目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回は「資産運用プロだからわかる米ドル債券の「デメリット」とは?」という内容をお届けします。
これまで、さまざまなお話をさせていただいてきましたが、最近は、特に米ドル債券に関する話が多くなってきました。
しかし、米ドル債券のメリットについては、よく解説しているのですが、デメリットについての話は、あまりしてきませんでした。
やはり、投資というのはメリットとデメリット、どちらも理解した上で、検討を重ねて行うのが正しいと思いますので、今回は米ドル債券のデメリットだけにフォーカスして話をさせていただければと思います。
米ドル債券のデメリットは5つ
早速ですが、米ドル債券のデメリットをお話していきたいと思います。
もっと他にあるかもしれないのですが、私の中でまとめますと次のようになります。
デメリット1 : 発行会社が倒産した時の回収率は高くない
1つ目のデメリットは発行会社が倒産したときの回収率が高くない点です。
やはり、債券最大のリスクは、債券を発行した会社が倒産することです。これが最大のリスクであり、デメリットになります。
倒産したときに、お金がどれくらい返ってくるのか。投資したお金が1,000万円だとしたら、1,000万円のうち200万円返ってくるのか、300万円返ってくるのか、このように倒産したときにお金がどれくらい返ってくるかというのを回収率と呼ぶのですが、実はこの回収率があまり高くありません。
発行会社が倒産して、8割や9割のお金が戻ってくるのかといえば、そんなに戻ってくる可能性は低いです。
どれくらいのお金が返ってくるのか?平均の基準なのか?といえば、明確な統計データはありません。
しかし、過去に倒産した会社の回収率を書籍など、いろいろなものから推計すると、普通社債、いわゆるシニア債と呼ばれる普通の債券で、投資金額の大体3割〜4割くらいになる可能性が高いといわれています。
これに対して、倒産したときの弁済順位が普通社債よりも遅い債券、つまり劣後債だと大体1割〜2割くらいといわれることが多いので、それくらいのイメージで投資する必要があります。
このように、倒産したときの回収率は高くないので、倒産したときのリスクはかなり高いと考えて、発行会社をしっかり選定していく必要があると思います。これが1つ目のデメリットです。
デメリット2 : 円金利上昇による円高には無抵抗
2つ目のデメリットは、円金利上昇による円高には無抵抗ということです。
どういうことなのか説明します。アメリカの金利が下がった場合、確かに為替はドル安円高に行く可能性が高いです。日米の金利差が縮小して、ドル安円高にいくということです。
ただし、世の中(アメリカ)の金利が下がるということなので、すでに購入している債券の価格は上昇する可能性がありますから、その為替のマイナスと債券価格の上昇が通算されることによって、円高に対する抵抗力があるということになります。
これは、私がよく説明していることなのですが、あくまでも「アメリカの金利が下落した場合」の債券価格上昇です。
これとは逆に円の金利が上がることもあります。円の金利が上昇すると、この場合も日米の金利差が縮小しますので、ドル安円高になります。
ただし、この円の金利上昇によるドル安円高というのは、アメリカの債券の価格には関係がありません。
円高になったとしても、円の金利が上昇しているだけなので、ドル建ての債券の価格は上昇しません。
債券の時価は、為替と債券価格のトータルで評価するのですが、この場合(円金利上昇によるドル安円高)は、単純に為替だけマイナスになって、債券価格は変わらないということです。
したがって、米ドル債券は円の金利上昇による円高には無抵抗ということがいえます。
これが2つ目のデメリットだと思います。
デメリット3 : 期間が長い債券ほど価格変動(リスク)が高い
3つ目のデメリットです。最近よく解説させていただいている期間が長い債券についてです。
期間が10年や20年、30年などの超長期債と呼ばれる債券があるのですが、現在は世の中の金利が高い状態なので、期間の長い債券で高い金利の恩恵を長期間享受したいという考えをもって、超長期債に投資される方が多いです。
しかし、実は期間が長い債券ほど、価格変動率、つまりリスクが高いのです。
金利が下がるともちろん債券の価格は上昇するのですが、逆に金利が上がると債券の価格は下落する可能性が高いです。
そして、金利が上がったときの価格の下落率ですが、期間が長い債券ほど下落します。
金利が動いたとき、例えば金利が1%上昇した場合で考えてみましょう。
アメリカの金利が1%上昇したとすると、例えば期間20年の債券であれば10%以上、30年の債券であれば15%くらい下落する可能性が高いです。
期間が短い債券は、逆に金利が上昇してもそこまで価格が下がらないのですが、期間が長い債券ほど価格変動率、価格のボラティリティ、値動きが激しくなります。
債券は期間が短いほど、金利による値動きは少なくなるのですが、最近は期間が長い債券に投資される方が多くなっているため、実は価格変動のボラティリティや値動きによるリスクを取っていると理解した方がいいと思います。
もちろん価格が大きく変動しても、満期まで保有するという前提であれば、債券は100で発行されて100で返ってくるので問題ありません。
しかし、20年とか30年の債券だと、途中で何があるか分からないので、もし万が一売却したいときに価格が下落しているリスクもあると考えた方がいいと思います。
これが3つ目のデメリットです。
デメリット4 : 流動性は高いが短期売買に向かない
4つ目のデメリットは、流動性は高いが短期売買に向かないという点です。
米ドル債券は流動性が高いです。売却しようと思い、証券会社に売却の注文を出すと、数日くらいでドルのキャッシュで戻ってきて、そのドルも円にするのに1日くらいでできるので、1週間あればドル建ての債券が円のキャッシュになるということで換金性という意味での流動性は非常に高いです。
しかし、米ドル債券はあまり短期売買には向いていないです。
株などのように、今日買って明日売るとか、同日中に売ったり買ったりするなど、そういうことには向かない金融商品が米ドル債券といえます。
なぜかというと、売りと買いの価格が結構離れているからです。株式などであれば、1,000円で買い、同日中に1,000円で売るというのは十分あり得ると思います。
ただし、債券は株式ほど流動性が高くありません。
4つ目のデメリットは、流動性は高いが短期売買に向かないという点です。
米ドル債券は流動性が高いです。売却しようと思い、証券会社に売却の注文を出すと、数日くらいでドルのキャッシュで戻ってきて、そのドルも円にするのに1日くらいでできるので、1週間あればドル建ての債券が円のキャッシュになるということで換金性という意味での流動性は非常に高いです。
しかし、米ドル債券はあまり短期売買には向いていないです。
株などのように、今日買って明日売るとか、同日中に売ったり買ったりするなど、そういうことには向かない金融商品が米ドル債券といえます。
なぜかというと、売りと買いの価格が結構離れているからです。株式などであれば、1,000円で買い、同日中に1,000円で売るというのは十分あり得ると思います。
ただし、債券は株式ほど流動性が高くありません。
したがって、この売りの値段と買いの値段が結構離れています。比較的流動性が高いと言われる米ドル債券でも、買いの値段が97だとしたら、売りが99くらいというのが一般的です。
したがって99で買いましたという場合。売りが99なので、すぐに買いたい人が99で買ったとします。この債券をすぐに売りたいと思ったら、売るときの値段は97になってしまいます。つまり、すぐに売ったら2%マイナスになってしまうということです。
この売りと買いの価格の差をスプレッドと言うのですが、スプレッドがやはり株式と違って大きいというのが債券の特徴で、短期売買に向かない理由なのです。
これも手数料を考慮していない価格なので、ここに証券会社の手数料が数%くらい乗ってくると、買ってすぐに売却した場合は、かなり損失が出る可能性が高くなってきます。
したがって、米ドル債券は短期の売買に向いてなく、基本的には長期で保有して、スプレッドなど売買によるコストと関係なく、リターンを得ていくという長期投資の考えになっていくわけです。
これが4つ目のデメリットです。
デメリット5 : 独学での債券ポートフォリオ設計が難しい
5つ目のデメリットは、独学での債券ポートフォリオ設計が難しいという点です。
ここまで解説した内容を踏まえて、やはり債券に関しては、個別の債券、1つの債券に投資するのであれば、自分の好みに合っている、期間10年で10年後に返ってくる三菱が発行している債券がよい、トヨタが発行する債券がよい、という投資は比較的簡単にできるかと思います。
一方で、個別の米ドル債券に投資する場合は、基本的に一つの債券だけではなく、発行体リスクを分散して多くの債券に、ポートフォリオで投資するというのが一般的です。
10の債券とか、投資金額が大きい場合は20の債券から30の債券、50の債券に投資している方もいらっしゃるのですが、この債券ポートフォリオの設計が結構難しいです。
特に難しいのが発行会社選びです。発行会社の選定で、どういう会社であれば大丈夫で、このポートフォリオで自分の考えに合っているのかの選定など。あとは期間設計です。
何年ごとにお金が返ってくる設計にすれば良いのか、現在の市況環境にどれくらいの平均残存年数、つまり債券のお金が返ってくる期間を平均で何年にすれば今の市場に合っているのかなどです。
これらの期間設計や発行会社選びというのは非常に難しいところで、全体のバランスを考えながら整えていくっていうことになるので、やはり独学で債券ポートフォリオ設計をするのがなかなか難しいというのが米ドル債券投資のデメリットの一つであると思います。
したがって、ポートフォリ設計に関してプロのアドバイザーの方にアドバイスいただいていく必要がありますので、普通にネットで債券を購入するよりは、少しコストが高くなるという側面は出てくるかと思います。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中