皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
目次
はじめに
本日のテーマは、「現役開業医が実践する2.4億円の米ドル債券投資」です。今回は、現役開業医の資産運用実例についてお話しさせていただきます。米ドル債券投資への分散投資、債券ポートフォリオを作成して運用する実例のお話ですので、ぜひご参考になさってください。
先生のご要望
まずは、開業医の先生から最初にいただいたご要望を簡単にお伝えします。ポイントを4つにまとめています。
1つ目は、開業医の先生が今まで収入で貯めてきた余剰資金(現預金)が2.4億円あるので、そのまま運用したいというご要望です。
2つ目は、今、アメリカドルの利回りが上昇しているのをニュースやメディアなどで知り、「今が米ドル債券への投資のチャンスではないか」「米ドル債券に投資したい」という具体的なご要望をいただきました。
3つ目は、リスク許容度のご要望です。開業医の先生ですので、収入がかなり高く、毎年6,000万円ほどの収入があります。また、今までに蓄積した余剰資金もたくさんあるということで、リスク許容度が高いと考えています。ですから、2.4億円の運用に関しても、そこまでリスクを取らずに低い利回りを狙いにいくより、リスクを取ってもよいので比較的高い利回りを狙いにいく、という考えの投資をしたいとのご要望です。
4つ目は、具体的な目標の年利回りがほしいとのご要望をいただいたので、債券に分散投資した債券ポートフォリオの年利回りで平均6%以上を目指すという目標を設定しました。6%の年利回りは、難しくはないですが簡単でもない、少し工夫が必要な目標です。普通に債券格付けA-以上で運用すると生み出すのは難しい年利回りですので、どこでリスクを取って年利回り6%を作り込んでいくのかを考慮し、こちらの先生の債券ポートフォリオを提案しました。
米ドル債券ポートフォリオ設計例
こちらが実際の米ドル債券ポートフォリオ設計例です。
2.4億円の債券投資ですので、1銘柄1,500万円で16債券に分散投資しています。残存年数(お金が返ってくるまでの期間)が短い順に上から並べています。左側の発行会社は、発行している会社の業種と国です。投資・保険会社・自動車・通信・銀行など、いろいろな国と業種の会社に投資しています。債券種類は普通社債が多く、一部は劣後債(会社が倒産した時にお金が返ってくる順番が普通社債よりも遅いリスクを取っている債券)も入れています。通貨は全て米ドル、金額は1,500万円です。
債券格付けは、基本的にBBBの債券が多いですが、いくつかBBやBB+という低格付債といわれる債券もあり、逆に格付けが高いA-の債券も一部入っています。こちらの債券ポートフォリオ全体の平均格付けはBBBになっています。残存年数は、4.5年・5年・7年・9年、10年代は4債券、20年以上の債券はNo. 11~No.16の6債券です。こちらの債券の残存年数は比較的高めで、平均すると15年になります。普通に何も考えずに債券ポートフォリオを組むと12~13年程度になると思いますので、若干長めに設定しています。この狙いは後ほどご説明します。
最後に、重要な年利回りです。債券によって年利回りはさまざまですが、低くても5%以上はないと、平均年利回り6%は難しいので、基本的に5%以上の年利回りの債券が中心になっています。6%台も多く、一部7%・10%の年利回りが出る債券も入れることで、こちらの債券ポートフォリオの平均年利回り全体を底上げしているイメージです。平均利回りは6.1%になっていますので、目標の6%は達成していると言えます。16債券に投資して、平均年利回り6.1%、平均残存年数が15年、債券格付けが平均BBBという米ドル債券ポートフォリオ設計になっています。
ポイント
今回の「現役開業医が実践する2.4億円の米ドル債券投資」の設計ポイントをまとめました。ポイントは4つです。
ポイント1)平均年利回りが6.1%(米国債上乗せ+1.9%)
債券ポートフォリオ全体の平均年利回りが6.1%ですので、目標の6%を超える債券ポートフォリオの設計をしました。この6.1%の年利回りをどう考えるかということですが、現状、米国債の利回りは4.2%ほどですので、それプラス1.9%上乗せされた利回りが6.1%になります。ですから、比較的野心的な年利回りと言えるのではないでしょうか。
ポイント2)平均債券格付けをBBB、劣後債の割合は3割強
6.1%の年利回りですが、平均債券格付けをBBBに留められたのは、よくできた方ではないかと考えます。一部は劣後債などを入れないと平均年利回り6%は達成できないため、16債券中5債券は劣後債を入れました。債券種類で見ると3割強は劣後債という種類の債券になっています。
ポイント3)保有比率や発行体(業種・国)を適切に分散
若干リスクを取って高い利回りを目指す債券ポートフォリオの場合は、債券の銘柄・保有比率や発行体の中に占める業種や国などの分散は、より重要になってきます。今回は16債券に投資していますので、こちらの債券ポートフォリオに占める1債券の割合は6%に留まる形です。万が一、1債券が倒産したとしても、平均年利回りは6.1%ですので、利回りで1債券の倒産コストを回収できるような設計になっています。ただし、債券ポートフォリオの1債券に占める割合は6%ですが、この方の純資産との比率を見ると、1債券が2%まで下がります。純資産が7億円ほどあった方なので、2%程度になります。ですから、債券ポートフォリオに占める割合で見ても、純資産に占める割合で見ても、保有比率的に十分に分散が効いていると言えます。
発行体の業種の割合は、銀行4債券、保険会社3債券、自動車2債券、通信2債券、その他の業者全て1債券ずつで5債券になっていますので、業種はかなり分散できていると思います。発行体の所属国は16債券中9債券がアメリカ中心になっています。米ドル債券なので仕方ないところもありますが、アメリカ以外のイギリスや日本にも分散しています。保有比率・発行体は、適切な分散が行われていると思います。
ポイント4)期間が20年超の債券にはキャピタルゲインも期待
こちらは当初のご希望にはありませんでしたが、この方は債券投資でも比較的高い利回りや収益を得たいというご要望でしたので、こちらから付加的に提案させていただきました。残存年数が20年超の債券にも積極的に投資をしています。16債券中6債券の残存年数が20年超です。このような債券をポートフォリオに多めに組み込んだ趣旨をご説明します。今後、アメリカの金利が下がった時に、期間が長い債券は上昇の幅が大きくなる可能性が高いです。そのような時に売却すると、キャピタルゲイン(値上り益)を得られる可能性があります。この方の投資の考えに、キャピタルゲインも得られるような債券投資は非常に合致すると考えたため、提案させていただき、ご快諾いただきました。
本日は「現役開業医が実践する2.4億円の米ドル債券投資」という内容でお届けさせて頂きました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中