皆さん、こんにちは。株式会社ウェルスパートナー代表の世古口です。
目次
はじめに
本日のテーマは、「平均年利回り6%を目指す米ドル債券投資実例」をお届けします。
十数年ぶりにアメリカの金利が高い状況ですので、多くの方が米ドル債券に投資をして高い利回りを得られている現状です。しかし、昨年2020年のアメリカの金利のピーク時と比べると現在は低下していますので、米ドル債券投資の利回りも若干下がっている状況です。そのような中でも、米ドル債券投資の目標の利回りが高い方、例えば6%あたりを得たい方もいらっしゃいますので、現状で6%の利回りを得るためにはどのような米ドル債券投資をすれば良いのかをご説明します。債券投資においても、比較的高いリターンを得たい方向けの内容になりますので、ぜひご参考にしていただければと思います。
ご要望
今回は米ドル債券投資の実例ですので、実際に私たちが資産形成のお手伝いをさせていただいたお客様の例を取り、その方のご要望から実際の具体的な米ドル債券投資のポートフォリオまでをご説明させていただく流れです。
この方のご要望からお伝えしましょう。ポイントは4つです。
1つ目は、1.5億円の余剰資産を米ドル債券に分散投資したいというご要望です。1つの債券に限らず、できるだけいろいろな米ドル債券に投資しリスク分散して運用したいいということです。
2つ目は、今回のテーマと合致する、債券ポートフォリオ全体の目標年利回りを6%にするというご要望です。
3つ目は、目標の年利回りは比較的高いのですが、低格付け債券、格付けがBB以下の債券の割合は全体の2割までに抑えたいというご要望です。過度にリスクを取りたくないということです。
4つ目は、債券の利回りが比較的高いので、債券の発行体や期間を適切に分散してポートフォリオの管理をしたいというご要望です。
米ドル債券ポートフォリオ設計例
*格付けはS&Pの格付けを記載。S&Pの格付けがなければMoody’sの格付けを記載。
*繰上償還日が設定されている債券は繰上償還までの残存年数を記載。*利益に対する税金を考慮しておりません。
*利回りや投資成功を保証するものではありません。
このようなご要望を基に、最適と思われる債券のポートフォリオを作成させていただいた設計例がこちらです。全体が1億5,000万円の債券ポートフォリオになっています。これを10銘柄に分散していますので、1債券1,500万円という配分です。
左側の項目の発行体からご説明します。発行体は、その会社の業種と所属している国を記載しています。業種に関しては、銀行が3債券、保険が2社、石油会社が2社、投資会社が1社、自動車とITが1社ずつという分散です。所属国は、日本・アメリカ・イギリスが3債券ずつ、メキシコが1債券という配分になっています。
債券の種類は、いろいろな債券が入っていますが、普通社債(倒産時に最初にお金が返ってくる)が10債券中5債券、永久劣後債(満期なし、倒産時に返金の順番が遅くなる)という債券が3債券、期限付劣後債が2債券です。
通貨に関しては、すべて米ドル建てで1,500万円ずつです。債券ポートフォリオ全体に占める1債券の保有割合は10%です。
適切に分散されたいというご要望がありました債券の残存年数は、一番短くて3~4年、6年、7年、9年、14年、20年となっており、20年超も3債券含まれています。平均は11.9年です。
債券の格付けは、割合としてはBBBやAの債券が多くなっています。投資非適格の低格付け債と呼ばれるBB以下の債券に関しては、10債券中2債券(No. 2とNo. 3)です。比較的格付けの高い債券が多く、割合としては低格付け債は少ないので、平均の債券格付けはBBBになっています。
発行体格付けは若干変わってきまして、平均格付けはBBB+です。今回のタイトルにもある平均の年利回りは右側になります。債券ごとに利回りが違い、格付けが比較的低い債券は利回りが高く、格付けが高い債券ほど利回りが低いバランスになっています。この債券全体の平均年利回りは6%です。こちらが今回の目標の平均利回り6%を達成するための債券ポートフォリオ設計例になっております。
まとめ
最後に「平均年利回り6%を目指す米ドル債券投資実例」をまとめます。ポイントは4つです。
工夫が必要である
1つ目は、年利回り6%を目指すなら工夫が必要ということです。昨年2022年の金利が高い状況であれば、それほど工夫をしなくてもそのような利回りを達成できましたが、現状はその時よりも若干利回りが下がっています。また、金融不安の状態もかなり収まっているので、割と普通の状況なわけです。年利回り6%は、実はこの米ドル債券投資においてはやや野心的な目標ですので、それを目指すのであれば何か工夫が必要であると言えるのではないでしょうか。
普通債券よりリスクが高い債券を一部活用
2つ目は、6%を目指す具体的な方策として、あまり多くの割合を占めると良くないのですが、債券ポートフォリオの中に、低格付け債券(BB以下の格付け債券)や永久劣後債(償還の順番が遅く、繰り上げ償還日に償還しない可能性がある、満期がない債券)などの普通債券よりリスクが高い債券を一部活用していく必要があるのではないかということです。(全ての方に適合する商品ではありませんので、リスク許容度の高いお客様向けとなります)
何かのリスクを許容する必要がある
3つ目は、6%を目指すために有効な手段として、何かのリスクを許容する必要があると思います。基本的には先進国が多いですが、発行している会社が所属している国の中に一部新興国を入れることです。
今回の債券ポートフォリオ実例の中には、メキシコの債券がありました。そのように新興国の債券リスクを取ることによって、通常よりも比較的高い利回りを得ることができると思います。今回のポートフォリオの中にメキシコの会社が含まれていなければ、平均年利回り6%は達成できておりませんので、新興国のようなリスクを取るのは一つの手段であると考えます。
その他には、業種のリスクです。一般的な銀行や保険などの無難な業種よりも、石油や投資といわれるカテゴリーの債券に関しては、リスクが高い業種と見なされていますので、債券の利回りにおいてはリスクが高くなるわけです。ですから、新興国や業種リスクを一部許容することで、6%の利回りを目指していくことが可能になると思います。これも格付けと同じで、そのような債券だけに業種を偏らせるとリスク過多になります。
あくまでも債券ポートフォリオ全体の一部のポイントとして入れることで平均年利回りを上昇させる、という発想でやっていくのが大事かと思います。
適切な分散投資をする
4つ目は、平均年利回り6%を目指すには、格付けや新興国や業種などでリスクを取って運用していくことになりますので、そのような目標が高い債券ポートフォリオほど、しっかりと適切に分散することが大事です。
債券を発行している会社の業種や所属国、格付け、残存年数の期間を適切に分散していくことが必要となります。先程の債券ポートフォリオにおいても、業種がかなり分散されていて1業種3債券程度になっています。所属国においても、1つの国に限らず先進国の中心となるような国に3債券まで分散されていますし、格付けや債券の期間においても適切に分散され、何かのリスクに偏ることがないように管理しています。
目標の年利回りは高ければ高いほど、リスク管理、ポートフォリオマネジメントはしっかりしていく必要がありますので、その点をしっかりとご認識いただければと思います。
本日は「平均年利回り6%を目指す米ドル債券投資実例」という内容でお届けさせて頂きました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中