リスクを把握した上で考える不動産投資のメリットとデメリット

はじめに

不動産投資は、安定した資産形成の方法として注目を集めています。しかし、投資には常にリスクが伴います。不動産投資の成功のためには、メリットとデメリットをバランス良く把握することが重要です。この記事では、不動産投資を行う際に把握しておくべきリスクと、不動産投資がもたらすメリットについて詳しく解説します。

不動産投資のリスクとは

不動産投資にはいくつかのリスクが存在します。主だったリスクは以下になります。

空室リスク

物件に入居者が入らず空室が続いてしまうと、家賃収入が得られず、収益が減少します。不動産投資最大のリスクといえるものです。

空室リスクを回避するには、賃貸需要が旺盛で競合物件が少ない立地を選ぶことが重要です。入居者ニーズに適合した間取り・設備を用意することも重要。顧客満足度の高い賃貸管理・建物管理も心がけましょう。

家賃滞納リスク

入居者が家賃を滞納した場合、想定した収益が減少することになります。滞納した家賃を回収するための労力は大変なもので、滞納した入居者が居室に居座り続けると、新しい入居者を募集できない機会損失にもつながるでしょう。

最終的には、建物明渡し訴訟において勝訴判決を勝ち取らないと退去させることができないので、そこにかかる人的・金銭的コストは莫大なものになります。

老朽化と修繕リスク

建物・設備は経年劣化し、適宜修繕や交換が必要です。適切な建物管理とメンテナンス、修繕が行われなければ、建物の不具合が進行し修繕・工事費用がさらに膨らむ可能性があります。建物の不具合を放置していると物件価値が下がり、入居者が離反してさらに家賃収入が減少する「負のスパイラル」に陥ってしまうでしょう。

流動性リスク

不動産は比較的流動性が低く、急な資金需要に対応することが難しい側面があります。売却するには一定の時間がかかるため、投資家は物件の取得前から資金計画をしっかりと立てる必要があります。

災害リスク

自然災害や火災などによって物件が損壊するリスクがあります。自然災害・火災に対しての備えは、保険をかけることが一番重要です。また、津波・水害に関しては、自治体が発表しているハザードマップを確認し、発生しにくいエリアを選ぶことができます。

不動産投資のメリットとは

一方、不動産投資には以下のようなメリットがあります。

長期的な安定収入

不動産投資は入居者に物件を賃貸することにより、家賃収入を得るビジネスモデルです。家賃は人々の生活に根ざしたものであるので、あまり景気動向に左右されません。物件選択さえ間違えなければ、長期にわたって安定した家賃収入を得ることができます。

投資家が本業の定年退職を迎えた後も家賃収入は続くので、私的年金とすることができるのも魅力です。

融資を活用したレバレッジ効果

不動産投資には一般的に高額な資金が必要ですが、金融機関による融資を活用することができます。自己資金を大きく上回る資金規模の投資ができるので、リターンもそれに比例して大きくなります。自己資金のみで運用するよりも投資効率が良くなるレバレッジ効果（テコの原理の効果）が得られることが、不動産投資の醍醐味といえます。

所得税の節税効果

不動産投資は所得税（住民税）の節税につながることがあります。

不動産投資を行って家賃収入を得ると確定申告をします。不動産所得は減価償却という会計処理によって、実際にはお金が出ていかない赤字決算を申告することができるのです。不動産所得を給与所得・事業所得などの本業の所得と損益通算することで、課税所得が圧縮されます。

この所得税の節税方法は、高所得の人ほど効果が大きいものとなります。

相続税対策

不動産は相続税課税の対象となりますが、現金や金融資産と評価方法が異なるため、相続税の節税に役立つことがあります。

現金や金融資産は時価100％が相続税評価額となりますが、不動産は時価で評価をしません。土地部分は相続税路線価（または倍率方式）で、建物部分は固定資産税評価額が決まります。賃貸不動産はここから借地権割合、借家権割合が差し引かれますので、相続税評価額を大きく圧縮させることができ、相続税額を押し下げることができるのです。

生命保険代わりになる

金融機関から融資を受ける際、団体信用生命保険（団信）に加入することが一般的です。団信は加入者が死亡、または高度障害になった場合ローン残債が免除される保険。団信の保険料は金利に含まれていますので、新たに手出しをすることなく生命保険に加入できることになります。

インフレに強い実物資産

不動産は長期的に見るとインフレに強い傾向があります。現金・預貯金はインフレに対し無力ですが、不動産は実物資産なので基本的にインフレと連動して価格が上昇するものです。

事実、不動産価格は毎年上昇しています。国土交通省が定める不動産価格指数は2010年を100とした指数ですが、直近の令和5年第3四半期分の調査ではマンション・アパート（一棟）が157.8、マンション（区分所有）が193.9となっています。

出典：国土交通省　不動産価格指数（令和5年10月・令和5年第3四半期分）を公表

不動産投資のメリットとデメリットのバランス

不動産投資を行う際には、リスクとメリットのバランスを考慮することが重要です。リスクとメリットを比較し、投資家のリスク許容度や投資目的に合わせて、適切な投資戦略を構築する必要があります。また、リスクを最小化するためには、立地や物件の情報を綿密に調査し、入居者管理や建物管理を適正に実施することが不可欠です。