想定される税引後収入は200万円強上回る試算となります。現在の手取りよりも一定のゆとりを持った形で、退職後の収入を設計することができていると考えられます。
まとめ
最後に、今回のテーマである「外資系IT上場会社勤務の自社株富裕層40代男性・7億円の資産運用相談実例」を4つにまとめます。
ポイント1)課題は外貨・株式・特定銘柄へのリスク偏重の解消
こういった属性の方々の課題として共通しているのは、「外貨」「株式」そして「特定の銘柄」へのリスク偏重が最も大きな課題になりやすいという点です。資産運用を見直す際には、この3つのリスク集中をいかに解消するかが、一つの重要なポイントになるでしょう。
ポイント2)基本方針は自社株売却からその他資産へのシフト
課題の主な原因は自社株への過度な偏りであるケースが多いため、自社株を売却し、その売却代金によって他の資産へとリバランス(資産シフト)していくことが、有効な解決策となるでしょう。
ポイント3)自社株を残す場合は外貨比率を抑える工夫が必要
今回の実例のように、一部の自社株を残しておきたいという方は少なくありません。これまでお世話になった会社への思い入れや、今後の株価上昇への期待などがあるため、希望する方は一定数いらっしゃいます。
その場合に考慮したいのは、自社株を残すと外貨比率が必然的に高くなる点です。そのため、今回の実例のように国内不動産の割合を多くしたり、債券の中に日本債券(円建て債券)を入れたりするなどして、外貨比率をできるだけ低く抑えていく工夫が必要となるでしょう。
ポイント4)不動産投資の融資利用は退職前に実行する
会社に勤めているかどうかで、銀行からの信用や審査・融資の条件は驚くほど変わることがあります。(銀行によって基準は異なります)。今回の実例のように借入比率を高め(70%〜80%など)にして、物件金額に対してたくさん借入したいという場合は、銀行側は勤務先や確定申告ベースの毎年の収入を重視する傾向があります。そのため、退職する前に借入を行い、不動産投資を実行しておくことも、有力な選択肢の一つになるでしょう。
本日は「外資系IT上場会社勤務の自社株富裕層40代男性・7億円の資産運用相談実例」という内容でお届けしました。
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