はじめに
ハイブリッド証券入門シリーズの一環として、今回は劣後債について詳しく解説します。劣後債は、一般的な社債に比べて元本と利息の支払順位が低くなる特徴を持つ債券です。つまり、発行元企業が経営破綻した場合、他の債券よりも返済順位が劣ることになります。そのため、投資家にとってはリスクが高い商品となりますが、その分高い利回りを期待できる魅力もあります。本記事では、劣後債の特徴やメリットについてわかりやすく解説してまいります。
劣後債の特徴
劣後債とは、企業が発行する債券で、普通社債に比べて元利金を受け取る順位が低いものです。正式には「劣後特約付社債」と呼ばれています。
「劣後」とは、他の債券よりも順位が劣るという意味です。発行企業が破産や会社更生などの「劣後事由」と呼ばれる状況に陥った場合、普通社債の債権が全額支払われた後でなければ、劣後債の元本や利息を受け取ることはできません。
劣後債と一般的な社債の違い
劣後債と一般的な社債との違いは、支払順位の差異があります。劣後債は優先債務に比べて支払順位が低いため、発行元企業の経営破綻時には他の債券に優先的に返済が行われます。また、劣後債の利率も一般的な社債よりも高い場合があります。
劣後債の分類
劣後債には永久劣後債と期限付劣後債があります。
1.永久劣後債
償還期限のない劣後債です。期限付劣後債よりも債務の弁済順位が低く、より高い利回りが期待できます。また、永久劣後債には通常、期限前償還条項が付帯されています。期限前償還条項は、発行企業が任意に決めた時期に早期に償還する権利を持つことを意味します。この条項により、発行企業は将来の金利上昇に備えられるのです。
2.期限付劣後債
満期が定められている期限付劣後債は、永久劣後債より弁済順位は高くなるものの、利回りが低くなります。一般的に期限付劣後債は5年以上の期間で発行され、5年目に任意償還日が設定されることがあります。
期限付劣後債は払い戻す時期が決まっているため、運用計画を立てやすいという利点があります。しかし、永久劣後債に比べて金利が低くなるため、リターンは低くなり、投資としてのメリットも低くなる可能性があります。
出典:劣後債とは? 種類・メリット・リスクをわかりやすく解説
劣後債のメリットとリスク
劣後債のメリットは、高い利回りです。元本と利息の支払順位が低いため、投資家は高いリターンを期待することができます。ただし、劣後債には発行元企業の信用リスクが伴います。企業が破綻した場合、劣後債の債権者は他の債券よりも優先されず、返済が難しくなる可能性があります。
また、劣後債は海外で事業展開する企業にとって効率的にドルを調達する手段となるため、ドル建てで発行されることがあります。投資家がドル建ての劣後債を購入すると、円安時に有利になります。利息だけでなく、為替差益も得られる場合があるからです。ただし、円高の場合は為替差損が生じる可能性があるため、購入後も為替の動きに注意が必要です。
また、劣後債は高い利回りなどのメリットがある一方、リスクのある商品です。投資の際は、どのようなリスクがあるのかよく確認しなければなりません。
劣後債の最も大きなリスクの一つは、返済の優先順位が後ろになることです。つまり、償還が行われる際には、優先債権者や一般債権者が先立って返済される可能性があります。このため、発行企業の財務状況や収益状況が悪化した場合、劣後債の返済が遅れるか、あるいはまったく行われない可能性があるのです。
また、劣後債には期限前償還条項が付いている場合があります。これは、発行企業が特定の条件を満たした場合に、債券を期限前に償還することができるというものです。期限前償還が行われると、投資家は利息を受け取れなくなる可能性があります。
投資家は劣後債を選ぶ際には、リスク評価を適切に行う必要があります。また、ポートフォリオの一部として劣後債を組み入れることで、リスクを適切に分散することも重要です。
まとめ
劣後債は元本と利息の支払順位が低い債券であり、発行元企業の経営破綻時には他の債券よりも返済順位が劣る特徴があります。このため、投資家にとってはリスクが高い商品ですが、高い利回りを期待することができます。劣後債を選ぶ際には、リスク評価を適切に行い、適度な分散投資を心掛けましょう。
一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。