皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
目次
はじめに
本日のテーマは、「アメリカ金利再上昇!米ドル建て債券の高利回り継続か!?」です。また、アメリカの長期金利が再上昇してきました。それに伴い、皆様が投資されている米ドル債券の利回りも上昇しています。来年の早いタイミングでアメリカが政策金利を下げるようなことが起こると、米ドル建て債券の利回りも下がってきますので、米ドル建て債券投資は年内に実行していくと良いと、今年の5~6月頃にお話しさせていただいておりました。その時の想定よりも、米ドル建て債券の高利回りが継続する可能性が高いとの見方が、市場の共通認識になってきました。
今回は最新のアメリカの金利状況と、私なりの考えではありますが、米ドル建て債券の長期的な見通しや投資のポイントについて改めてまとめ、最新の情報を交えながらお話しできればと思います。
アメリカ10年国債利回りの推移(過去1年)
米ドル建て債券の全ての利回りの基になっている、アメリカ10年国債の利回りの過去1年の推移を見ていきましょう。こちらがそのチャートです。
今年の4~5月の10年国債利回りは3.4~3.5%でしたが、そこから比較的一本調子で上昇しています。一番右側の2023年9月2日時点の最新の数字では4.2%になっています。この4~5ヶ月ほどで、10年国債の利回りはプラス0.7~0.8%程度に上昇しているということです。皆様が投資されている米ドル建て債券の利回りも全体的に同程度上昇していると考えると、なかなかな利回りアップではないかと思います。過去1年で見ると、昨年の11月頃が直近で高値をつけた水準でした。今の水準はそれと同じレベルになっているのが、グラフの破線を辿ると分かります。昨年の11月頃は4.2%強が高値でしたが、今年の8月には一時的にそれを超える4.3%の利回りをつけています。昨年の高値を利回りベースで更新するような状況になっているわけです。
アメリカ政策金利の見通し(2023年9月2日時点)
先ほどはアメリカの長期金利の話でしたが、この資料はアメリカの国や中央銀行が決めている政策金利の見通しになります。
こちらは、2023年9月2日時点の最新の予想です。アメリカのこのような政策金利の場合は、次回の中央銀行の会議でその金利が何%になるか、という市場予想がほぼ毎日更新されています。一番左側の列にFOMC(連邦公開市場委員会)という中央銀行の会議の日程がありまして、そのタイミングでどれぐらいの%でどれぐらいの金利になる可能性が高いのか、この表を見れば一目瞭然になるわけです。日程ごとに青色にマーキングされているのが、確率が一番高いところです。現在が5.25%の政策金利になっていますので、今月の9月から2024年3月の中央銀行会議までは、この金利のままの可能性が高いということをこの表は表しています。来年の5月から利下げが行われる予想です。現在は、2024年12月の会議の時には4%まで利下げが行われるという市場予想になっています。
今年の6月頃にこの表を使ってお話しさせていただいた内容では、来年に利下げを行うという意味では同じですが、利下げのタイミングは結構後ろ倒しになっています。元々は来年の1月頃から金利を下げていく予定でしたが、それが5月になっていますので、4ヶ月程度、利下げのタイミングが後ろ倒しになっているということです。このような政策金利の予想にも高利回りが継続することの長期化が表れているわけです。
6月にご説明した時との違いとしては、もしかしたらもう1回ほど利上げがある可能性があるということが実は表れています。今年の11月や12月のFOMCの5.5%~5.75%の金利の%を見ていただくと分かるのですが、33.5%~30.8%になっています。これは、11月~12月の会議でもう1回利上げがある可能性があるということが3割程度織り込まれていることを表しています。実はこの割合は、1日~2日前までは5割程度でした。ですから、今年の11月~12月の会議で利上げが行われるか、現状維持か、フィフティフィフティだったわけです。雇用の数字の関係で3割超にはなりましたが、もしかしたらあと1回利上げがあって、それが実現した場合は、来年の利下げのタイミングがさらに後ろ倒しになり、今の高利回りが長期化する可能性があると言えるでしょう。
債券種類ごとの最新・予想利回り
債券種類ごとの最新の年利回りと予想の年利回りについてお伝えします。債券の種類と格付けなどによって利回りが変わりますので、最新の利回りと共に、私の個人的な見解ですが、来年の2024年12月末時点の利回り予想をお伝えしていきたいと思います。
米国債
一番重要と言われる米国債で、期間が10年、格付けはAA+、という債券の最新の年利回り(9月2日付)は4.2%です。2024年12月末の年利回りは、恐らく3.5%ほどで落ち着く可能性が高いと今のところは考えています。これは、現在の利回りからマイナス0.7%程度下落している水準です。今年の6月に同じような予想をしましたが、その時は2.8%程度でしたので、その時からプラス0.7%ほど長期金利の予想は上がっているわけです。今年の6月のタイミングから2ヶ月の間に、景気や雇用の数字が強く出たことによって、アメリカの長期金利の高止まりや政策金利の利下げが行われるタイミングが後ずれするという予想が強まり、長期金利の予想もこのようになっていると思われます。
普通社債
次は普通社債です。期間は10年、債券格付けはA、現在の利回りは5%ですが、2024年12月末で0.7%、米国債と同じように利回りが下がり4.3%程度になる可能性が高いと思います。
劣後債
劣後債は期間が10年、格付けがBBB、現在5.5%の利回りが0.7%下がり4.8%、永久劣後債は期間が5年、格付けがBB、現在6.2%の年利回りは、恐らく利回りベースで同じように0.7%程度下がって5.5%ほどになる可能性が高いと考えています。
このように、アメリカの国債の利回りが下落するのに伴い、その他の社債の利回りも同じようにこの程度下がる可能性が高いと予想します。やはりアメリカの高利回りは、当初より長期化する可能性が高いと考えますが、来年の年末には、今よりは水準が下がっているという見通しは概ね変わらないと思います。
ポイント
今回の「アメリカ金利再上昇!米ドル建て債券の高利回り継続か!?」についてまとめます。ポイントは4つです。
ポイント1
事実として、アメリカ10年国債の利回りはここ4ヶ月で0.8%上昇しています。国債利回りの0.8%はかなりの上昇になります。2022年の最高値の利回りの4.2%は更新されていますので、それぐらいアメリカのインフレの継続が、景気の強さや雇用の強さを表している結果になっていると思います。
ポイント2
そのような10年国債の利回りの強さや政策金利の利下げが行われるタイミングの後ずれなどがありますので、やはり各種の米ドル建て債券、社債や劣後債などの債券も、当面、高利回りが継続する可能性は当初より高まったと思います。
ポイント3
メリカの景気が良いことによって国債の利回りが上がっている側面もありますので、景気後退懸念は結構解消しているわけです。元々はありましたが、それがなくなってきていると言えます。それにより、社債の上乗せ利回りが減少している傾向であると思います。アメリカの10年国債は関係ありませんが、企業のリスクを取っている社債は、景気後退懸念が強い時は、企業倒産リスクが高まり、アメリカ国債の上乗せされる利回りが高くなるので社債の利回りが高まるのですが、そのような不安がなくなってきているので、あまり上乗せされていないわけです。そういったことによって、アメリカの米ドル建て債券の利回りは全体的に金利上昇によって上がっています。そのような信用不安や信用リスクがあまり意識されていない中では、社債の上乗せ利回りは若干減っている傾向にあると思います。特に、劣後債や永久劣後債というような信用リスクや景気後退に敏感な債券ほど、上乗せ利回りは減少している傾向にあると言えます。
ポイント4
投資実行のタイミングの話です。アメリカの高利回りが継続することは確かであると思いますが、とはいえ、2024年の前半ぐらいまでに米ドル建て債券の投資実行をしていくのがおすすめです。5~6月頃のセミナーなどでは、年内の投資実行をおすすめしていましたが、アメリカの政策金利や利下げのタイミングが後ずれすることや、今も利回りが上昇していることなどを踏まえても、2024年3~4月ぐらいまでの投資実行がよろしいかと思います。
本日は「アメリカ金利再上昇!米ドル建て債券の高利回り継続か!?」という内容でお届けさせて頂きました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中