2026
03/04
債券 投資戦略 ポートフォリオ 米ドル債券 利回り

皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「平均利回り『5%』以上を目指す米ドル債券ポートフォリオ最新戦略」です。

近年、米ドル建て債券の利回りは低下傾向が続いています。特に直近1~2年ほどを見ると、全体的に金利水準は緩やかに低下してきている状況です。そのような環境下において、「平均利回り5%以上」の米ドル債券ポートフォリオを構築することは、以前に比べて難易度が高まっています。

一方で、多くの富裕層にとって「5%」という水準はキリがよく、税引後の利回りで約4%を確保できるため、分かりやすく実用的な目標でもあります。そのため、現在でも多くの富裕層が、この水準を一つの基準として運用を行っています。

本記事では、金利低下局面においても平均利回り5%以上を達成するような、実践的な米ドル債券ポートフォリオ戦略について解説します。 
本記事でご紹介している内容は、あくまでも一例であり、すべての方に当てはまるものではありません。
資産状況や投資目的、リスク許容度によって最適な運用方法は異なります。

米国債イールドカーブ(現在vs1年前)

まず押さえておきたいのが、米国債のイールドカーブです。イールドカーブとは、残存期間ごとの米国債利回りが何%になっているかを示しているチャートで、期間ごとの利回りを一目で把握することができます。

こちらは、現在(青色)と1年前(緑色)の米国債イールドカーブを比較したチャートです。データを詳しく見ていきましょう。

026年1月時点と2025年1月時点を比較すると、20年・30年といった超長期の米国債利回りにほとんど変化は見られません。一方で、大きな変化が見られるのは、残存期間10年以下の債券です。具体的な数字を確認していきます。

まず、残存期間10年の米国債です。1年前の利回りは4.57%でしたが、現在は0.3%下がり、4.27%まで低下しています。次に期間7年を見ると、1年前は4.48%でしたが、現在は0.44%下がり、4.04%となっています。期間5年では、1年前の4.39%から3.83%へと下落し、低下幅は0.56%に広がっています。さらに期間3年では、1年前の4.32%から3.65%まで低下しており、0.67%の下落となっています。

このように見ていくと、残存期間が短くなるほど、1年前からの利回り低下幅が大きくなっていることがわかります。

では、なぜこのような現象が起きているのでしょうか。その背景にあるのは、アメリカの政策金利の引き下げです。アメリカは、昨年から一昨年にかけて、複数回にわたって利下げを実施してきました。政策金利の動向は、特に残存期間の短い債券ほど強く影響を受けます。政策金利が下がったため、期間が短い債券ほど、利回り低下幅が大きくなっているのです。

さらに、このような環境が、債券ポートフォリオにどのような影響を与えているのでしょうか。

一般的な債券運用では、短期から長期までをバランスよく組み合わせる「ラダー型」のポートフォリオを組むことが一般的です。現在、残存期間10年以内といった短い期間の債券利回りが大きく低下しているため、これらがポートフォリオ全体の利回りを押し下げる要因となっています。

その結果、ポートフォリオ全体で「平均利回り5%以上」を目指すことが、以前よりも難しくなっています。つまり、短期債の利回り低下が足を引っ張る形となり、全体の利回り水準を引き下げてしまっているのです。

このデータからもわかるとおり、現在では、従来型の債券運用だけでは、平均5%の利回りを安定的に確保することは容易ではない状況になっています。

米ドル債券ポートフォリオ最新設計例(2026年1月)

ここまで見てきたとおり、現在は期間が短い債券を中心に利回りが低下している状況ですが、「平均利回り5%以上」を目指すのが今回のテーマです。そこで、さまざまな工夫を取り入れながら設計したのが、こちらの米ドル債券ポートフォリオの最新設計例(2026年1月)です。

この設計例では、20銘柄に分散投資を行っています。発行体は、自動車、保険会社、銀行、IT企業など、幅広い業種に分散されています。また、米ドル建て債券が中心ではありますが、発行国もアメリカだけでなく、日本、イギリス、メキシコなど、複数の国に分散されています。

債券の種類としては、普通社債が中心ですが、一部に期限付劣後債や永久劣後債も組み込まれています。通貨はすべて米ドルで、投資金額は1銘柄あたり3,000万円ずつで、合計で6億円のポートフォリオとなっています。1債券がポートフォリオに占める割合は5%です。

残存期間は、最も短いもので4年、7年、8年、9年といった債券が並び、10年前後のものも含まれています。No. 11以降は全て20年以上になっており、最長では30年以上の債券もあります。全体の構成としては、10年以内が10債券、20年以上が10債券というバランスです。その結果、平均残存期間は19.9年となり、ほぼ20年の債券ポートフォリオになっています。

次に、債券格付けについて見ていきます。基本的には、投資適格債を中心とした構成になっています。BBB-以上の債券が中心ですが、一部S&Pの格付けでBB-やB+といった低格付け債も含まれています。

中心となっているのはA台で、特にA-やAが多く、AAAやAAといった高格付け債も一部組み込まれています。全体の平均格付けはA-となっており、信用力としては、日本のメガバンクと同程度の水準と考えられます。

利回りについては、全体として5%前後の債券が中心です。その中で、特に利回りが高いのが、No. 4(8.2%)、No. 8(6%)、No. 11(7.9%)となっており、ポートフォリオ全体の利回りを押し上げています。その結果、ポートフォリオ全体の平均利回りは5.2%となっています。今回のテーマである「平均利回り5%以上」は、この設計によって達成されています。

現在は10年以内の債券利回りが低下している状況ですが、このように債券ポートフォリオを組むことによって、平均利回り5.2%の債券ポートフォリオを組むことは可能といえます。

利回り5.2%といっても、平均格付けはA-であり、信用力の面でも特に問題はないと考えています。さらに、平均残存期間も20年と長く、高い利回り環境を長期間固定できる設計となっています。利回り・格付け・残存期間の3つの観点から見ても、バランスの取れた米ドル債券ポートフォリオといえるでしょう。

平均利回り5%以上を実現する3つのポイント

このポートフォリオによって平均利回り5%以上を達成できている背景には、大きく3つのポイントがあります。

ポイント1)残存期間10年以内の債券には低格付け債や劣後債を活用

現在、残存期間10年以内の債券利回りは低下しています。何も考えずに組み合わせると、残存期間10年以内の債券は利回りが4%前後であるため、全体の足を引っ張ってしまいます。そこで、あえて低格付け債や劣後債を組み入れています。

例えば、No. 1の債券は格付けBB-ですが、利回りは5.1%と高くなっています。No. 2の債券は永久劣後債、No. 3は期限付劣後債で、利回りは4.7%を維持できています。No. 4は期間9.5年ですが、格付けはB+と低くなっていますが、利回りは8.2%と、格付けが低い代わりに利回りが高くなっています。

こういった債券を適度に組み込むことで、期間10年以内の債券の利回り低下を補い、全体の底上げを図っています。

ポイント2)高利回り「スパイス銘柄」の活用

2つ目は、いわゆる「スパイス銘柄」の活用です。通常の債券と比べて、飛び抜けて利回りの高い債券を、ポイントで組み込んでいます。

米国債が4.2%に対し、例えば、No. 4(投資会社)は格付けがB+で利回り8.2%、No. 8(アメリカの自動車メーカー)は格付けがBBB-で利回り6%、No. 11(石油会社)は格付けがBBBで利回り7.9%と、格付けが低いため信用リスクも一定程度ありますが、利回りへの貢献度はかなり大きくなります。

入れすぎるとリスクが高まりすぎるため注意が必要ですが、適切な比率で組み込むことで、平均利回りの底上げに大きく寄与しています。因みに、No. 8とNo.11の債券はS&Pでは投資適格債ですが、Moody’sでは投資非適格債(低格付け債)となっているので注意が必要です。

ポイント3)残存期間20年以上の債券を多めに組み込む

3つ目のポイントは、20年以上の長期債を多めに組み込んでいる点です。No. 11から20までの10銘柄は、すべて20年以上の債券で構成されています。

冒頭のイールドカーブで見たとおり、20年・30年といった残存期間が長い債券に関しては、利回りは1年前と比べてもほとんど低下しておらず、高水準を維持しています。そのため、期間が長い債券を多く組み込むことで、高い利回りを長期間固定することが可能になるのがメリットとなっているのです。

実際、20年以上の債券は、4%後半から5%前後の利回りが中心となっており、4%前半の債券はありません。平均利回りを高めるためには、残存期間の長い債券の比率を高めることが、非常に有効な戦略となっています。

まとめ

最後に、今回のテーマである「平均利回り『5%』以上を目指す米ドル債券ポートフォリオ最新戦略」をまとめます。ポイントは4つです。

ポイント1)期間10年以内には劣後債・低格付け債を駆使

残存期間が短い債券ほど利回りが低下しているので、残存期間10年以内の債券の場合、劣後債や低格付け債を積極的に活用し、平均利回りの低下を防いでいます。

ポイント2)利回り6%以上のスパイス銘柄をポイントで配置

6%〜8%水準の高利回りの債券を、3〜4銘柄程度ポイントで配置することによって、平均利回り全体を底上げすることができます。平均利回り5%以上を目指す戦略としては有効であると考えます。ただし、スパイス銘柄の比率を高くしすぎると、リスクが過大となるので注意が必要です。過度なリスクを取ることなく、適切な範囲にとどめるとよいでしょう。

ポイント3)残存期間が長い債券を多くし平均20年前後を目指す

残存期間が長い債券ほど、現在も高い利回り水準を維持しています。シンプルに残存期間が長い債券比率を高めることで、平均利回りを底上げすることができています。これにより、高い利回りを長期間固定することが可能となり、現在の市況環境にも合致しているといえるでしょう。平均残存期間を20年前後になるようにポートフォリオを構築することが最新の戦略として有効といえます。

ポイント4)期間が長い債券は格付けA台を多くし平均A-を目指す

残存期間が20年以上の債券については、原則としてA台で固めていくのが無難な戦略となるでしょう。実例でも、20年以上は格付けA-以上の債券が多くなっていました。期間が長い債券ほど格付けを高めていくことは、長期間におよぶ破綻リスクへのリスクを抑えることになります。基本的な考え方として、このようにポートフォリオを構築し、平均格付けA-を維持することを目指すとよいでしょう。

本日は「平均利回り『5%』以上を目指す米ドル債券ポートフォリオ最新戦略」という内容でお届けさせていただきました。
米ドル債券による資産運用は、設計次第で安定性と収益性を両立することが可能となります。ご自身に合った運用戦略を構築するには、専門的な視点が欠かせません。私たちウェルス・パートナーでは、富裕層の方の資産運用を長期的にサポートしています。ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。

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本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者20万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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