目次
はじめに:外国債券の投資タイミングについて
外国債券は、株式と比べて判断材料が複雑になります。「今が買い時なのか」「為替の動きはどのように影響するのか」などの疑問は多いかもしれません。
複数の要因が絡み合うため、「いつ買うべきなのか」を判断するのは難しいです。外国債券市場は、株式市場ほど日常的に情報が流通しにくいです。そのため、初心者の方にとっては、不安や迷いが生じやすくなります。
今回の記事では、外国債券投資を検討している「投資初心者」の方に向けて、下記の内容を分かりやすく解説します。
- 投資タイミングを判断する考え方
- 押さえておくべき指標や要因
- タイミングを分散する方法
- 長期視点で失敗しないコツ
外国債券ってそもそも何?押さえておきたい基礎知識
資産運用や投資の選択肢が広がる中で、「外国債券」を耳にする機会が増えているかもしれません。外国債券は、日本国内の債券と性質が異なり、様々な魅力とリスクがあります。そのような観点を踏まえて、基本的な仕組みと債券の特徴について解説します。
債券で押さえておきたい知識 | ||
---|---|---|
項目 | 内容 | 例 |
債券 | 国や企業への貸付商品 | 国債、社債 |
外国債券 | 外貨建ての債券 | 米国債、ユーロ債 |
利回り | 国内より高い場合が多い | 米ドル債など |
為替変動リスク | 為替変動で損益が出る | 償還時に円高で損、円安で得 |
信用リスク | 発行体が返済不能になるリスク | 企業倒産など |
1. 債券とは「国や企業への貸付」
債券とは、簡単に説明すると「国や企業にお金を貸して、その代わりに利子(利回り)を受け取る投資商品」です。
米国債券の場合は、「アメリカ政府にお金を貸す」ことを意味します。償還期限まで保有することで、利子に加えて、元本も償還される仕組みです。
2. 外国債券の種類について
外国債券とは、海外の発行体や市場、外貨建てで発行される債券になります。主に次のような通貨建てがあります。
- 米ドル建て(米国債・米ドル社債など)
- ユーロ建て(ドイツ国債・欧州企業債など)
- 豪ドル建て(オーストラリア債など)
日本円とは異なる通貨で運用するため、「為替変動リスク」がある点に注意してください。
通貨建て | 特徴 |
米ドル建て | 世界的に流動性・信用力が高い。利回りも高め。 |
ユーロ建て | 欧州の安定資産。利回りは、米ドルよりやや低め。 |
豪ドル建て | 高金利通貨で利回りが高め。資源国の影響大。 |
初心者が気を付けるべき「外国債券の投資タイミング」とは?
外国債券への投資は、高い利回りや分散効果が期待できます。一方で、為替変動や海外の経済状況など、気を付けるべきポイントも多くあるのです。
初心者の方は、いつ投資を始めるべきか、タイミングの見極めが難しいかもしれません。今回は、外国債券の投資を始める際に、押さえておきたいタイミングについて解説します。
1. 金利が上がると債券価格は下がる
まず、債券の投資では、「金利が上がると債券価格は下がり、金利が下がると債券価格は上がる」という関係を把握しましょう。これは、債券の利回りと市場金利の動きが、密接に関係するためです。
例えば、利回り3%の債券を購入した場合になります。その直後に、市場金利が上昇すると、債券の魅力が大きく変化します。新たに発行される債券を、利回り5%としましょう。
この場合、所有する3%の債券は、より高い利回りを持つ債券と比べて、魅力が劣ります。さらに、途中で売る際には、価格が下がってしまうのです。一方で、市場金利が下がった場合になります。新しく発行される債券の利回りが2%になれば、所有する3%の債券価格が上昇します。
このように、金利と債券価格は逆の動きをします。これは、債券の将来の利子や元本の受け取り価値が、市場金利で変化するためです。
購入のタイミング | 市場金利 | 新発債券利回り | 既発債券利回り | 既発債券価格 | 詳細 |
購入時 | 3% | 3% | 3% | 100円 | 標準的な状態 |
金利上昇後 | 5% | 5% | 3% | 下落(例: 95円) | 新発債券の方が有利、既発債券は不利 |
金利下降後 | 2% | 2% | 3% | 上昇(例: 105円) | 既発債券の方が有利 |
2. タイミングを左右する3つの要因
外国債券の投資タイミングは、「発行国の金利」「為替相場」「景気・インフレ」が影響します。金利が高いと債券価格は下がり、円高で買えば安く購入できます。
景気悪化やインフレ鈍化の局面では、債券価格が上がりやすくなるのです。このような動きを見極めることが、投資判断のポイントになります。
要因 | 影響する理由 |
米国(などの発行国)の金利 | 金利が上がると債券価格は下がり、利回りが上がる |
為替相場 | 円高で買うと安く買えて、円安で売れば円換算益になる |
景気・インフレ | 景気悪化やインフレ鈍化=金利低下期待=債券価格上昇の材料 |
外国債券を勢いで買う前に!見逃せない判断ポイント
外国債券は、日本国内の債券に比べて、高い利回りや分散効果が期待できます。
しかし、勢いだけで購入すると、思わぬリスクに直面するかもしれません。そこで、外国債券を購入する前に、押さえておきたい判断ポイントを紹介していきます。
チェック1:金利の方向性を見る(FRBの動向)
- 利上げ前 ⇒ 価格が下がる可能性がある ⇒ 買いは慎重に
- 利下げの見通し ⇒ 価格が上がる可能性がある ⇒ 買いのチャンス
外国債券の投資を行う時には、まず金利の方向性を確認してください。アメリカの中央銀行であるFRBの政策は、世界の金融市場に大きな影響を与えます。FRBが利上げを行う場合は、債券の価格が下がる傾向にあります。
一方で、利下げが見込まれる場合は、債券価格が上昇する可能性が高いのです。つまり、利下げは、債券の購入タイミングになります。FRBの声明や議事録などをチェックして、今後の金利動向を注視しましょう。チェック2:為替相場を確認する(ドル円レートなど)
- 円高(ドル安)で買う ⇒ 外国の通貨が安く買える
- 円安(ドル高)で売る ⇒ 円換算で利益が増える
為替相場の確認も欠かせません。外国債券を購入する場合、為替変動リスクが伴います。円高(ドル安)のタイミングで、外国債券を買うことによって、外国の通貨が安く入手できます。
しかし、為替相場の短期的な動きを、正確に予想するのは困難です。購入のタイミングを分散させるなど、リスクを抑える工夫が必要です。
投資のタイミングに迷わないための「3つの戦略」
1. 積立投資(ドルコスト平均法)
- 高値でも少しだけ買う
- 安値では多く買える
- 平均購入価格を平準化できる
積立投資(ドルコスト平均法)は、毎月一定額ずつ、コツコツと買い続ける方法です。商品の価格が高いときには、同じ金額で買える量が少なくなります。しかし、価格が安いときには、多くの量が買えるのです。その結果、長い期間をかけて、購入価格が平均化されます。
ドルコスト平均法の最大のメリットは、投資のタイミングを気にする必要がない点です。相場の動きを予測しなくても、簡単に始められるのです。また、毎月の積立額をご自身の生活に合わせて設定できます。これによって、少額から無理なく投資が続けられます。
項目 | 内容 |
方法 | 毎月一定額ずつ買うことで、平均購入価格を平準化する投資法 |
メリット | タイミング不要・リスク分散・少額から始めやすい |
デメリット | 短期利益は出にくい・相場上昇時は、一括投資が有利な場合もある |
2. 満期保有戦略(価格変動を気にしない)
- 償還時に元本と利子を受け取る
- 短期的な価格の上下は気にしない
- 安定的な収入源を確保できる
金融商品を途中で売却せず、満期まで持ち続ける投資方法です。満期時に、額面金額(元本)と利子が受け取れます。この方法は、安定的な収入源を確保したい方や、元本割れのリスクを極力避けたい方におすすめです。
途中で売却しない限り、満期時に元本が返還されます。そのため、将来の資金計画も立てやすいでしょう。満期保有戦略は、価格変動によるストレスを感じずに、安定的な資産運用を目指せるのです。
特徴 | 内容 |
戦略 | 満期まで保有して、途中で売らない |
価格変動 | 日々の価格変動を気にする必要がない |
収入 | 元本と利子を満期時に受け取る |
リスク | 発行体の信用リスクのみ注意 |
おすすめ対象 | 元本割れが不安な人、安定収入を求める人 |
3. 複数の債券・通貨に分散する
- 米ドル債、ユーロ債、豪ドル債など複数に分散
- 国債と社債を組み合わせる
- 期間の異なる債券を持つ
リスクを減らしながら、安定的な運用を目指すためには、分散投資が重要になります。異なる通貨建ての債券を組み合わせることで、為替変動リスクなどが分散できます。国債と社債をバランスよく保有すれば、信用リスクの偏りを抑えられます。
さらに、満期までの期間が異なる債券を保有することで、金利変動による影響も分散できるのです。一般的に、期間が長い債券ほど、利回りは高くなります。
しかし、金利変動の影響も大きくなるのです。短期国債と長期国債の両方を持つことで、ポートフォリオ全体の安定性が保てるでしょう。分散投資は、外国債券の投資においても、有効なリスク管理手法です。
初心者がやってしまいがちな失敗とその対策
1本の債券に資金を集中させると、為替変動や発行体の信用リスクなどの影響を受けます。そのようなリスクを回避するためには、複数の通貨などを組み合わせて、投資することが大切です。
個別のリスクが抑えられて、安定した運用が目指せるのです。ここでは、投資における失敗パターンとその対策について、簡単に紹介していきます。
失敗パターン | 対策 |
高金利につられて無理に買う | 金利上昇局面では価格が下がる可能性に注意 |
為替を予想して一括で投資する | 分散購入や積立でリスクを抑える |
商品の中身を理解せずに買う | 発行体・通貨・満期・利回りの4点を必ず確認する |
満期前に慌てて売って損を出す | 満期保有を前提に、使わない資金で運用する |
外国債券投資の始め方と実践ステップ
外国債券は、高い金利や為替差益(差損の場合もあります)などの魅力があります。日本国内の資産と値動きが異なるため、リスク分散にもつながります。投資を始める際は、ご自身の投資目的やリスク許容度を明確にしてください。
長期的な視点で、安定した収益を目指すことが、外国債券の投資を成功させるポイントです。まずは、外国債券を始める時の実践ステップを確認しましょう。
Step1:投資目的を明確にする
- 安定的な利子収入が欲しいのか
- 為替差益も狙いたいのか
- 資産全体のバランスを整えたいのか
目的次第で買うべき債券も変わります。
Step2:運用期間と予算を決める
- 「3年以内には使わない資金」を充てるのが理想
- 最初は数十万円でも可能
- 毎月の積立でもスタートできる
生活資金を使用しないのが大前提です。
Step3:購入手段を選ぶ(証券会社・IFAなど)
外国債券の購入には様々な選択肢があります。
方法 | 特徴 |
ネット証券 | 手数料が安い、初心者向け商品もある |
銀行 | 店頭で相談できるが、手数料は高め |
IFA(独立系アドバイザー) | 中立な立場でポートフォリオを提案してくれる |
短期的なタイミングよりも中長期的な戦略構築が大切
外国債券投資では「いまが買い時なのか?」に意識が向きがちです。
しかし、それ以上に大切なのは、下記の3つのポイントになります。
- 自分に合った運用期間
- 資産全体の配分バランス
- 安定的な利回り確保の設計
タイミングを完璧に読むのはプロでも困難です。
だからこそ「戦略」を持って取り組むことが、長期的な資産形成の成功につながります。
まとめ:投資はタイミングと冷静さのバランスが大切
- 外国債券の投資タイミングは「金利」と「為替」が鍵
- 完璧なタイミングは狙えないと割り切る
- 積立や分散でリスクをコントロール
- 満期保有前提なら短期的な価格変動を気にしない
外国債券への投資を考える際、「金利」と「為替」の動向が大きなポイントになります。しかし、どちらのタイミングも見極めるのは、非常に難しいです。
積立投資や購入時期を分散することで、そのリスクをうまく抑えられます。外国債券は満期まで保有することで、途中の価格や為替変動に振り回されずに済みます。
そのため、短期的な値動きに一喜一憂せず、長い目で見て運用することが大切です。初めて外国債券に投資する場合は、不安を感じるかもしれません。しっかりと知識を身につけて計画的に取り組めば、安定した資産形成のスタートになるでしょう。
【ご相談はこちら】信頼できる専門家に話を聞いてみたい方へ
当社「ウェルス・パートナー」では、外国債券の特徴や組み入れ比率、リスクの取り方まで丁寧にアドバイスしています。初めての方でも、わかりやすくご案内しますので、ぜひお気軽にご相談ください。
👉 資産配分の無料相談はこちらから
👉 外国債券のポートフォリオ事例もご案内可能です

株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中