2026
05/20
債券 米ドル債券 外国債券 円高

皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「米ドル債券投資の円高リスクを抑える4つの方法」です。

イラン戦争を背景に、米ドル債券の利回りが上昇しています。米ドル債券投資においては、現在は投資の好機と考えています。

一方で、米ドル円の為替水準も上昇(円安)しているため、これから投資する富裕層の方にとっては、投資後に円高に振れるという為替のマイナスリスクを懸念される方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、米ドル債券投資における円高リスクを中和・低減するための、実践的な4つの方法を解説します。

本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の推奨や投資成果を保証するものではありません。
実際の投資判断にあたっては、ご自身の資産状況やリスク許容度を踏まえた慎重な検討が必要です。

米ドル円の推移(過去5年)

まずは、今回のテーマに深く関わる米ドル円の推移について、過去5年のチャートを見ながら直近の状況を確認します。

2025年初頭からしばらくは円高が進み、一時は140円前後まで進みました。しかしその後は、約1年をかけてドル高・円安が優勢となり、2026年4月現在では159円前後、状況によっては160円台という水準で推移しています。

過去5年のチャートを振り返っても、この159円〜160円という水準は、2024年7月頃に一時的に記録した程度であり、出現頻度は高くありませんでした。そのため、債券の利回りが高くて魅力的な現在のタイミングで投資を検討していても、投資後に円高に振れて為替でマイナスが出ることをためらって投資に慎重になるのは、チャートの推移から見ても、当然のことといえるでしょう。

米ドル債券投資の円高リスクを抑える4つの方法

米ドル債券投資の円高リスクを抑える方法を4つにまとめました。

方法①:長期・高利回りで損益分岐点為替を円高に切り下げる

米ドル債券に投資する際は、償還までその債券を持ち切ることができれば、購入時の利回りが償還時に確定します。例えば、5年間の債券に投資して年間4%の利回りであれば、基本的に5年間は4%の利回りで運用し続けたことになるわけです。

つまり、投資から5年後にたとえ円高に振れたとしても、利回り分の利益があるため、ある程度円高による為替差損を吸収することができます。この「利回りで得た利益が、円高によるマイナスと相殺されてトントンになる為替水準」のことを損益分岐点為替といいます。

例えば、150円スタートで4%複利で10年間運用したとすると、損益分岐点為替は101円になります。為替が101円より円安の水準であれば、利回りと為替を合算したトータルで利益が出ており、101円より円高に振れていればトータルでマイナスになるという考え方です。したがって、損益分岐点為替をできるだけ円高方向に切り下げるほど、為替リスクは低減されます。

では、どのようにすれば切り下げられるのでしょうか。その方法はシンプルで、「できるだけ長く運用する」と「高い利回りで運用する」の2点に集約されます。

例えば、利回りを4%から5%に引き上げて10年運用した場合、損益分岐点為替は92円まで切り下がります。また、利回り4%のまま期間を20年にすると68円、さらに利回り5%で20年運用すると56円という水準まで切り下がります。ここまでの円高水準は現実的にはイメージしにくいかもしれません。

このように、できるだけ長く・高い利回りで運用するほど損益分岐点為替を円高方向に切り下げることができ、結果として円高リスクの低減につながります。円高リスクを重視する方ほど、運用期間をできるだけ長くイメージし、かつ、高い利回りで運用できるよう債券ポートフォリオの平均利回りを高める設計が重要になるといえるでしょう。

方法②:残存期間を長くし利回り低下時の価格上昇率を高める

方法①は、運用期間の最終時点でトータルとしてマイナスにならないのはいくらか、という損益分岐点為替の話でした。方法②は、時価評価、つまり運用途中のある時点での評価額の話です。例えば、10年の運用であっても、半年後・1年後といった時点で評価損益がマイナスにならないようにするにはどうすればよいか、という着眼点になります。

米ドル債券の時価評価は、債券価格と為替(投資時より円安か円高か)の掛け合わせによって決まります。今回の話は、投資時より円高になっているケースです。

一般的にドル安・円高になりやすいのは、米金利が下がって債券利回りが低下する局面です。債券利回りが低下すると、債券価格は上昇します。つまり、この債券価格の上昇を大きくすることで、円高による為替のマイナスを相殺できるというのが方法②の考え方です。

利回り低下時に債券価格をより上昇させるには、残存期間が長い債券を保有することが有効です。通常、ポートフォリオを組む際は、平均残存期間が10年前後になるケースが多いですが、あえて平均残存期間を20年、あるいはそれ以上に設定することで、利回り低下時の価格上昇率を高めることが可能になります。

例えば、円高による為替差損が20%の場合でも、債券価格も20%上昇すれば、時価評価ベースではほぼ相殺されることになります。このように、時価評価の観点から円高リスクをコントロールするには、「残存期間を長くして利回り低下時の価格上昇率を高める」という方法が有効となります。

方法③:投資時期を分散し、高値掴みのリスクを減らす

これは比較的理解しやすい方法です。ある一時点に全額を投資すると、その時点の為替水準のリスクを一点で負ってしまうことになります。例えば、5億円全額を159円のタイミングで投資した場合、159円というリスクをそのまま抱えることになるわけです。

これに対し、5ヶ月に分けて1億円ずつ投資する場合、投資タイミングを分散できるため、159円・155円・160円といった具合に為替水準を平均化することができます。これにより、特定の為替水準での高値掴みのリスクを抑える効果が期待できます。

ただし、投資期間を過度に長くしすぎると、その間は十分な利回りが得られなかったり少なくなったりするため、機会損失が生じる点には注意が必要です。このため、半年から1年程度を目安に投資時期を分散し、平均取得価格をならすことで高値掴みのリスクを減らすというのは、有効な方法の一つとなるでしょう。

特に現在は中東情勢の緊張などを背景に、足元では債券利回りが高止まりしており、この状態が当面は継続するだろうとの見方もあります。このような状況下では、投資時期の分散によって高値掴みリスクを減らすという方法が特に有効性が高いと考えられます。

方法④:外貨利子をすべて円転して、円資産として保有

最後は、債券から受け取る利子を円転していく方法です。債券投資をすると、各債券から半年ごとにドル建ての利子が入ってきます。この利子をドルのまま保有したり、米ドル建てのETFにしたりするケースが多く見られますが、円高リスクの低減という観点では、受け取った利子をその都度円転しておくという選択です。

例えば、平均5%の利回りで運用している場合、債券から年5%分のドル建ての利子が入ってきますが、それを全て円資産にしていくことで、中長期的に円高リスクを一部低減できると考えられます。この方法はドラスティックに円高リスクを削減する方法というよりは、あくまで中長期的に円高リスクを緩和する対策といえるでしょう。

まとめ

以上、円高リスクを抑える4つの方法をご紹介しました。いずれも有効なアプローチではありますが、「これさえやっておけば大丈夫」といえる万能策ではありません。為替の動向は誰にもわかりませんし、予測することも困難です。

大切なのは、これらの方法を有機的・複合的に組み合わせて実践することです。できるだけ長期で高利回りのポートフォリオを組みつつ、投資時期を分散し、入ってくる外貨利子は円転していくといった複合的な取り組みによって、トータルで円高リスクを低減させることができると考えます。どれか一つだけでなく、組み合わせて対策していくことが重要といえます。

本日は「米ドル債券投資の円高リスクを抑える4つの方法」という内容でお届けさせていただきました。
米ドル債券投資における円高リスクは、適切な設計と運用によってコントロールすることが可能です。ご自身の資産状況や目的に応じた最適なポートフォリオ設計についてお悩みの方は、ぜひウェルス・パートナーの無料相談をご活用ください。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者20万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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