皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「円安は続くのか?為替介入で注目を集めるドル円相場を読む」です。
ニュースや新聞などのメディアでも広く報じられているとおり、現在の日本円は主要国通貨と比較して「世界最弱」といわれることがあります。一方で、政府・日銀による為替介入の影響もあり、一定程度円安の進行が抑えられていることから、「今こそ円を売ってドルを買うチャンスなのでは?」というご質問を多くいただきます。
本記事では、米ドル円の現状や為替介入の状況、そして私自身が今の円売り・ドル買いのタイミングをどう考えているのかについて解説します。
本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の推奨や投資成果を保証するものではありません。
実際の投資判断にあたっては、ご自身の資産状況やリスク許容度を踏まえた慎重な検討が必要です。
目次
米ドル円の推移と円買い介入の経緯(過去5年)
まずは、ドル円の直近の状況と、これまでの円買い介入(ドルを売って円を買うことで円高に誘導する為替介入)について、過去5年の動向を振り返ります。
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2026年6月5日現在のドル円相場は160円前後で推移しています。この160円という水準は、為替介入のラインとして市場で強く意識されているため、相場がその周辺でもみ合う展開が続いています。
過去5年を振り返ると、主に以下の4回のタイミングで大規模な円買い介入が実施されたとされています。2026年4月(約2ヶ月前):160円を超えたタイミングで、約5兆円規模の介入を実施
- 2024年7月:同様に160円超のタイミングで、約5.5兆円規模の介入を実施
- 2024年4月〜5月:累計で約9.7兆円の介入を実施
- 2022年9月〜10月:累計で約9.1兆円の介入を実施
これらを見ると、2022年や2024年の介入後はかなり円高が進みました。ただし、これは介入だけによるものではなく、米国経済の悪化や米金利低下といった「世界経済の流れ」と時期的に重なった影響が大きいと考えられます。
一方、直近の2026年4月の介入後は、これまでとはやや異なる様相を呈しています。介入直後は156円〜157円台まで円高が進んだものの、わずか2ヶ月で160円まで押し戻される結果となりました。
こうした動きが意味することは何でしょうか。この介入は政府・日銀のメッセージとしては伝わりますが、要するに、「為替介入そのものがドル円の大きなトレンドを変える力を持っているわけではない」という点です。
為替レートの主たる方向性を決定づけるのは、経済の流れや金利動向で決まっているといっても過言ではありません。したがって、この円買い介入は、円安を止める「一時しのぎ」にしかなっていないといえるのではないでしょうか。
為替介入の本当の役割は、一つの「心理的な節目」を作ることにあるとも考えられます。「160円を超えると介入の可能性が高まる」という市場の意識が、投資家の過度な円売り・ドル買いを抑制する心理的な要因として機能している側面はあるでしょう。
仮にこの為替介入が行われていなければ、ドル円水準は170円や180円台といった、さらなる円安水準に達していた可能性を指摘する見方もあります。本来の円の実力であれば、それが妥当な水準かもしれません。そうした観点から見れば、現在は、政府・日銀が160円前後に無理やり抑えてくれている状況と解釈することもできます。
これは見方を変えれば、本来の実力よりも「円が割高な水準に据え置かれている」とも捉えられます。外貨建て資産へのシフトを検討している方にとっては、一つの判断材料になり得る状況といえるでしょう。
各国の政策金利からインフレ率を引いた実質金利(2026年5月)
そもそも、なぜ円がこれほどまで売られるのでしょうか。その根本的な理由として、各国の「実質金利の差」が挙げられます。以下は、各国の政策金利からインフレ率を差し引いた実質金利のデータです(2026年5月時点)。
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政策金利が高ければ高いほど、その通貨の魅力は高く評価され、買われる傾向にあるといわれています。しかし実際には、インフレ率の分だけ通貨の価値が実質的に目減りするため、政策金利からインフレ率を差し引いた「実質金利=真水の金利」こそが、通貨の本当の魅力を測る物差しとなります。表面上の金利だけでなく、インフレ率を差し引いた実質金利が重要なのです。
2026年5月時点の主要先進国のデータを比較して見ていきましょう。まずイギリスは政策金利3.75%からインフレ率2.8%を引いた実質金利が約0.95%、米国は政策金利3.63%からインフレ率3.3%を引いた実質金利が約0.33%と、英米はプラス圏を維持しています。一方、オーストラリアは約−0.25%、カナダは約−0.55%、スイスは約−0.6%、ユーロ圏は約−1.0%と、マイナス圏に沈んでいます。
そして我が国・日本はというと、政策金利は0.75%と低い水準ながらもインフレ率が2.8%と高いため、実質金利は−2.05%と主要先進国の中で突出したマイナスになっています。他のマイナス国と比べても、その落ち込みの深さは一目瞭然です。
これだけ実質金利が低い通貨を、誰が積極的に保有したいと思うでしょうか。銀行に預金をすれば金利が0.75%ついたとしても、インフレによって毎年2.8%ずつ価値が失われていくのですから、実質的には年間2%超のマイナスが続く計算になります。主要先進国の中でこれほど実質金利が低い国は他になく、これこそが、円が売られ続けている根本的な理由の一つと考えられます。
実質実効為替レートの推移(日本・米国・ユーロ圏・中国)
さらに、「実質実効為替レート」の各国のデータも確認しておきましょう。実質実効為替レートとは、各国の物価や購買力を考慮した、通貨の総合的な実力を示す指標です。昨今のニュースや新聞等で、日本円は、この実質実効為替レートが世界で最も低い水準となっているため、「世界最弱通貨」といわれている一つの根拠となっています。
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こちらは1970年から2025年までの推移を表したチャートで、青色がユーロ圏、緑色が米国、灰色が中国、赤色が日本です。2010年を100として、それを基準にどのように上下したかという観点で比較していきましょう。
各国の推移を比較すると、米国・ユーロ圏・中国はいずれも上昇傾向にある一方、日本だけが一貫して下落しています。下落が特に顕著になったのは2013年、日銀の異次元緩和が開始されたタイミングです。その後もコロナ禍における量的緩和などが重なり、円の実力は年々低下していきました。先進国はおろか、新興国通貨と比較してもかなり低い水準となっています。これがメディア等で日本円が「世界最弱通貨」といわれる一つの論拠といえます。
まとめ
最後に、今回のテーマである「円安は続くのか?為替介入で注目を集めるドル円相場を読む」を4つにまとめます。
ポイント1)今の円はトルコリラにも見劣りする世界最弱通貨
実質実効為替レートのベースで見ると、直近5年〜10年の推移においては、トルコリラよりも円の実力が低い局面があります。「世界最弱通貨」という表現は決して過言ではないでしょう。
ポイント2)日本は各国より実質金利が低く、通貨としての魅力が低い
政策金利は上昇傾向にあるものの、インフレ率を差し引いた実質金利は−2%超です。これほど実質金利の低い主要先進国は他になく、円が売られ続ける根本的な理由と考えられます。
ポイント3)米ドル円は為替介入によって160円前後をなんとか維持
円買い介入がなかった場合、つまり心理的な節目がなかったとして、ドル円相場はさらに170円〜180円、場合によっては200円と円安方向に進んでいた可能性を指摘する見方もあります。しかし、政府・日銀の為替介入により160円台に抑えられており、円安の進行に一定の急ブレーキがかかっている状態といえます。
ポイント4)為替介入によるドル円相場を、外貨分散の機会と捉える
為替介入がなければ、本来の実力としては、さらなる円安が進行してもおかしくなかったでしょう。その円は、政府・日銀の政策により160円前後に抑制されている状況です。つまり今の円は実力よりも割高な状態にあるため、外貨資産への分散投資を検討する一つのタイミングと考えることもできるでしょう。
為替介入によって円高水準に抑えられているタイミングを活用し、円を売って外貨資産へシフトしていく戦略は、今の状況を踏まえると、十分に合理的な選択肢の一つになり得ると考えられます。
本日は「円安は続くのか?為替介入で注目を集めるドル円相場を読む」という内容でお届けしました。
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