目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回は、「証券担保ローンの『デメリット』をぶっちゃけで話します」というテーマをお届けいたします。
今回は、金融商品のデメリットについて、ぶっちゃけて話すというテーマになのですが、お話したいのは証券担保ローンという、株や債券など有価証券を担保にして金融機関で借入を行う機能についてです。
証券担保ローンは、「借りたお金を何に使ってもよい」という商品なのですが、富裕層の方だとご自身の様々な用途に使ったり、借りたお金で再投資したりという用途で利用されることが多いです。
しかし、証券担保ローンは扱い方を間違えると大きなリスクを背負ってしまったり、投資リスクが増大しすぎたり、資産配分そのものが偏ってしまうということにもなりかねません。
例えば、海外のプライベートバンクで証券担保ローンを利用した方なのですが、過度の借入れを行い運用したことで、資産を全て失ってしまったり、そういう話を聞くこともあります。私自身のお客様でそのようなことはないのですが、似たような話を聞くことが結構あります。
したがって、過度のリスクを取らずに証券担保ローンで運用して行くのがよいと思いますので、今回は証券担保ローンのメリットは一旦置いておき、デメリットやリスクだけにフォーカスして解説できればと思います。
そして、デメリットを理解していただき「自分には合わない」「リスクが高すぎる」「怖い」と思うのであれば証券担保ローンは合わないと思いますので、使わないという判断をして頂いても良いですし、メリットの方が上回っていると思うのであれば、証券担保ローンを活用していただければと思います。
4つのデメリット
それでは証券担保ローンのデメリットについて紹介します。細かいことをいうと他にもあると思うのですが、主にいうと次の4つが証券担保ローンの大きなデメリットだと思いますので、1つずつ紹介して行きたいと思います。
借入金額に応じて投資リスクも増大
1つ目です。「借入金額に応じて投資リスクも増大する」というのが大きなデメリットです。
「当たり前ではないか」と思われるかもしれませんが、「本当に理解できていますか」という話です。
例えばですが、1億円の手元資金があって5,000万円借り入れをして、その借入金も運用して合計1億5,000万円で運用します。自己資金1億円で、1億5,000万円を運用するわけです。
そうすると、1.5倍のレバレッジをかけて運用しているので、上手くいったとき、つまりプラスになった時の利益は1.5倍になるのですが、マイナスになった時の損失も当然1.5倍になる、ということを本当に理解しているのかどうかということです。
例えば、パフォーマンスでいうと、レバレッジをかけている場合、リターンが10%だとしたら、1.5倍なので15%のリターンですが、マイナス10%になると当然、リターンもマイナス15%になるわけです。
では、マイナス50%、ないと思いますが、仮にマイナス50%になったとすると、1.5倍なので運用のリターンもマイナス75%となるわけです。
つまり、資産が4分の1になるという可能性があるわけです。したがって、その借入した割合に応じて、リターンも増大しますが、そのまま投資のリスクも増大している。それを本当の意味で理解する必要があります。
これが株の運用であれば、値上がり・値下がりがそのまま利益なのですが、債券でも近いことがいえます。債券はもちろん、最後まで持ちきれば確定利回りになるのですが、米ドル建てであれば、為替のリスクなどもあるわけです。その為替リスクなども、1.5倍のレバレッジをかければ、当然1.5倍になるということなので、借入して投資している分、すべてのリスクが増大していると認識する必要があります。
外貨・特定資産比率の過度な上昇
2つ目です。外貨や特定資産比率の過度な上昇というのも大きなデメリットです。
なぜ外貨比率が上がってしまうのかというと、証券担保ローンを利用するときは円で借りるのですが、多くの場合、外貨資産に投資されることになります。日本の株や国内不動産に投資すれば外貨比率は上がらないのですが、借りたお金を外貨の株式やドル建ての債券などに投資をすると、「日本円で借りて来て外貨に投資している」ので外貨比率が上昇するわけです。
通常の状態であれば、外貨は50%から60%くらいがちょうど良いとお伝えしているのですが、証券担保ローンを使って外貨に投資をすると、例えば70%から80%とか、すごく借入をして外貨に投資すると、100%を超えるような比率までになることがあります。このため、過度に外貨比率が上昇している場合には注意が必要で、そうならないように工夫する必要もあります。
また、借入したお金で株に投資すると外貨とともに、株式の比率が過度に上昇したり、債券ばかりであれば債券の比率が上昇しますので、外貨や特定資産の比率が過度に上がってしまうことにより、リスクが偏在してしまうことがあります。こういった資産配分上の問題というのが2つ目のデメリットになるわけです。
日本の金利上昇による借り入れコスト増大・円高リスク
3つ目です。日本の金利上昇による借り入れコスト増大・円高リスクもデメリット一つです
証券担保ローンを利用している方にとって、間違いなく一番のデメリット、経済的なリスクというのが日本の金利上昇だと思います。
証券担保ローンは、借入コストがだいたい1%から1.5%くらいという方が多いのですが、日本の円で借入をしているため、日本の金利が1%上がったらそのまま借入コストも1%上がるわけです。もし、日本の金利が2%上がると、借入コストは3%から3.5%になります。
例えば、もともと資産を4%で運用できているとした場合、証券担保ローンの金利が1%であれば差引き3%が年間の利益になります。一方、借入金利が3%になると4%で運用できていても、差引き1%の利益しかないわけなので、借入して運用している意味があまりなくなってしまい、「証券担保ローンは必要ない」という状況になってしまいます。
あとは、日本の円金利が上がると、もう一つマイナスなのが、「円高に行く傾向がある」ということです。日本の円の金利が上がった場合、(アメリカの金利が変わってないとすると)アメリカとの金利差が縮小するわけです。そうすると米ドル安・円高に行く傾向がありますので、円高になるわけです。
先ほどお話したように、日本円で借りて外貨で運用することが多いので、外貨比率がかなり上昇している場合が多く、そうすると(お金を借りて運用した)資産の価値が下がってしまうということになるため、実は証券担保ローンを利用される方にとって、最大の経済的リスクはまさに日本の金利上昇と言えます。
「日本の金利上昇による借入コスト増大と円高リスク」、これはダブルパンチでくることになるので、特に注視する必要があると思います。したがって、証券担保ローンを利用している方が何を気にすればよいかというと、やはり「日本の金利が上がらないかどうか」ということや、「上がる傾向があるのであれば、証券担保ローンどうするのか」というのを真剣に考え、必要であれば対策が講じることが重要だと思います。
担保割れによる資産運用の強制終了
4つ目です。「担保割れによる資産運用の強制終了」、これは証券担保ローンを利用している方ならではのリスクになります。手元にある資金だけで運用しているのであれば、担保割れなど起きることは無いわけですから、証券担保ローンを利用しているからこそ起こりうるリスクそのものになります。
担保にしている資産価値が下落して「担保割れ」という状態になってしまうと、借りているお金を返さなければいけないとか、もしくは追加で担保を差し入れる必要があり、それができないと強制的に担保資産を売却されるということになりますので、「資産運用が強制終了されてしまう」ということになるわけです。これが最悪のパターンです。
今までの過去の資産の上げ下げ、トラックレコードなどを見ていても、リーマンショックで一時的に株が下がっても、その翌年とか翌々年まで持っていると、結構上昇して復活していると思います。したがって、運用というのは、一時的に下がったとしても、そのまま持ち続けていればパフォーマンスが改善するといえます。つまり、最悪なのが、「下がってしまった時に全部売却しなくてはいけない」という状況です。
「担保割れになって返済できないし、追加で担保を入れられない」という状態になってしまうと、強制売却されて「最悪の状態で運用をやめなくてはいけない」ということなのです。
したがって、「担保割れという状況だけにはならないようにする必要がある」というのが証券担保ローンを使う場合の鉄則であり、セオリーといえます。
このため、担保割れにならない程度の余裕を持った借入額を設定するとか、担保価値がどれくらい下落するのかというシミュレーションを行ない、担保にしている資産に対して「30%から40%の下落余力で充分やっていけるのかどうか」という管理を行う。また、万が一担保割れになってしまった時に、担保資産以外の余剰資産で返済できるか、追加で担保に入れる資産があるかどうかという確認であったり、そういう設計を綿密にしなくてはいけないと思います。
もちろん、自己資金で運用している場合は、担保割れなど考える必要はないわけです。したがって、担保割れのリスクは、証券担保ローンを利用しているからこそのデメリットといえます。
これらが「証券担保ローンの4大デメリット」なのですが、このようなデメリットを知った上で、「自分にはリスクが大きすぎる」とか、「ここまでいろいろ考える必要があるのならできない」ということであれば、証券担保ローンを使わない方が良いと思います。
しかし、デメリットを考慮したとしても、「使うメリットの方が上回る」ということであれば、検討する価値はあると思いますので、メリットとデメリット両面を天秤にかけながら判断するのが良いと思います。
今回は、「証券担保ローンの『デメリット』をぶっちゃけで話します」というテーマをお届けしました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中