目次
はじめに
この2年ほどの間、円安が進行しており、長期的に見ても円安が進む可能性が指摘されています。為替の変動が外国債券運用へ与える影響は大きく、米ドル債券運用を考えている多くの方が不安を感じていることでしょう。しかし、円安が進む中でも米ドル債券に投資する富裕層の方が増えているのが実情です。本記事では、円安にも関わらず米ドル債券がなぜ魅力的な投資対象となるのかを解説します。米ドル債券で「安定した資産運用を実現したい」「高利回りの米ドル債券でインカムゲインを得たい」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
米ドル債券とは?基本を理解する
米ドル債券とは、アメリカ政府や企業が発行する債券です。定期的に利息が支払われ、償還(満期)時には、償還金が支払われます。
米ドル債券は流動性が高く、米ドルが基軸通貨であることから、資産保全の意味からも魅力的な投資対象です。
ただし債券である以上、デフォルトリスクがあるため、発行体や債券の格付には注意が必要です。また、発行体や期間をうまく分散することが大切です。
米ドル債券の利回りとその魅力
米ドル債券は、高い利回りが魅力です。参考までに2024年6月19日現在、米国債10年の利回りは約4.2%です。
▼参考:ロイター
https://jp.reuters.com/markets/bonds/
米ドル債券は、2024年に入ってから高い利回りを維持していますが、年内に1回程度の利下げが見込まれており、現在は利下げ前の絶好の投資タイミングといえるかもしれません。
米国経済の安定性と債券市場
アメリカは世界最大の経済大国であるため、マーケットが大きく、経済も安定しています。特に、米国債をはじめとした債券市場は世界最大の取引量があり、国債・社債問わず償還前に時価売却が容易であるため、流動的に資金を運用できるというメリットがあります。
また、アメリカはITや金融をはじめ、世界有数の企業が多数あり、国債だけでなく、優良な社債銘柄を選べるという点でも大きな魅力があります。
円安時に米ドル債券が注目される理由
冒頭で述べた通り、2年ほど前から円安が進行しており、長期的に見ても円安が進む可能性が指摘されています。
しかし、円安が進む中で米ドル債券が注目され、私たちウェルス・パートナーでも多くの方々から米ドル債券投資のご相談をいただいています。なぜでしょうか。
一言でいえば、「金利は為替よりも強し」ということです。
債券投資の利益は、主に2つの要素で決まっていて、1つは金利、もう1つが為替ですが、多くの投資家の方が「為替が与える影響よりも金利が与える影響の方が大きい」と考えているからです。
つまり、「高い利回りの債券は、円高に振れてもメリットが大きい」ということです。
ここで、詳しくシミュレーションを使って、米ドル債券投資の利益と為替について考えていきましょう。
こちらは、米ドル債券の損益分岐為替を表にまとめたものです。
損益分岐為替とは、米ドル債券に投資してから、「どれくらいまで円高に行ってプラスマイナスゼロ(損失が発生しない)なのか」という水準を表したものです。
前提条件として、年利回り5%の債券を想定しています。
経過年数0年(①)というのは最初の年です。つまり投資を始めたタイミングの為替と考えてください。
そこから、5年、10年・・・と損益分岐為替を記載しているので見て行きましょう。
0年(①)、投資した時の為替が150円だとします。5年後の損益分岐為替(②)がどれくらいになるかというと118.1円です。
したがって、当初のドル円150円のタイミングから32円くらい円高に行ったとしても、利回りや為替を通算すると利益でプラスマイナスゼロということです。
つまり、118円よりも円安になっているとすればトータルでプラス、円高になっていればトータルでマイナスということになります。
次に、さらに長期間運用を続け10年(③)ではどうなるかというと、損益分岐為替は91.4円です。91.4円よりも円安であればトータルの利益はプラス、円高に行っていればマイナスということです。
90円という為替は、なかなか考えづらいため、10年くらいまで運用することを考えると、「円高はほとんど怖くない」ということになります。
さらに、20年、30年と運用を続けていけば、損益分岐為替はどんどん切り下がります。
これが、「金利は為替よりも強し」ということであり、円安が進む中で米ドル債券が注目される理由といえます。
「円安時に米ドル債券が注目される理由」については、次の動画で詳しく解説しています。ぜひ、ご覧下さい。
米ドル債券の選び方
ここまで米ドル債券に投資した方がよい理由について解説してきましたが、「どの米ドル債券を選べばよいか」と気になる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、米ドル債券の種類と選ぶポイントについて解説します。
米ドル債券の種類
米ドル債券の種類はさまざまですが、ここでは分かりやすいように、大きく分けて次の3つの種類に分類します。
・米国債
・普通社債
・劣後債
ご存じの通り米国債は、アメリカ政府が発行する債券です。安全性(格付け)が高く、安定運用を好む方に向いています。
普通社債とは、アメリカ企業が資金調達のために発行する債券です。米国債より高い利回りが魅力ですが、米国債よりも発行体格付けが高い社債もあります。このため、発行体選びはとても大切なポイントになります。
劣後債とは、社債の中でも、倒産した場合の元本と利息の支払い順位が低い(劣後する)社債です。金融機関が発行するケースが多く、高い利回りが特徴ですが、倒産時には元本毀損リスクが高いため注意が必要です。
米ドル債券の選び方と注意点
米ドル債券へ投資する場合、もっとも大きなリスクは発行体の破綻です。このため、発行体の格付けは、米ドル債券選びで重視すべきポイントといえるでしょう。
画像引用元 : https://www.jsda.or.jp/jikan/image/qa/img_qa_046.png
米ドル債券へ投資する際は、「投資適格」とされる発行体を選ぶことが原則です。
また、発行体の破綻リスクを避けるためには、銘柄の分散も必要です。例えば、次のように、利回り5%の債券でAからJまで10の発行体に分散投資した場合で考えてみましょう。
この場合、1つの発行体につきリスクが10%ということになるため、万が一、その発行体が倒産したとしても、債券ポートフォリオ全体に与える損失は10%ということになります。つまり、他の債券の2年分程度の利金で回収できるくらいまでリスクを分散ができるということになります。
【事例】円安時代の米ドル債券ポートフォリオ構築
最後に実際の米ドル債券ポートフォリオ構築事例をみてみましょう。
これはミドルリターン・リスク型という、普通社債に期限付き劣後債を加えて、利回り5%を目指したポートフォリオです。
ポートフォリオ設計のポイント
まず、債券種類(①)ですが、普通社債と期限付き劣後債をミックスしたものになっていて、15債券中9債券が普通社債で、6債券が期限付劣後債という割合です。組み合わせの割合から考えてもミドルリターン・リスク型といえるでしょう。
注目したいのは、投資金額(②)です。合計3億円のポートフォリオですが、2,000万円ずつ15債券に分散して、発行体の倒産リスクを避ける設計になっています。
債券の残存年数(③)は平均で15.5年です。やや長い残存年数ですが、これは高い利回りで長期間固定するためです。
格付け(④)は、平均で債券格付けがBBB+、発行体格付けがA-です。債券格付けが低いのは、一部劣後債を組み入れているためです。
利回り(⑤)は平均で5%です。これは多くの債券投資家の方が求める、それなりに高い水準です。
なお、平均5%の利回りを比較的低いリスクで実現できているのは、現在の金利水準が高いためです。
今後、アメリカで利下げが行われた場合、5%の利回りを目指すためには、「期限付劣後債の割合を増やす」「(一段階ハイリスク・ハイリターンの)永久劣後債を組み入れる」などの工夫が必要になってくるかもしれません。
債券ポートフォリオ構築方法については、次の動画で詳しく解説していますので、ぜひご覧下さい。
まとめ:円安時における米ドル債券投資
円安でも米ドル債券に投資をしたほうがいい理由について解説しました。
本文中で触れた通り、ポイントは債券投資において「為替が与える影響よりも金利が与える影響の方が大きい」という点です。
つまり、金利が高い時期に投資するメリットは大きいということです。
現在は、歴史的にみても米ドル債券の利回りが高い状況にあり、まさに投資に最適のタイミングといえるでしょう。
ウェルス・パートナーでは、経験豊富なアドバイザーが無料で米ドル債券投資の相談を承っております。ぜひ、気軽にご連絡ください。
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株式会社ウェルス・パートナー
ポートフォリオマネージャー
早稲田大学国際教養学部卒業後、大和証券株式会社へ入社。富裕層と会社経営者を中心とした資産運用のコンサルティング業務に従事。顧客の資産全体の最適化や会社経営者への相続対策まで支援をしたいという思いがあり、株式会社ウェルスパートナーに入社。