目次
はじめに
最近、アメリカ10年国債の利回りが4%を大きく超えるなど、債券市場において金利の上昇が注目を集めています。このような状況の中、債券ポートフォリオを構築する際に「米国債だけで十分なのではないか?」という疑問を持つ方も多いことでしょう。しかし、このような高い利回りが得られる状況であっても、基本的には米国債以外にも投資すべきであると考えています。本記事では、債券ポートフォリオを最適な形で構築するためには、米国債だけではなく社債への投資も考慮すべき理由について解説します。債券市場の変動やリスクを適切に分散するためには、多様な債券に投資することが必要です。債券ポートフォリオを最適化するためには、さまざまな観点から投資銘柄を分散することが大切です。
債券ポートフォリオを構築する際の基本
債券ポートフォリオを構築する際には、以下のことに気をつけて取り組むことが重要です。
ポートフォリオ分散の重要性
債券ポートフォリオを構築する際に、もっとも重視しなければならないのは、発行体の分散です。
最近の話でいえば、アメリカの債務上限問題が浮上して大きな話題となりました。結果的にデフォルトは回避されましたが、米国債がデフォルトに陥る可能性はゼロではありません。
では、仮に米国債がデフォルトに陥った場合、アメリカの社債はどうなるのでしょうか。
結論からいえば、発行体が別なので社債がデフォルトに陥ることはありません。
したがって、米ドル債券に投資する場合、米国債だけでなく社債にも投資する方がリスクヘッジとして有効です。
米国債がデフォルトに陥る可能性は限りなく低いと考えていますが、それでも発行体の集中はリスク要因となります。
長期・短期債券のバランス
債券ポートフォリオには、長期債券と短期債券のバランスをとることが重要です。長期債券は利回りが高い反面、金利の変化に大きく反応するというデメリットがあります。一方、短期債券は利回りが低いですが、金利による価格の変動リスクが低い特徴があります。このため、長期・短期債券をうまくポートフォリオへ組み入れるのがベストなのです。ただし、これには一つ問題があります。
米国債だけに投資先を絞ると、投資できる銘柄が限られるため、期間分散が十分に働かない場合があるのです。
このため、安全性を重視するのであれば、米国債中心で債券ポートフォリオを組み、期間の異なる社債を組み入れることで、この問題に対応するのが良い方法ではないでしょうか。
社債については、格付けA-以上の中から選択し、株式時価総額や直近3期程度の決算状況なども考慮するのがよいでしょう。
リスクとリターン
債券投資ということで、安全性の高い米国債だけに投資する方も多いですが、これでは機会損失といえるかもしれません。
具体的には、格付けの高い企業の社債に投資し、若干のリスクをとることで、5%以上の利回りを狙うことができます。
つまり、米国債に比べおよそ1%程度利回りが高いということになりますが、利回りが4%から5%になるということは、年間のリターンが20%アップするということなので、社債に投資する価値は十分にあるといえるでしょう。
米国債のみのポートフォリオの問題点
米国債だけでポートフォリオを構築することには、以下のような問題点が存在します。
金利リスクへの過度の感応性
米国債は、金利の変動に敏感な特徴があります。市場金利が上昇すると、米国債の価格が低下し、資産価値が減少する可能性があります。このため、米国債のみのポートフォリオは金利変動に伴い資産が毀損するリスクがあります。
カントリーリスクによるポートフォリオの脆弱性
米国債は安全性の高い資産ですが、それでも単一国の債券に投資するということで、カントリーリスクは存在します。
仮に、アメリカ国内で経済的・地政学的問題が発生した場合は影響が避けられません。
このため、国や地域を分散して投資することが大切です。
インフレリスクの高まり
米国債に限らず、債券は原則的に額面価格で償還されるため、インフレに対応することができません。
特に10年、20年と期間の長い債券へ投資する場合は、想定する利回りが一定のインフレに見合ったものかを考慮する必要があります。
インフレに対応するには、債券だけでなくインフレに強い株式や不動産などと組み合わせて投資することが必要となります。
社債への投資のメリットと注意点
債券ポートフォリオに社債を組み入れることには、以下のようなメリットがあります。
リスクとリターンのバランス
社債は国債に比べて高い利回りが魅力です。適切にリスク管理を行いながら、社債を組み入れることで、ポートフォリオのリターンを向上させることができます。
信用リスクへの対応策
社債へ投資する際には、発行体の信用力を考慮する必要があります。信用格付などを参考に、信頼性の高い発行体の社債を選ぶことが重要です。
また、信用格付けだけでなく直近の決算状況や財務内容も考慮することが重要です。
加えて、分散投資を行うことにより、信用リスクを分散させることも有効な対策です。
リスク分散のための業種・発行体の選定
ポートフォリオに、異なる業種や発行体の社債を組み入れることで、リスクを分散させることが大切です。景気や業績の変動に対して影響を受けにくい業種や信頼性の高い発行体を選ぶことがポイントです。
例えば直近で考えると、新型コロナの流行でエンターテイメントや飲食に関する企業の中には業績が大幅に悪化したケースもみられます。
このため、発行体の業種を分散させることは、リスクヘッジ上大切なことといえるでしょう。
最適な債券ポートフォリオの構築方法
最適な債券ポートフォリオを構築するためには、以下のポイントに注意しながら取り組むことが重要です。
米国債と社債の割合の決定
ポートフォリオ内での米国債と社債の割合を決定する際には、自身の投資目標やリスク許容度を考慮してバランスを取ることが重要です。リスク回避を重視する場合には、より多くの米国債を保有する方が適しています。
ポートフォリオのリバランス戦略
当初、適切な資産配分を行った場合でも、資産価値の変動によって資産配分が崩れてくる場合があります。適切な資産配分を守り、安定的に資産を運用するには、定期的にポートフォリオのリバランスをすることが重要です。
ただし、ポートフォリオのリバランスには専門的知識と経験が必要なため、自分でリバランスを行うのが難しいのであれば、IFA(資産運用アドバイザー)など、プロに相談するのがよいでしょう。
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