外国債券への投資は、資産をグローバルに分散することを意味します。安定的な収益を目指す上で有効な手段の一つです。しかし、外国債券と聞くと、何から始めれば良いのか、どのようなリスクがあるのかなど、不安に感じる方もいるかもしれません。
今回の記事では、これから外国債券投資を始めたいと考える初心者や、富裕層の方々に向けて、外国債券投資の基礎知識から具体的な戦略までをわかりやすく解説します。
目次
富裕層が外国債券に注目すべき理由とは?
現在の日本は、長期的な低金利環境にあります。預金や国内債券だけでは、実質的な資産価値の維持・増加が難しい状況です。世界的なインフレ懸念に加えて、円安傾向を含む為替の変動リスクが常態化しています。これは資産運用戦略の見直しを迫られる新たな課題と言えます。このような経済環境下で、国内に偏った資産運用だけでは、大切な資産を効率的に増やすことが難しいかもしれません。
現在は、外国債券が新たな投資対象として、富裕層の間で注目を集めています。外国債券は、資産保全を図りながら、国内外の経済状況に左右されない、新たな収益機会を追求できるのです。本記事では、富裕層が外国債券に注目すべき理由を解説して、その魅力と活用法を明らかにしていきます。
資産を守りながら増やす選択肢
富裕層にとって、どのように資産の実質価値を維持・向上させるかが課題です。世界的なインフレや為替の変動リスクは、資産運用に新たな視点をもたらします。このような状況において、外国債券は有力な選択肢の一つとして、注目されるのです。
外国債券は、発行体の信用力にもよりますが、元本償還があるため、安全性を意識しやすい金融商品です。国内の金融商品と比較して、高い利回りが期待できるケースも多いです。単に資産を「守る」だけでなく、積極的に「増やす」という、富裕層の多様なニーズに応えうる投資対象になります。
外国債券の基本の仕組みと利回りを解説
外国債券への投資を始めるにあたって、まず理解しておきたいのが、基本的な「仕組み」と「利回り」です。国内債券と異なる特徴を持つ、外国債券の基本を正しく把握することが、賢明な投資判断につながります。
本章では、国内債券との違い、投資による収益(利子や償還差益など)の発生方法、どのような種類の外国債券があるかなど、押さえておくべきポイントを解説します。
項目 | 国内債券 | 外国債券 |
発行体 | 日本政府、日本の地方公共団体、日本の企業など | 外国政府、外国の企業、国際機関など |
発行通貨 | 円建てが一般的 | 外貨建てが一般的(一部円建てもあり) |
金利水準 | 低金利傾向が続いている | 国や通貨により多様、国内債券より高い傾向がある |
主なリスク | 金利変動リスク、信用リスクなど | 上記に加えて、為替変動リスク、カントリーリスクなど |
税制(概要) | 利子・譲渡益ともに申告分離課税など | 償還差益や売却益は、譲渡所得として申告分離課税など |
外国債券と国内債券の違いとは?
債券投資には、大きく分けて国内債券と外国債券があります。国内債券は、日本政府や日本の企業などが日本国内で発行し、円建てで取引される債券です。これに対し、外国債券は、外国の政府や国際機関、あるいは外国の企業などが、発行する債券全般を指します。発行通貨は、円建て(サムライ債など)の場合もあれば、米ドルやユーロなどの外貨建ての場合もあります。
利子(クーポン)と償還差益について
外国債券投資から得られる主な収益は、以下の二つです。
- 定期的に支払われる「利子(クーポン)」
- 満期まで保有した場合に得られる「償還差益」
まず、利付債と呼ばれるタイプの債券では、保有期間中に発行体から定期的に利子が支払われます。多くの利付債は、発行時に決められた利率に基づき、満期まで決まった金額の利子を受け取ることが可能です。
次に、償還差益になります。債券は通常、満期になると「額面金額」で償還されます。例えば、額面100円の債券を90円で購入した場合、満期時に100円で償還されるため、その差額である10円が償還差益として得られるのです。
特に、「ディスカウント債(割引債、ゼロクーポン債)」では、利子の支払いはありませんが、既に割り引かれた形で債券が発行されます。この償還差益が、主な収益源になります。
これらの利子収入と償還による損益が、外国債券投資のリターンを構成する主要な要素です。
知っておきたい外国債券の主な種類
外国債券には、その発行体や発行される通貨などにより、多様な種類があります。
主な分類方法としては、以下の点が挙げられます。
- 国や地方公共団体、政府機関などが発行する「公共債」
- 一般企業が発行する「社債」
- 国際機関(国際復興開発銀行など)が発行する債券
- 発行通貨による分類
- 米ドル建て、ユーロ建て、新興国通貨建てなど
- 破綻時の弁済順位が低い「劣後債」
- 償還期限が定められていない「永久債」など
発行体の分類において、一般的に公共債は信用度が高いです。比較的、安定した運用が期待できます。一方で、利回りは相対的に低い傾向があります。社債は、発行企業の信用度によって、リスクと利回りが大きく異なります。高い利回りが期待できるものからリスクの高いものまで、幅広く存在するのです。国際機関が発行する債券は、格付けが高い点が特徴になります。
主要先進国通貨建ての債券は、流動性が高いです。新興国通貨建て債券は、高い利回りが期待できる反面、為替変動リスクや信用リスクが高まる傾向があります。
また、「劣後債」や「永久債」のような特殊な特徴を持つ債券は、一般的に高い利回りが設定されています。しかし、リスクが高くなるため、「ハイイールド債」として扱われることもあります。
富裕層の資産運用においては、多様な債券を適切に組み合わせることで、資産全体のリスクが分散できるでしょう。これにより、目標に合わせたリターンが目指せます。ご自身の投資戦略やリスク許容度に合わせて、適切な債券を選択することが重要です。
富裕層だからこそ得られる外国債券投資の4つのメリット
富裕層にとって、資産運用は単に資産を増やすだけではありません。大切な資産を確実に守りながら、着実に成長させていくことが重要です。外国債券投資は選択肢の一つに留まらず、戦略的に重要な位置を占める可能性があるでしょう。外国債券投資には、様々なメリットが存在します。本章では、特に重要な4つのメリットに焦点を当てて、詳しく解説します。
外国債券の4つのメリット |
国内より高い利回り |
円安リスクへの備え(通貨分散) |
株式と異なる値動きで安定化 |
安定した利子収入 |
国内より高い利回りが期待できる
長期にわたり低金利が続いている日本では、国内債券から得られる利子収入(インカムゲイン)は限られています。これに対して、海外の一部の国では、日本の金利水準よりも高い金利が設定されています。例えば、日本の10年物国債利回りが1%台であるのに対して、米国の10年物国債利回りは4%台です。主要先進国間でも大きな金利差が見られます。多くの海外主要国で発行される債券は、国内債券に比べて、より高いインカムゲインが期待できる傾向にあります。
この高い利回りは、富裕層の資産運用において、定期的な収益源を確保します。つまり、資産全体の成長を加速させる可能性を秘めているのです。特に、まとまった資産を持つ富裕層にとって、安定したインカムゲインは複利効果を高めます。長期的な資産形成に、大きく寄与する要素となり得るのです。
通貨分散による円安リスクへの備え
日本円だけで資産の大半を保有する場合、円安が進むと保有資産の実質的な価値が目減りするかもしれません。輸入品の価格上昇などを通じて、国内での購買力が低下することも懸念されます。このような環境下では、資産を日本円だけで持つことの脆弱性が、顕在化しやすいです。
これに対して、外国債券のような外貨建て資産をポートフォリオに組み入れることは、有効な円安対策となります。円安局面では、外貨建て資産を円に換算した際の価値が増加するため、為替差益が得られます。円資産の価値低下を部分的に相殺して、資産全体の実質価値を維持・向上させる効果が期待できるのです。
資産規模が大きい富裕層にとって、この通貨の分散効果は重要です。計画的に資産の一部を外貨に分散することは、単に為替変動リスクを低減するだけではありません。不測の事態における、資産全体の安定性を高めます。将来にわたり国内外での購買力を維持するための、強固な基盤になるのです。
株式とは異なる値動きでポートフォリオを安定化
株式と債券は、市場環境によって異なる値動きをする傾向があります。一般的に、株式と債券は「逆相関」または「低い相関」の関係にあるのです。
この特性を活用して、株式と外国債券を組み合わせたポートフォリオを構築しましょう。資産全体の値動きのブレを抑えることで、リスク分散につながります。例えば、経済が不安定になり、株式市場が大きく下落するような場合です。債券が安定した値動きをすることで、株式の下落による資産全体の目減りを部分的に相殺します。つまり、外国債券は、ポートフォリオの安定性を高める効果が期待できるのです。
大きな資産を保有する富裕層にとって、不測の事態から資産を守る「資産保全」は重要な課題です。外国債券をポートフォリオに組み込むことは、資産保全の観点から有効な戦略の一つです。
安定したインカムゲインの確保
外国債券投資は、発行体が存続し続ける限り、定期的な利子(クーポン)収入をもたらします。保有資産から予測可能なキャッシュフローを生み出す、安定した源泉になるのです。特にリタイアメント層や、定期的な収入を重視する富裕層にとっては大切なテーマになります。得られた利子収入を日々の生活費に充てたり、新たな投資資金として活用したりできる点は、大きな魅力です。
株式の配当金は企業の業績によっては、減配や無配になるかもしれません。しかし、債券の利払いは、発行時に契約で定められているため、予測の可能性が高いインカムゲインと言えます。このような安定したインカムゲインは、ポートフォリオ全体のリターンを安定させるのです。資産運用の面で、精神的な安心感にもつながります。
投資初心者が押さえておくべき外国債券の主なリスク
外国債券投資は特有のリスクも伴います。例えば、為替変動リスクや金利変動リスク、信用リスク、カントリーリスクが挙げられます。為替変動リスクは、外貨建ての債券価格が為替レートによって、円換算した際の価値が変動するリスクです。特に円高が進むと、円ベースでのリターンが目減りする可能性があります。
金利変動リスクは、市場金利の上昇により、すでに保有している債券の価格が下落するリスクです。信用リスクは、発行体の経営状況悪化などにより、利子や元本が支払われなくなる可能性(デフォルトリスク)を指します。
カントリーリスクは、発行国の政治・経済情勢の変化による影響です。これらのリスクを十分に理解して、分散投資や為替ヘッジなどを検討しましょう。この知識が、外国債券投資を行う上で非常に重要になります。
リスク名 | 概要 |
為替変動リスク | 為替レートの変動で、円換算の利益・損失が出る |
信用リスク | 発行体の倒産等で、元本や利子が支払われない可能性がある |
価格変動リスク | 金利や市場環境の変化で、債券価格が上下して元本割れも |
カントリーリスク | 投資国の政治・経済情勢悪化で、損失が生じることや売却が困難になる |
為替変動リスク
外貨建ての外国債券に投資する際に、避けて通れないのが「為替変動リスク」です。これは、債券の購入時や、利子・償還金を円に換算する際の、為替レートが変動することで、円ベースでの受取額が増減するリスクを指します。
例えば、1米ドル=150円の時に、米ドル建て債券を購入した場合です。満期時に1米ドル=140円の円高になっていれば、円換算の受取額は為替差損により目減りします。逆に、1米ドル=160円の円安になっていれば、為替差益により円換算の受取額は増加するのです。
この為替変動リスクを低減する方法として、「為替ヘッジ」を利用することがあります。為替ヘッジ付きの外国債券を選択したり、為替予約取引を活用したりすることで、為替変動による影響を抑制できます。ただし、為替ヘッジにはコストがかかる点に注意してください。特に日本の金利水準が低い状況下では、一般的にヘッジコストが発生します。
富裕層の方が、多額の資金を外国債券に投資する場合、わずかな為替レートの変動でも、円換算した際の損益が大きくなります。資産全体に与える影響は、決して小さくありません。そのため、為替変動リスクの特性を十分に理解しましょう。ご自身の運用方針に合わせて、ヘッジの要否やコストを検討することが重要です。
金利変動リスク
外国債券投資における主要なリスクの一つに金利変動リスクがあります。これは、市場の金利水準が変動することに伴い、すでに発行されている債券(既発債)の価格が変動するリスクです。市場金利が上昇すると、すでに発行された相対的に低い利回りの既発債の魅力が低下して、その価格が下落する傾向にあるのです。つまり、購入時よりも低い価格で売却せざるを得なくなります。
逆に、市場金利が下落すると、相対的に高い利回りの既発債の魅力が増して、その価格は上昇する傾向にあるのです。
この金利変動による価格変動の影響は、債券の残存期間が長いほど、大きくなる傾向があります。長期債は短期債に比べて、市場金利のわずかな変動でも価格が大きく変動します。
金利変動リスクへの対策としては、以下の点が検討されます。
- 債券の分散投資を行うこと
- 市場金利の変動に応じて、受け取る利子額が変わる変動利付債に投資すること
これらのリスク対策を理解し、適切に活用することが欠かせません。
信用リスク(デフォルトリスク)
外国債券投資において、理解しておくべき重要なリスクに、「信用リスク」があります。これは、債券の発行体が財政難や経営不振などに陥り、利子の支払いや元本の償還を行えなくなる可能性を指します。これを、「デフォルトリスク」とも呼びます。投資した資金が回収できなくなる可能性があるため、投資判断において極めて重要な要素です。
この信用リスクを判断する際の有力な指標が、S&Pやムーディーズなどの第三者による「格付け」です。これらの格付け会社は、発行体の財務状況や経済状況、政治情勢などを総合的に分析します。そして、債務履行能力について評価を行うのです。
格付けは通常、最上位の「AAA」から、デフォルト状態を示す「D」などの記号で示されます。一般的に、格付けが高いほど信用リスクは低く、低いほどリスクが高まるのです。例えば、S&PでBB+以下は、「投機的格付け」に分類されます。このような債券は、信用リスクが高いと見なされます。
格付けが低い債券は、ハイイールド債とも呼ばれるのです。信用リスクが高い反面、そのリスクに見合う高い利回りが設定されます。高いリターンを追求したい富裕層にとって、魅力的に映るかもしれません。しかし、ポートフォリオに組み込む際は、デフォルトの可能性が高いことを十分に考慮してください。
投資額を慎重に検討する必要があります。信用リスクを完全に回避することも難しいため、複数の発行体に分散投資を行ったり、市場に関する情報を継続的に収集したりすることが、資産のリスク管理では大切でしょう。
カントリーリスク
外国債券に投資する際は、「カントリーリスク」を考慮する必要があります。例えば、突発的な政情不安や経済危機、予期せぬ法制度の変更などが該当します。これらの要因によって、発行体の支払能力に直接的な影響を与える可能性があるのです。
一般的に、カントリーリスクが高いとされるのが新興国の債券です。主要先進国の債券に比べて、高い利回りが設定されている傾向があります。高いリターンが期待できますが、デフォルト(債務不履行)の可能性も相対的に高まります。過去には、財政状況の悪化などで、債務不履行に陥った事例があるのです。カントリーリスクは、単なる懸念事項ではなく、現実のリスクとして捉えることが重要でしょう。R&I(格付投資情報センター)やCofaceなどの、専門機関が公表するカントリーリスク評価やソブリン格付けなどが参考になります。
富裕層のための外国債券ポートフォリオ戦略
富裕層の資産運用においては、単にリターンを追求するだけではありません。先述でも解説しましたが、大切な資産を「守りながら増やす」かが重要な視点です。
本章では、富裕層の方が盤石な資産基盤を築くためのポートフォリオ戦略について解説します。
投資タイプ | 外国債券の目安比率 | 特徴・目的 |
攻めの投資家 | 10%〜20% | 株式が中心で債券は補完 |
バランス型 | 20%〜40% | 通貨分散と安定収入の両立 |
守り重視(保守型) | 40%〜60% | 退職後生活費や資産保全を重視 |
資産全体の中でどのくらいの割合を持つべきなのか?
富裕層の資産ポートフォリオにおいて、外国債券をどのくらいの割合で保有すべきか、明確な「正解」はありません。最適な割合は、個々の投資家の年齢やリスク許容度、投資の目的、保有する不動産など、資産の状況によって大きく異なります。
しかし、資産全体の10%から30%程度を外国債券に配分することが、検討されるケースが多いです。これは、国内債券と比較して、高い利回りが期待できるためです。株式と異なる値動きをするため、ポートフォリオの分散効果を高める上で、有効な水準の一つになります。
例えば、保守的な運用を目指す場合は、債券(外国債券を含む)の比率を相対的に高めてください。株式など、他のリスク資産とのバランスを取ることで、資産全体の値動きを安定させる効果が期待できます。一方で、積極的なリターンを追求する場合は、債券の比率を抑えましょう。
年齢が高い場合は、債券比率を高めて、若い場合は、株式比率を高めるという考え方もあります。ご自身の状況や市場環境の変化に応じて、定期的にポートフォリオのバランスを見直してください。必要に応じて、外国債券の割合を調整することが、長期的な資産形成において、重要な鍵になります。
銘柄選びのポイントは格付け・通貨・期間のバランス
外国債券でポートフォリオを構築する際には、「格付け」「通貨」「期間」の、3つの要素を考慮してください。格付けは、世界的な格付会社のS&Pやムーディーズなどが評価します。投資適格債(一般的にBBB格以上)は、信用リスクが低い分、相対的に利回りが低いです。一方で、BB格以下のハイイールド債は、信用リスクは高いものの、高い利回りが期待できます。投資の許容リスクに応じて、これらのバランスを検討しましょう。
次に通貨になります。米ドルやユーロなどの主要通貨建ての債券は、流動性が高い傾向にあります。成長が期待される新興国通貨建て債券は、高いリターンが期待できるかもしれません。しかし、為替変動リスクが高まります。複数の通貨に分散投資することで、為替リスクの軽減が図れるでしょう。
最後に期間です。償還までの期間が短い短期債は、価格変動リスクが小さく、安定性が高い傾向にあります。一方で、長期債は金利変動による価格への影響を受けやすいです。しかし、高いリターンが期待できる特性もあるのです。ご自身の投資目的や、将来のキャッシュフロー計画に合わせて、適切な期間の債券を選択しましょう。ポートフォリオ全体で最適なバランスを追求することが、賢明な銘柄選びにつながります。
証券会社とIFAの活用法
外国債券への投資を行うにあたって、主な窓口は、証券会社とIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)です。それぞれの特徴を理解して、ご自身の状況に合った窓口を選びましょう。
証券会社は、オンライン、オフラインを問わず、多くの商品を取り扱います。大手の場合は、国内外の多様な外国債券にアクセスできます。しかし、証券会社の担当者は職場の異動がある点に注意してください。個々の利益よりも、会社の販売方針が優先される可能性もあります。
IFAは、特定の金融機関に属さず、中立的な立場からアドバイスを提供します。富裕層の複雑な資産状況を踏まえた上で、長期的な視点でオーダーメイドのポートフォリオを構築します。一方で、信頼できるIFAを見極めなければなりません。そして、手数料体系を事前に確認することが大切です。投資経験や目的、求めるサポートの質に応じて、最適な窓口を選ぶことが、外国債券投資を成功させるための、重要な一歩になります。
外国債券と他の資産クラスとの比較
ここまで、外国債券の基本的な仕組みやリスク、富裕層にとってのメリットについて解説しました。これらの点を踏まえて、外国債券と主要な資産クラスとの比較を行いましょう。外国株式やJ-REIT(不動産投資信託)、金(ゴールド)などの資産は、異なるリスク・リターンの特性や収益構造を持ちます。
各資産の特性を調べることで、外国債券の強みや弱みが理解できます。ご自身のポートフォリオにおいて、どのような補完的な役割を果たすか、賢明な資産配分を行うための判断材料としてご活用ください。
資産クラス | 期待リターン | リスク | インカムゲイン | キャピタルゲイン | 流動性 |
外国債券 | 中 | 低~中 | 高 | 為替次第 | 高 |
外国株式 | 高 | 高 | 中~高 | 高 | 高 |
J-REIT | 中 | 中 | 高 | 中 | 高 |
金 | 中 | 中 | なし | 中 | 中~高 |
外国株式との違い(リスク・リターン)
外国株式と外国債券は、同じ外国資産への投資です。一方で、リスクとリターンの特性に明確な違いがあります。一般的に、外国株式は価格変動の幅が大きいです。短期的な値動きによるリスクが、高い傾向にあります。しかし、企業の成長や市場全体の上昇局面では、大きな値上がり益(キャピタルゲイン)が期待できます。インカムゲインによる高いリターンも見込めるでしょう。
外国債券は、株式に比べて価格変動が比較的小さいです。相対的にリスクが低い金融商品になります。その主な収益は、定期的に支払われる利子(インカムゲイン)と満期時の償還差益です。株式のような爆発的な値上がり益は、期待できないかもしれません。しかし、安定した収益を確保しやすい特性があるのです。
資産ポートフォリオにおいて、外国株式は積極的にリスクを取りながら、資産全体の成長を目指す役割があります。外国債券はリスクを抑えながら、安定的な収益を確保する役割を担います。これらの特性を理解しつつ、投資目標やリスク許容度に合わせて、バランス良くポートフォリオに組み入れましょう。
J-REIT(不動産投資信託)との違い(流動性・分配金)
J-REIT(不動産投資信託)は、オフィスビルや商業施設、住宅などの不動産に投資して、賃料収入や不動産の売却益を、投資家に分配する金融商品です。
上場しているJ-REITは、証券取引所で容易に売買できるため、換金しやすい資産と言えます。一方で、外国債券も市場で取引されるものは換金が可能です。しかし、銘柄や市場の状況によって、その容易さは異なります。
収益の源泉については、外国債券は主に発行体から支払われる利子(クーポン)が中心です。これに対して、J-REITの収益は、主に保有不動産からの賃料収入が原資となる分配金になります。J-REITの分配金は、賃料をベースとするため、株式の配当などに比べて、景気変動の影響を受けにくいのです。
J-REITの分配金利回りは、賃料収入に基づいています。その点が外国債券の利回りと異なるのです。直近では、J-REITの予想分配金利回りが5%を超える水準で推移する銘柄もあります。日本の10年国債利回りとの差である「イールド・スプレッド」が、投資判断の一つの目安になるでしょう。外国債券の利回りは、発行国の金利水準や信用力に左右されるため、J-REITとは異なる性質を持つと言えます。
比較項目 | 外国債券 | 金(ゴールド) |
インカムゲイン | 定期的な利子(クーポン)が得られる | 基本的になし |
キャピタルゲイン | 価格変動による(金利、為替などの影響) | 価格変動による(米ドル、インフレ、地政学などの影響) |
ポートフォリオでの役割 | 安定したキャッシュフロー、分散効果(安定化) | インフレヘッジ、価値保全(有事の金) |
金(ゴールド)との違い(インカム・値動き)
外国債券と金(ゴールド)は、どちらもポートフォリオにおける分散効果が期待できる資産です。しかし、収益の性質や価格変動の要因には、様々な違いがあります。
先述でも述べた通り、外国債券は、発行体が存続していれば、安定したインカムゲインが期待できます。これに対して、金(ゴールド)は保有しているだけでは、利子や配当などのインカムゲインを生み出しません。収益は主に売却時の価格上昇、つまり、キャピタルゲインに依存するのです。
価格変動の要因も異なります。外国債券の価格は、発行国の金利水準や為替レートの変動に影響を受けやすいです。一方で、金価格は、一般的に米ドルの値動きと逆相関の関係にあります。インフレ期待の高まりや、世界経済の先行き不安などが、主な要因となって変動する特性を持ちます。
ポートフォリオ内の役割として、外国債券は安定したキャッシュフローを提供します。株式などの資産と組み合わせることで、資産全体の分散効果を発揮するでしょう。金(ゴールド)は、インフレヘッジや「有事の金」として、経済が不安定な状況下での、価値保全の手段として役割が期待されます。流動性については、金の方が換金しやすい場合もありますが、外国債券の中には、高い流動性を持つ銘柄も存在します。
まとめ:外国債券を賢く活用することが盤石な資産基盤を築く
本記事では、外国債券投資の基本的な仕組みやメリットなどを解説しました。一方で、外国債券投資には、国内債券にはない特有のリスクがあります。これらのリスクを十分に理解し、適切に管理することが大切です。外国債券投資を成功させるには、不可欠な要素になります。。
賢明な外国債券投資を行うためには、まずは発行体の「格付け」を意識してください。通貨選びや投資する期間のバランスも非常に重要です。資産全体の外国債券の適切な組入比率についても、年齢やリスク許容度、投資目的を踏まえて、慎重に検討する必要があるでしょう。
多様な情報が溢れる中で、最適な外国債券を見つけて、ポートフォリオを構築する作業は、容易ではありません。そのような場合には、IFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)などの専門家の知見を活用することも有効な手段です。IFAは、個々の資産状況やニーズに合わせて、より個別具体的なアドバイスや情報提供が可能になります。
IFAによる専門家のサポートによって、外国債券をポートフォリオに組み入れることは、より安定的で強固な資産基盤を築くための手助けになるでしょう。

株式会社ウェルス・パートナー
ポートフォリオマネージャー
成蹊大学法学部卒業後、三菱UFJモルガン・スタンレー証券へ入社。富裕層と会社経営者を中心とした資産運用のコンサルティング業務に従事。 証券会社では金融資産に対しての提案しかできないことに違和感を感じ、金融資産だけでなく実物資産や相続対策を含めた資産全体の最適化提案がしたいと思い株式会社ウェルスパートナーに入社。富裕層、会社経営者の資産配分最適化。 具体的な金融資産の投資実行サポート。 資産管理会社設立から相続対策など税務最適化。 超富裕層のインターネット企業創業メンバーに特化した新規顧客開拓。