こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
本日の記事のテーマは「富裕層7億円のタイミングを分散した段階的資産配分実例」といった内容でお届けしたいと思います。
10億円の余剰資産があったとして、この10億円を一度に再配分していろいろな資産に投資する方もいらっしゃいますが、一度に10億円投資するのは怖いという方もいらっしゃいます。
特に投資経験が少ない富裕層の方とかはそうですが、一度に全資産投資するのではなく、10億円の内、まずは4億円投資してそのあと3億円、また3億円とタイミングを見て分散して少しずつ資産運用していって、最終的には全資産運用するという段階的な再配分を行う富裕層の方も一定数いらっしゃいます。
今回はタイミングを分散した段階的な資産配分実例についてお話ができればと思います。
▼今回の内容はYouTubeでもご覧いただけます
目次
富裕層7億円のタイミングを分散した段階的資産配分実例|資産配分(当初)
資産配分シートを見ていきたいと思います。
右の真ん中あたりがご本人様情報です。
女性の方でご年齢が50代後半の方です。ご家族構成がご長男様・ご長女様で、旦那様がいらっしゃいましたが亡くなられて相続財産が増えたので運用を検討されている方です。
ご職業は無職でご年収もないです。
国内不動産はご自宅となっています。
資産配分はこちらのシートのようになっています。
金融資産は国内債券が少しだけありますが、大部分は円預金7.4億円(×4.7億円)です。これが相続した資産の中心になっています。あと実物資産が右側の国内不動産1.8億円となっています。
そうすると全体の資産バランスが左下になっています。
純資産合計は純資産合計と同じで9億2,800万円、借入がありませんので借入比率100%、金融資産比率と実物資産比率の割合が80.6%、19.4%で金融資産比率の割合が多くなっています。
外貨比率、株式比率、債券比率の割合がそれぞれ0%、0%、1.1%です。
資産配分への要望
この方のご要望が右下にあります。
1つ目がご相続されや円預金7億円の有効活用がしたいというのがご相談のきっかけです。
2つ目のご要望が守りを重視した堅実な資産運用がしたいということです。相続富裕層の方に非常に多い傾向ですが、投資経験がないのでできるだけ保守的に安定的に運用したいご要望が強いことが分かると思います。
3つ目が年間税引後1,200万円程度の収入がほしいということです。旦那様がご存命のときは旦那様の収入がありましたが、亡くなりましたので、できれば税引後年間1,200万円、毎月100万円収入があったらそれを生活費に使ってやりくりしたいというご希望です。
最後4つ目は、今回のテーマに繋がってくるわけですが、時間をかけ少しずつ資産運用額を増やしたいということです。
投資が初めてなわけです。いきなり7億円の運用というのは、やったほうがいいとは頭では分かりつつもなかなか体が動きませんし、怖いわけです。ですので、預金にしておくのは勿体無いとわかっているのですが、やはり恐ろしさのほうが勝っているので、それであれば少しずつ時間をかけて運用額を増やしていく、慣れながら運用額を増やしていきたいというのがこの方の最後のご要望です。
以上のご本人様状況や資産状況、ご要望をすべて踏まえて、今回ポートフォリオを何段階かに分けて再配分させていただきました。具体的には3段階に分けて、第1段階、第2段階、完成形と段階的に再配分をしていますので、それを順に見ていければと思います。
富裕層7億円のタイミングを分散した段階的資産配分実例|資産配分(第1段階)
こちらが第1段階の再配分したあとの資産配分となっています。
右下を見ると現金・預金(円)7億円のうちの3億円を使い配分しています。
日本株式、先進国株式、新興国株式に、500万円、1,500万円、500万円配分して、先進国債券に2.55億円投資しました。外国REIT、コモディティ金に1,000万円ずつ投資しています。
特徴は実物不動産に投資していなくて、金融資産だけに投資しているのが特徴かなと思います。
実物不動産というのは投資自体初めてですし、金融の投資だけでも手続きとかストレスがかかる中で実物不動産に投資することはさらに負担が掛かると考えました。まずは初期的な3億円の運用は金融だけで運用するということで、実物不動産は第2、第3段階の再配分になっています。なので金融だけで運用しているのが特徴かなと思います。
そうすると全体の配分がこの下になっていて、借入はしていませんので借入比率は変わりませんが、外貨比率、株式比率、債券比率の割合が少し増えているわけです。外貨比率30.7%の株式比率、債券比率の割合が3.4%、35.6%と増えています。
これが第1段階の再配分です。
このような資産運用で少しずつ慣れていただいて、折を見て第2段階の再配分を行うわけです。
富裕層7億円のタイミングを分散した段階的資産配分実例|資産配分(第2段階)
こちらが第2段階です。
残りの現金・預金(円)の中から2億円使い、下のような資産に増やしています。
株や債券を増やすのですが、株式は日本株式、先進国株式、新興国株式に500万円、1,500万円、500万円、先進国債券に5,000万円、外国REITに500万円です。
今回新たに加わったのが国内不動産で、2.5億円の一棟不動産に投資していますが、それに占める国内ローンが1.35億円となっています。
コモディティ金にも同じように500万円投資しています。
そうすると全体のバランスがまた変わります。
今回の変化は借入比率が上がっているわけです。もともと借入はなかったので100%でしたが、114.5%ということで少しレバレッジが掛かっているわけです。
あとは金融資産、実物資産の比率が、もともと金融資産比率の割合が8割でしたが58.1%に減って、実物資産比率が41.9%ということで、実物不動産が増えているわけです。
そして外貨比率も外貨を増やしていますので38.8%、株式と債券の比率が8.1%、50.6%で、第1段階と比較しますと更に外貨比率が高まったり、株式比率と債券比率が高まったり、更に借入比率も高まっているので、第1段階で投資に慣れたという前提でさらにリスク資産を増やして配分を変えているというわけです。
富裕層7億円のタイミングを分散した段階的資産配分実例|資産配分(完成)
こちらが最後の第3段階で完成形の資産配分です。
再配分案としては右下にあるように第2段階と同じで、2億円を使って株式、債券、REIT、不動産、コモディティ金に同じ金額で再配分しています。そうすると全体のバランスが下のようになっています。
借入比率が129.1%。金融資産、実物資産の比率が41.6%、58.4%と大体4:6の金融資産と実物資産の比率となっています。
外貨比率が46.9%。株式、債券の比率が15.1%、72.9%で、よく記事でもお話ししている堅実な富裕層の方の資産配分比率にかなり近づいているのではないかなと思います。
段階的再配分の投資効果(分散・インカムゲイン)
では今回の段階的な資産配分実例の再配分の投資効果について見ていきたいと思います。
主に投資効果が2つありまして、一つは分散効果で、もう一つはインカムゲインがあります。分散のほうから見ていきたいと思います。
投資効果①分散効果
1つ目が運用目標達成に適した資産配分の再構築ということで、借入比率から債券比率まで各重要な比率が並べられていて、当初、第1段階、第2段階、完成と、各比率がそれぞれ変化していることがこちらを見ていただくと分かります。
当初の状態からいきなり完成形に持っていこうとすると、かなりドラスティックな配分の変化にはなりますので、精神的なストレスも大きいかなとは思います。
第1段階、第2段階と段階を経ることによって資産運用に少しずつ慣れながら、精神的にも知識的にも慣れながら、少しずつ完成形に向かっていくことで富裕層の方の精神的なストレスを減らしながら資産配分を最適化できていると言えるのではないかなと思います。
投資効果②インカムゲイン
2つ目が再配分の効果のインカムゲインということで、この方の目標として年間税引後インカムゲインが1,200万円の目標でしたが、想定ではインカムゲイン1,200万円以上を毎年税引後で得ることができると想定しています。
今回、再配分後の完成形の資産全体の想定インカムゲインが税引後年間2,000万円程度となっていますので、かなり余裕を持ってインカムゲインの目標は達成できるのではないかなと思います。
この完成形に至る前の第2段階の時点で実は目標のインカムゲインは達成できると考えていました。
インカムゲインの希望はかなり強かったですので、優先的にこの目標を達成できるように資産再配分割合の資産クラスにバイアスをかけてインカムゲインの目標を達成しやすい再配分を行うことによって、第2段階ですでに目標のインカムゲインが達成できている形になっています。
こちらが段階的再配分の投資効果となっています。
富裕層7億円のタイミングを分散した段階的資産配分実例|まとめ
それでは今回のテーマの「富裕層7億円のタイミングを分散した段階的資産配分実例」の最後にまとめができればと思います。
ポイントは4つあるかなと思っています。
ポイント①投資経験が少ない保守的な富裕層にオススメ
1つ目に投資経験が少ない保守的な富裕層にオススメというのがこの段階的資産配分なのかなと思います。
今回の実例のように相続で富裕層になった投資経験であったり、知識がない中で突然富裕層になった方にはピッタリではないかなと思います。
現金で持っているというもったいなさよりも、安心安全に運用したいという希望が強い富裕層の方向けの資産運用方法ではないかなと思います。
ポイント②投資に慣れながら少しずつ資産運用額を増やせる
ポイントの2つ目が投資に慣れながら少しずつ資産運用額を増やせるというのがこの段階的資産配分のいいところかなと思います。
10億円相続で例えばキャッシュが入ってきたとして、それを一度に10億円投資するのが怖い理由としては、資産運用額10億円に対してご自身の投資リテラシーが圧倒的に少ない、投資に慣れていないと、このギャップがあるから怖いわけです。
ですので10億円の運用を一度にするのではなく、数回に分けて数億円ずつに分けることによって最初は勇気を出して投資したあと2回目に投資するまでの間に時間がありますので、そこまでの間に慣れたりとか知識を高めたりとかすることによって、この資産運用額と投資リテラシーのギャップを埋めて慣れながら少しずつ運用額を増やしていくことがポイントではないかなと思います。
ポイント③相場環境を見ながら投資タイミングを計れる
3つ目のポイントが、相場環境を見ながら投資タイミングを計れるということもできるのではないかなと思います。
最初に3億円投資します。2回目投資するときに投資しなくてもいいわけです。それは相場環境を見ながら判断することができますので、最初投資したときよりもドル安円高にいっていたり、株が下がっているとか、債券が下がっている、投資するタイミングとしてはいいということで、追加で第2段階目を投資する判断もできますし、逆に待つこともできるわけです。
ですので相場環境を見ながら第2段階以降の投資タイミングを計れるのが段階的資産配分のいいところではないかと思います。
ポイント④運用目標に応じて段階的配分にバイアスをかける
4つ目が運用目標に応じて段階的配分にバイアスをかけるです。
どういうことかと言いますと、再配分のタイミングを分けることが段階的資産配分ではありますが、人それぞれ運用目標があるわけです。
例えば資産を成長させたいというのが目標の方だとすると、株の割合を第1段階、第2段階に多めにもっていって、早めに株の資産形成は終わりにしたりとか、あとはインカムゲインをできるだけ多く得たい方であれば早めに債券ポートフォリオを構築する、これは第1段階、第2段階で終わるようにしておくわけです。今回の実例はそうだったわけです。
逆に不動産とかによって相続対策を優先的にされたいという運用目標の方であれば、相続対策を第1段階である程度終わるように配分することもできます。運用目標に応じて段階的な再配分に、資産クラスにバイアスをかけることによって、その方によって最適な形で時間をかけて再配分することができるのではないかなと思います。
以上が今回の段階的再配分実例のまとめとなっています。
当社は富裕層の方の資産運用をお手伝いしております。
資産配分全体の最適化から具体的な金融資産・不動産への投資、資産管理会社を含めた税務の最適化まで幅広いご提案をしております。
資産運用をお考えの方やお困りの方は気軽に当社の個別相談にお申し込みください。

株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中